かつてはデパートの売れ筋商品だったが…百貨店・スーパーの衣料品の移り変わり(2024年公開版)
かつては百貨店の商品の中でも主役の座にあったものの、今では食料品にその座を奪われている衣料品。そのセールスの実情を経済産業省の商業動態統計調査の公開データから確認する。
百貨店とスーパー(※)の主要品目別売上を商業動態統計調査で見ると、1990年代前半をピークに、衣料品の売上は減少。直近2023年では金額にしてピーク時の約4割にまで減少、店舗売上全体に占めるシェアは26%ポイント以上減っている。
今回精査をする衣料品における詳細商品区分は次の通り。
●紳士服・洋品…紳士服、下着類、ワイシャツ、ネクタイ、靴下など
●婦人・子供服・洋品…婦人服、子供服、下着類、ブラウス、靴下など
●その他の衣料品…呉服、反物、寝装具類、和装小物、タオルなど
●身の回り品…靴、履物、和・洋傘類、かばん、トランク、ハンドバッグ、裁縫用品、装身具(宝石、貴金属製を除く)など
この区分を確認した上で「衣料品」項目における、各種細部項目の構成比をグラフ化し、その動向を確認していく。元々「婦人・子供服・洋品」の比率が高かったものの、近年においては1980年比で数%ポイントの増加が見られる。それとともに「身の回り品」の比率もじわじわと、そして確実に上昇を見せている。ここ10年ばかりは「身の回り品」の比率の伸びが著しく、「婦人・子供服・洋品」ですら圧迫され減少する状態にある。
紳士服・洋品(男性向けの衣料品)の割合が継続して減っていたのは、紳士服チェーン店などの進出が大きな要因と考えられる。2005年以降は「比率の上では」やや戻しを見せていたが、全体額が減っている以上、男性向けの売上が伸びているわけではない。むしろ他の項目の減少度合いがより大きく、相対的なシェアが伸びているに過ぎない。
注視すべき動きとして挙げられるのが、「身の回り品」。シェアだけでなく金額面でも増加傾向にあった。該当する商品は他店舗ではまとまった形での実商品の確認や購入が難しく、あるいは専門店が身近にあるとは限らない。そしてインターネット通販では実物を精査できないが、直に手に取ってその内容を確認したいものが多く、必然的にデパートが選択されているものと考えられる。さらには景況感の回復も一因だろう。
ただしここ数年ではシェアこそ増加しているものの、金額は減少の傾向に転じてしまっていた。2020年における大幅な減少は、新型コロナウイルス流行による来店客数の減少によるところが大きい。その後、その2020年を底として、急激に戻しを見せ、コロナ禍直前を超える数字を出している。
リーマンショック(2008年秋)以降において急激な減少、特に「婦人・子供・洋品」の金額面での縮小ぶりが著しく、目にとまる動きが生じている。紳士服などはデパート以外では代替が利かない事例もあるが、婦人服や子供服は容易に廉価店への切り替えができる。可処分所得の減少から、(割引率に期待できない)百貨店において婦人向け・子供向けの購入者が足を遠のかせてしまった流れがうかがい知れる。
そして1990年代前半が一つのターニングポイントだったことが、このグラフからつかみ取れる。衣料品部門における売上総計はもちろんだが、「紳士服・洋服」の項目で特にその流れが強く出ている。紳士服チェーン店の展開など競合の登場・躍進はもちろん、いわゆる「バブル崩壊」が大きな構造変化の引き金となったことは容易に想像できる。無論金額面では「リーマンショック」が、さらなる構造変化における第二の引き金となった感は否めない。
衣料品における売買動向の流れとしては、男性関係用品全般、そしてその他衣料品関連が先行して大きな客の減少があり、現在は女性や子供関係、「身の回り品」が続いているとまとめることができよう。
一方で2020年における新型コロナウイルス流行によって生じた大幅な減少は、リーマンショック時のそれと同レベル、むしろそれ以上のものであり、各品目の減少傾向を加速化したことになるのだろう。2021年以降は回復の動きにあるが、まだ2019年の水準にまでは戻していない。それどころか「その他の衣料品」に限れば、回復の気配すらない。ただし「身の回り品」に限れば、直近2023年において2019年の水準どころか2009年ぐらいにまで戻しており、コロナ禍での減少を奇貨として大きく飛躍しているように見えるのが幸いではある。
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※百貨店やスーパー
経済産業省・商業動態統計調査では百貨店とスーパーの合計値となる大型小売店の値が計上されているため、今回はその値を用いる。
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