Yahoo!ニュース

【富田林市】世界遺産ではないけれど、田畑に残る古墳群の歴史散歩。近鉄汐ノ宮駅近くの西野々古墳群へ。

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

世界遺産の百舌鳥・古市古墳群だけでなく、富田林市内にも数多くの古墳があることで知られています。その多くは山の中にあったり、すでに住宅地になって消滅したりしています。

そういう意味では、田園が広がる広い場所にぽつんと残っている古墳、それも複数残されている西野々古墳群(にしののこふんぐん)は、きわめて貴重な風景です。

西野々古墳群は伏見堂地区にあります。近鉄汐ノ宮駅の東側、彼方(おちかた)から嬉(うれし)にかけて、石川の東側に広がる田畑地帯。それを南北に通っている道を歩いていくと、その姿が見えてきます。

実際にその前に来ると、小さな丘のようにも見えますが、周りの田畑と比べて明らかに違和感があります。自然のものでもない人工的な盛山。

最初に、伏見堂大橋に向かう道との交差点、伏見堂ふれあい広場の近くにある西野々古墳群の表示板をチェックしましょう。

西野々という名前は、古墳群の西側に位置する集落名の意味だとか。ちょうど石川が西の方に蛇行している場所で、西野々台地とも呼ばれています。

さて表示板に地図があり、各古墳群についての位置関係が明確に書かれています。ということでこの地図の位置関係を頼りに、ひとつずつ見ていきましょう。

最初は表示板のすぐ近くにある、一号墳です。これは明八塚(めはちづか)古墳と呼ばれているもの。説明版によると6世紀前半ごろに築造されたもので、高さ9メートル、直径46メートルの円墳だとか。

さらに、かつては古墳の周囲に幅6.5メートル、深さ0.8メートルの濠を持っていたそうです。

古墳を構成している敷石が見えます。濠の中には円筒埴輪(はにわ)や須恵器(すえき:古墳時代以降に作られた土器)の破片などが多く見つかったとか。さらにかつては石室が見えていたという伝承があって、横穴式の石室が存在したのではとの推測があります。

すぐにでも古墳に登れそうな位置にありますが、このように個人の所有物の中にあるので、勝手に入ってはいけません。外からだけ見るように注意しましょう。

ちなみに明八塚という名前には、もともとは円墳だったものを、何らかの理由で明八(正八角形)に改築したからともいわれているとか。

次は千代塚(ちよづか)と呼ばれている二号塚です。これは一号塚から南の方角。外から見ると、まるでフタコブラクダのこぶのように見えます。

本来は円墳で、このような形になったのは半壊していることによるもの。高さは4メートル、直径は25メートルあったそうです。

かつて埋蔵物(宝物)を狙って盗掘されたことがあると伝わっていて、その時には何も見つからなかったとか。また一号墳同様に、横穴式石室を持っているのではと推測されています。

また一号墳(北の明八塚)に対して、南の明八塚とも下の塚とも呼ばれているそうです。

次に三号古墳に行きましょう。ここは、コンクリートで作られた誘導路のようなところを歩いていくと、途中まで近づけます。この古墳は完全に形が壊れているようで、上から見るとL字型の盛り土が残されているとか。

畑に囲まれた位置にあるので、誘導路から先は近づくのも難しいのですが、よく見ると明らかに人工的なものであるのがわかります。調査によると方墳で、高さが2.5メートル、一辺あたり28メートルほどの長さだったとか。また石塚とも呼ばれているそうです。

最後は四号塚です。方墳ではないかと考えられており、高さ4メートルで1辺あたり15メートルではと推測。しかし墳丘の一部しか残っていません。

牛上塚と呼ばれているものですが、説明版ではそもそも規模が小さいので、本当に古墳かどうかわからないと書かれていました。

ところが、唯一、この四号墳には登ることができるように階段がついていました。

「上るな」とも書かれていないので、階段を登ってみました。そうすると、上には小さな祠があります。

祠の中には板が入っていました。今は何も見えませんが、おそらくかつてはこの板の中に、何かが書かれていて、それはご神体のようなものだったのでしょう。

手前に置いているふたつの石にも意味があると考えられます。

こうして西野々古墳の4つの古墳を見たわけですが、驚くことに古墳群の説明版には書かれていない、幻の五号墳があったという伝承があります。

四号墳の近く、かつて北側にあった「松の本」という小字(こあざ)に存在していたということなのですが、今は影も形もありません。

ということで、西野々古墳群を見てきました。田畑のど真ん中に明らかに人工的に見える複数の盛山。季節も春めいてきたので、広々とした田園風景の空の下で自然の風を感じながらの歴史散歩もいいのでは。

ただ、この古墳群は畑の真ん中にあるので、見学の際は農作業をしている人たちの迷惑にならないようにしましょう。また周囲には駐車場もなく道も狭いので、見学の際には公共交通をお勧めします。

西野々古墳群
住所:大阪府富田林市伏見堂
アクセス:近鉄汐ノ宮駅から徒歩14分

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

奥河内から情報発信の最近の記事