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若い人につなげていくため、老舗ができること/御菓子司 山善・奥堂和香子さん

岡沼美樹恵フリーランスライター/編集者/翻訳者
岩手の老舗和菓子店「山善」の奥堂和香子さん

岩手県盛岡市。東北随一の美しい石垣を遺す盛岡城址公園や町のなかをゆっくりと流れる北上川、歴史を感じさせる古い町並みが多くの人を惹きつけるこの町で、明治42年からその暖簾を守っている老舗和菓子店が「御菓子司 山善」です。

盛岡の街なかに暖簾を構える「山善」
盛岡の街なかに暖簾を構える「山善」

この「山善」で現在、広報の仕事をしているのが、奥堂和香子さんです。

奥堂さんのお父さまが「山善」の4代目。老舗和菓子店の次女として生まれた奥堂さんは、小学生のころ、いつもこのように思っていたそうです。

「どうしてうちは公務員の家じゃないんだろう」。

というのも、夏休みもクリスマスやお正月も家業にとっては繁忙期。夏休みの家族旅行なども難しいのが常でした。

本店には、「山善」の歴史を感じるアイテムも展示されています
本店には、「山善」の歴史を感じるアイテムも展示されています

その後成長した奥堂さんは東京へ。しかし、本来なら後を継ぐはずだったお兄さまが亡くなったことで「手伝わなくちゃ」という思いに駆られ、盛岡に戻ってくることになりました。

「昔からこの店の前にはよ市が開かれるんですね。うちではお団子や切り落としを販売していたのですが、私も小学生のときは“商売しているお家の子あるある”で、売り子として立っていたんです。当然遊びたい盛りだったので、そのときは不満でした。でも今大人になって売り子として立っていると『やっぱり山善さんのはおいしいね』とお客さまにいっていただけたり、笑顔になっていただけたりするのを見ると、すごくうれしくて。ずっと続いてきたことの重みも感じるようになりました」。

お遣物や自宅用にとお菓子を求めるお客さまが次々来店していました
お遣物や自宅用にとお菓子を求めるお客さまが次々来店していました

ずっと続いてきたことを守ること。奥堂さんは、これから先を見据えてこう話します。

「守るだけではダメだと思うのです。ときには思い切ったアイデアで変えるべきものを変えていくことも必要。若い人に伝えていくにはどうしたらいいんだろうと、常に考え続けています」。

大胆にパッケージデザインをリニューアルした「ぶどう飴」
大胆にパッケージデザインをリニューアルした「ぶどう飴」

そんな奥堂さんは、盛岡を代表するような老舗の商品を若手デザイナーがリブランディングしてパッケージを改良するというプロジェクト「モヤーネ」に参加。若手デザイナーである松前哲さんのデザインで、古くからある看板商品のひとつである「ぶどう飴」のパッケージを大胆に変更しました。

松前さんとは「ぶどう飴」のパッケージデザイン以来、お付き合いが続いているそう
松前さんとは「ぶどう飴」のパッケージデザイン以来、お付き合いが続いているそう

ぶどうの房を模したかわいらしいデザインが大きな評判となり、仙台市産業振興事業団が主催する「第9回 新東北みやげコンテスト」では「デザイン特別賞」を受賞しました。

「ぶどう飴のパッケージリニューアルの後、松前さんにはいくつかのパッケージデザインをお願いしています。このパッケージになってから小学生や中学生などの修学旅行生がおみやげとして手にしてくれているんです」と、うれしそうに語ってくれました。

古きを守り、新しきをいざない、つなげてゆく―。

「御菓子司 山善」での奥堂さんの挑戦はまだまだ続きます。

「ぶどう飴」パッケージデザインリニューアルの詳しいお話は、「暮らす仙台」でご紹介しています。ぜひご覧ください。

撮影:堀田祐介

フリーランスライター/編集者/翻訳者

大学卒業後、株式会社東京ニュース通信社に入社。編集局でテレビ誌の制作に携わり、その後仙台でフリーランスに。雑誌、新聞、ウェブでエンターテインメント、スポーツ、広告、ビジネスなど幅広いジャンルの執筆活動を行う。2016年よりウェブメディア「暮らす仙台」で東北のよいもの・よいことを発信。ローカルビジネスの発展に注力している。好きなものは、旅、おいしいものを食べること、筋トレ、お酒、こけし、猫と犬。夢は、クリスマスのニューヨーク・セントラルパークでスケートをすること。妄想は、そのスケートのお相手がジム・カヴィーゼルだということ。

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