「踏んだり蹴ったり」の金正恩、いよいよ危機的状況に
北朝鮮は31日、軍事偵察衛星の打ち上げを行うも失敗した。米韓が軍事的な圧迫を強める中、その対抗措置として打ち上げを計画していただけに、金正恩総書記にとって心理的、政治的な打撃も小さくないと見られる。
そして次に注目されるのが、6月上旬の開催が予告されている朝鮮労働党中央委員会第8期第8回総会である。
党中央委員会政治局は28日に発表した、総会招集の決定書で、「2023年度上半期の党および国家行政機関の活動状況と人民経済計画実行の実態を総括して対策を立て、われわれの革命発展において重要な意義を持つ政策的問題を討議する」としている。
総会では軍事偵察衛星の打ち上げ成功が「偉大な成果」として誇示されると見られていたが、失敗は果たしてどのように総括されるのだろうか。
だがそれ以上に注目されるのは、党中央委員会総会が上半期に2回開かれること自体が、きわめて異例であるということだ。前回は2月26日から3月1日にかけて行われている。
そもそも前回の開催時期が異例だったのだが、そこでの主要議題は農業だった。北朝鮮は今、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」以来の飢餓に襲われているとされる。それが前回総会からたった3カ月で改善したとも思えず、むしろいっそう深刻化している可能性がある。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)
また米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)などの報道によると、北朝鮮国内では「謎の熱病」が広がっているという。
金正恩氏が、新型コロナウイルスとの「非常防疫戦」での勝利宣言を行ったのは昨年8月。その後も発熱患者の発生が報告されているが、金正恩氏の宣言に反するという政治的理由から、コロナだとの診断は許されていない。
病院で診察を受けても、「インフルエンザかもしれない」との診断が下され、隔離が指示されるだけで、本当は何の病気なのかわからない。
こういう時こそ、景気づけに軍事偵察衛星の打ち上げを成功させたかったのかもしれないが、その目論見もとん挫した。まさに踏んだり蹴ったりの状況だ。果たして金正恩氏は、どのように活路を開くつもりなのだろうか。