「手足が蚊のように細い兵士が…」金正恩”飢える軍隊”の断末魔
7月27日で、朝鮮戦争の休戦から70周年となる。この戦争で「勝利した」と主張している北朝鮮は同日を「戦勝節」と定めており、祝賀の雰囲気を高めるため様々なキャンペーンを繰り広げている。
朝鮮労働党機関紙・労働新聞は23日付1面で南浦(ナムポ)市のある高級中学校(高校)の卒業クラスの全員が最前線で兵役に就くことを決意したのをはじめ、国営企業や農場などから約95万人が軍入隊あるいは再入隊を志願していると報じた。
これを見てわかるのは、北朝鮮当局もいよいよ、こんな「嘘っぱちキャンペーン」のネタすら尽きてしまったようだということだ。
北朝鮮の高校生の多くは、卒業とともに兵役に就く。だから軍への入隊を志願したということには何の意味もない。また「最前線」とは韓国との軍事境界線付近のことを言うが、そこが必ずしも「いちばんキツイ」部隊だというわけでもない。たとえ、金正恩総書記の警備にあたる護衛総局に配属されても、任務のキツイ建設部隊などに行かされれば、餓死の危険にさらされる。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)
デイリーNKの北朝鮮内部情報筋によれば、「護衛総局所属と言えば聞こえはいいが、建設部隊は現場で苦しい仕事をする肉体労働者となんら変わりない。それなのに、一般の軍部隊より供給の質が悪く、兵士たちの足や腕はハエや蚊ほども細く、栄養失調に苦しめられている」という。
朝鮮人民軍は、平時から食糧輸送に大きな問題を抱えており、末端の兵士たちは常に飢えに苦しんでいる。食べ物欲しさに、周囲の民家や農場を襲撃することは、決して珍しいことではない。だが、超エリート部隊である護衛総局ですら、栄養失調が広がるほど、北朝鮮の食糧難が深刻ということだ。
そんな状況だから、工場労働者や農場員を軍に送るわけにはいかない。生産現場の機械化が遅れている北朝鮮は人力が頼りだ。労働力を軍に振り向けたら食糧危機がいっそう深刻化してしまう。
仮に、相当数の労働者や農民が軍に入隊するにせよ、彼らは部隊ごと生産現場に戻ってくることになるだろう。
戦争での強さは経済力に裏付けられるということは、ウクライナ戦争を通じ、世界の人々が再認識させられている常識だ。だとすれば、たとえ核兵器を持っているにせよ、北朝鮮軍は「最弱」と言えるかもしれない。