強い強豪がひしめき合い、レッドオーシャンのインターンシップ。そもそもやるべきか、やめるべきか
■そもそもインターンシップとはどんなものを指すか
インターンシップといえば、昔でいうと長期間に渡って、ある会社にアルバイトみたいな感じで入り、実際にその会社の仕事を体験するというようなことが、特に私のようなオジサン世代にとってはイメージがあると思います。
一方で、学生の観点からすると、例えば最近だと1day仕事体験、言ってみれば説明会のちょっと長い版みたいな感じをイメージする人も多いかもしれません。「一日拘束されてその会社の事業や仕事内容を勉強して、自分のキャリアを考える機会のようなもの」から、「約5日間程度~1週間位でビジネスプラン考えるみたいなもの」もあったりします。もちろん昔ながらの長期のものなども残っています。
いろいろありますが、今いちばん多いのはやはり1day、その次に5日くらいのビジネスプランコンテストみたいなものです。その他にも「ちょっとどこかへ行って、そこでプログラムをこなしてくる」というような、そういった、言ってみれば特別プログラム型みたいなインターンシップもある訳です。
これが今日のテーマの「インターンシップ」です。
■インターンシップと採用活動のつながり
ご存知のように、インターンシップというのは基本的には学生さん側では、「受験をして、面接段階をこなして、内定に至る」という本選考とは一応別のものとして、会社を知る機会、仕事を知る機会、キャリアを考える機会という風に思われています。
しかし、これは会社によって違います。特に外資系企業やメガベンチャーなどでは、インターンを受けていただいた人の中から採用するというような、採用の一環としてインターンシップをやってる会社もたくさんあります。
また、インターンと採用・本選考は、実施している企業側の人たちは人事担当者で一緒であることが多いですが、基本的には別物として、インターンはインターン、本選考は本選考という会社もあります。
「うちのことを知ってもらって、本選考へ来てもらえたらうれしいんだけれども、本選考はインターンに受かったからと言って、それが内定につながってるということはなく、普通に本選考を受けてもらいます」みたいなことです。
いずれにせよ、採用にまったく関係ないインターンもたまにはありますが、ほとんどが今の2種類です。「めちゃくちゃ本選考に直結してる」か「薄く本選考とつながってる」か、みたいな違いです。基本的には学生のみなさんも、企業のインターンシップを受ける時にはおそらく、何らかの就職活動上のメリットみたいなものを考えて受けていると思います。
今のインターンシップはこのような現実になっている訳です。
■インターンシップは採用に役立つのか
ここからの話は特に企業の人事担当者向けですが、今、学生のインターンシップの参加率というのはだいたい7割くらいと言われています。就職を考えている学生さんはほとんどみんなやってると言っていいかと思います。ただ、先程話したような1dayを中心としたものなので、本格的なインターンに参加している人はもっと少ないでしょう。
実際インターンシップをやってる企業がどのくらいあるかというと、例えばインターンシップの募集サイトの掲載社数を見ると1万社を超えています。もちろん全部のインターンをやっている企業数というのは把握することはできませんので、実際に何社がインターンシップをやってるかということはわかりません。本選考の就職ナビなどの媒体の掲載社数と比べてみても、それに近い企業数がインターンを実施しているということです。ほとんどの新卒採用をやろうとしてる会社は、インターンシップもやってるということがわかります。
そうした現状に対して、考えなくてはならないのは、中小企業やベンチャーなど、そこまで学生さんに認知度や人気がない企業が、インターンシップを採用を目的として、採用に少しでも何かプラスがあるということで、やるべきかどうかということです。
■結論、特別なことをしないならやめてはどうか
正直に申し上げますと、私は、これだけの競争の激しいレッドオーシャンになってくると、インターンシップを実施して採用につなげるということは結構難しいのではないかと思います。特別な工夫もすることなく、普通にやるのであれば、やめた方がいいです。そもそもまず、おそらく人が集まりませんし、集まっても、その人は本受験をしてくれるかもわかりません。採用にはつながらないのです。
インターンシップの山は学生の長期休暇である8月と2月が多いようです。ちなみに文系は夏が多くて、理系は冬が多いという風に言われています。そして、その時期に合わせていろいろ仕掛けを作ってやろうという会社も多いと思います。
ただ、その結果としては、実際のところ、多くの会社から「学生が来ない、来ない」と聞くわけです。理由は、先程申し上げたようにインターンシップはレッドオーシャンになっているからです。ですので基本的にはお勧めしません。
■インターンシップの工夫その1「コンテンツ」
その「工夫」について、いくつかお話ししたいと思います。
一つは何かと言うと、普通にインターンシップの面白コンテンツを作ればよいかというと、そうでもなく、そこには落とし穴があります。
企業は往々にして、自社の仕事とか事業とかをインターンシップの題材に考えてしまいますが、多くの学生さんは「知らない企業の仕事の疑似体験とかはしたくない」と言っています。
ですからまず、「就職を考えている学生が自分のキャリアを考えるためだったら、どんなネタがいいだろう」と考えることが重要です。自社の仕事や事業に関係なく、そういったものを提供してあげるのがいいのではないかと思います。
某情報メディア会社のインターンは自社の仕事の疑似体験ではなくて、例えば「日系企業が東南アジアに進出しています。そこでインターンシップやりませんか。それを我々がフォローしますよ」というのをやっていたり、某通信会社のインターンシップも「地方に行って、その地方が活性化するためのプロジェクトをみんなで考えてみませんか」というもので、通信とか情報サイトとか関係ありません。
ただ、そういう「自社の事業や仕事にこだわらずに、ただただ学生にとって面白いものがなにかだけを考えたコンテンツ」の方が学生が来るのです。
■インターンシップの工夫その2「集客方法」
もう一つ大事な工夫は「学生の集め方」です。
インターンの面白コンテンツを作ったからといって、それをマス広報して「インターンでこんな面白いことをうちがやってるんで来てくださいね!」と広告すると、たくさん人が集まることでしょう。
ですが、そこに来る人達というのは、私の言い方でいうと「就職活動意識高い系」、いわゆる就職活動を頑張ってる人たちです。
就職活動を頑張ってる人たちはもちろん別に悪くありません。ただ、就職活動を8月のインターンからすごく頑張るという人は、基本的に採用ブランドの高い企業に行きたいというような学生さんが多いのです。ですから、中小企業やベンチャーが、面白コンテンツ作ってマス広報して、8月頃にやって来る人達というのは今お話したように、ブランド企業に行きたいのです。
ですから、どれだけ学生さんとのリレーションができても、いい関係になっても、ブランド企業に受かったら「ありがとうございました!」というふうに去ってしまいます。ですから、採用にはつながらないのです。
■インターンシップの工夫その3「動機づけ企画にする」
一番良いのは何かと言うと「集客企画としてインターンシップを考える」のではなく、「フォロー企画として、動機づけ企画としてインターンシップを考える」と考えるとインターンシップはうまくいきやすいです。
学生の集め方は、例えば、人づてで内定者とか新人の後輩を紹介してもらって、母集団形成するようなリファラル採用をやってみたり、あるいはスカウトメディアと呼ばれている、OfferBoxなどのように、企業側からアプローチしたりするように、こちらから攻めて行って呼び込む。
このように、こちらから動いて集めた人たちは「就職活動意識高い系」である確率が多少低くなります。就職活動に対してはあまりたくさん活動していない人たちにもアプローチできるからです。就職活動を頑張らなくても自分のやりたいことは頑張っている。そういう人たちを集められるチャネルで母集団形成すると、良い場合があります。
そういう方々を見つけた時の、フォローをするための企画として、今言ったようなインターンの企画を導入すると「あ!そんな面白そうなものがあるんだったらやってみようかな」と、受動的かもしれませんが、こういう学生には参加してもらえます。
■「就職活動意識低い系」は決断が早い
「就職活動意識低い系」な学生さんたちは就職活動をそんなにやる気がないので、自分の目で見て「あ、いいな!」と思ったら、そのまま「ここを受けて受かったら、就職活動終わろう!」と言うこともよくよく出てくる訳です。
そんなふうにしてインターンを行うと、学生にとっても一種のいい側面があって「聞いたこともない、知らない会社の仕事の疑似体験」とかをしなくてもいい訳です。つまり、学生にとってはキャリア全般に役に立つことが得られる訳ですし、企業側にとっても結局は採用につながるという意味において、良いインターンができる可能性があります。
もしも、インターンシップをやられるのでしたら、超レッドオーシャンのインターンシップのやり方をするのではなく、本稿のような工夫をして頂けると、インターンシップの成功に近付くのではないかと思います。是非お試しください。