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今さら聞けない「カタカナ言葉」「ビジネス用語」と、どう向き合うか?

横山信弘経営コラムニスト

「語彙」「ボキャブラリー」の不足が原因で、話が噛み合わなくなることは、とても多いと言えます。「話にならない」という現象は、語彙の足りなさで引き起こされることが多いと言えるでしょう。特にビジネスの現場では顕著です。

A:「お客様からメールで送られてきたアジェンダを見返してくれ」

B:「あ、はい。アジェンダ……ですね」

A:「どうも最初のコンテクストが気に入らないんだよ」

B:「コンテクスト……」

A:「こんなマイルストーン、本当にオーソライズされたものなんだろうか。まるでバッファがない」

B:「マイル、オーソライ……。バッハ、ですね……」

A:「この取組におけるスキームを見直したい。お客様にもう一度打合せをしたいので、C部長にアサインしてくれないかな」

B:「あ、はい……。部長にアサインですね」

Aさんは普段から「コンテクスト」「マイルストーン」「オーソライズ」「バッファ」「スキーム」「アサイン」という語彙を頻繁に使っています。だから違和感はないでしょうが、Bさんはそれぞれの語彙を知らないので話がほとんど通じていません。

Bさんが

「申し訳ありません。そもそもアジェンダって、何のことでしょうか?」

「マイルストーンというのは、作業工程と理解しましたが、それでよいですね?」

質問と確認をすれば話が噛み合っていきます。しかし、そのまま話が終わってしまうと、Bさんはどうすればよいかわからず途方に暮れてしまいます。特に私たちのようなコンサルタントは、普段から強く気に留めないといけない要素です。経営者と話をしていて、

「社長、この市場はいずれシュリンクしていきますよ」

「御社のコアコンピタンスが何なのか、ここを意識する必要があります」

「このサービスはいずれ、コモディティ化すると思います」

といった表現は、普通に使います。私と社長とが理解しあっても、同席した部長や課長が「シュリンク?」「コモディティ?」と思っていたら、話が噛み合わなくなっていきます。

散々、私と社長と話し合った後、社長が「当社のコアコンピタンスを今一度、見直そうじゃないか」と部長に話を振ったとき、

「そもそもコアコンピタンスって何ですか? もっとわかりやすい言葉を使ってください」

と部長は質問できるか、というと、ほとんどの場合できません。おそらく「君はそんなことも知らないのか? 部長の君がそんなだから、うちの事業は悪化の一途をたどるんだ!」と社長に怒られそうだと思うからです。

カタカナ言葉は、IT企業に勤めている人が常用するように思われがちですが、意外と普通の企業でも、頻繁に使います。前述したカタカナ言葉以外にも「エビデンス」「コミットメント」「コンセンサス」「フリクション」「ファクト」などはIT用語ではありません。頻繁に社外セミナーに出席している人、多くのビジネス系の書籍を読んでいる人なら、普通に使う言葉でしょう。IT用語とか会計用語といった「専門用語」ではない、単なる「ビジネス用語」だから、特に取扱い注意なのです。

また、たまに「カタカナ言葉を使うとカッコいい、と思うから使うんでしょ」と指摘する人がいます。しかし、それは勘違いです。ほとんどの人はそのように思っていません。その人が触れる書籍や雑誌に頻繁に出てきて、自分の周りでも使う人がいるから無意識に使ってしまうのです。「カッコよく見られたい」と思い、意図的に使おうとする人もいるでしょうが、周囲に使う人がいないカタカナ言葉を意識して使うのはけっこう難しいものです。

ネットスラングや若者言葉も同じです。頻繁に使っていると、だんだん違和感がなくなってくるため、当然相手もわかるだろうと思って使います。「オニ」「ヨロ」「とりま」「つらたん」「ディスる」といった表現は、私も当初、意味がわかりませんでした。

「横山さんが書くコラムってオニだよね」

とある人からメッセージをもらったとき、「横山さんはコラムに、鬼のように厳しいこと書いてるね」という指摘だと私は勘違いしました。そのため、

「そうですか……。けっこう厳しい内容だと受け止められたんですね」

と返信したところ、

「横山さんをディスつるもりないよ」

と返事が来ました。あとで意味を調べてみたところ「オニ」とは「すごい」「超」とかの意味のようで、「ディスる」というのは「非難」「侮辱」という意味のようでした。

話し手は、相手がわかるような言葉を選択することを心掛けるべきです。しかし慣れ親しんでいると、習慣でその語彙が出てしまいます。聞き手がその場で質問と確認をしてミスコミュニケーションを回避できればいいですが、できないのであれば、すぐさまメモをして後で確認し、覚えていくようにしましょう。特にビジネスの現場では、高度情報化時代となり、新しい言葉が増え続けています。最近であれば「マイナンバー」という語彙は押さえておくべきです。

「マイナンバーって何? よくわかんないよねー」

などと呑気なことを言っている場合ではありません。人事・労務関係の人でなくとも、この語彙の意味を知っておくことは常識になりつつあります。新聞やニュースなどでは、読者、視聴者が「この語彙を知っている」という前提で記事を展開しますので、知らない人は、だんだん話についていけなくなります。

「私が知っている言葉で話して」と相手に要求しても、限界があります。生活や仕事に不必要なボキャブラリーならともかく、周囲の人が常用している語彙は、常に「キャッチアップ」しておくように心掛けたいですね。

(キャッチアップとは、追いつく、遅れを取り戻す、という意味)

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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