#MeTooの流れをくむ女性作家たちの性暴力批判「宣言」!これはとても意味のある動きだ
集会は150人参加の盛況、夜のニュースで報道も
2024年9月8日(日)14時から神保町の出版クラブ・ホールで日本ペンクラブ女性作家委員会主催のシンポジウムが開かれ、最後に「性加害のない世界を目指して」というステートメント(宣言)が発表された。
女性作家委員会では今回を含め6回にわたって「日本の性暴力・ハラスメントを考える」というシンポジウムを連続開催しており、今回はそのまとめとして宣言を発したものだ。会場には150人の参加者が訪れ、満席の盛況だった。
シンポジウム終了後、夜、家でテレビを見ていたら、NHK大河ドラマ『光る君へ』の後のニュースで、今回のシンポと宣言が大きく取り上げられていて驚いた。今なら下記で動画も見られる。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240908/k10014576391000.html
日本テレビも夜のニュースで取り上げたようだ。
https://news.ntv.co.jp/category/society/8df6241e28e6444b82708a703122d515
2022年の#MeTooでの作家の声明を受け継ぐ流れ
日本における#MeTooの流れとしては、2022年に映画界の性加害告発が行われたことが大きかったが、この時、問題は映画界だけでないとして、原作を提供している作家たちが同年4月12日に声明を発表して声をあげたことで告発の動きが広がった。その時に動いた山内マリコさんや柚木麻子さんらが、「日本の性暴力とハラスメントを考える」と題したシリーズ企画のイベントを重ねていた日本ペンクラブの女性作家委員会に合流する形で、結果的にあの時の声明を受け継ぐ動きとして進んできたのが、一連のシンポジウムだった。性加害問題に作家団体である日本ペンクラブとして取り組んでいこうという流れになっていったわけで、今回の「性加害のない世界を目指して」という宣言は、現時点でのそのひとつの集約といえた。
8日は3部構成で、第1部では女性作家委員会副委員長でもある大沢真知子・日本女子大学名誉教授が「性暴力・ハラスメントの問題点」と題して、調査データをもとにパワポを使って実情を説明。
次に第2部では認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ事務局長の小川隆太郎弁護士が「日本にない『国内人権機関』とは何か?」と題して講演。ヒューマンライツ・ナウも人権問題に取り組んできた団体だが、小川弁護士は、調査権限などを持った国内人権機関が作られる必要があると提言。内閣府の管轄に、例えば公取委のように独立性を持った機関として国内人権機関を設立すべきと訴えた。
第3部はこれまで6回のシンポジウムに関わってきた作家を含めて9人の女性が登壇した。発言順に、大沢真知子(日本女子大学名誉教授)、柚木麻子(作家)、篠田節子(作家)、品川裕香(教育ジャーナリスト)、白河桃子(ジャーナリスト)、山内マリコ(作家)、伊藤和子(弁護士、ヒューマンライツ・ナウ副理事長)、桐野夏生(作家、日本ペンクラブ会長)、吉田千亜(日本ペンクラブ女性作家委員会委員長)の各氏だ。
最後に吉田委員長が宣言を朗読
それぞれがコメントを述べた後、最後にペンクラブ会長の桐野夏生さんがコメント。そして女性作家委員会の吉田委員長が「性加害のない世界を目指して」というステートメントを読み上げた。下記の日本ペンクラブのホームページに公開されているが、全文を紹介しよう。
【日本ペンクラブ女性作家委員会宣言】
「性加害のない世界を目指して」
私たち、文芸・ジャーナリズム・アカデミズム等の世界で表現・創作・出版活動にたずさわる者たちは、社会通念や人々の意識が大きく変わった現代において、あらゆる差別、精神・肉体・性へのいかなる暴力、いかなるハラスメントも許されるものではないと考え、根絶に取り組んでいくことを宣言します。
宣言を実効性のあるものにするためには、日本の出版ビジネスも、人権を尊重する意識や仕組みを、国際基準を満たすレベルに引き上げることが急務と考えます。国連ビジネスと人権作業部会の報告書をはじめ、訪日調査で得られた結果や課題の解決に向け、国内人権機関設立などの可能性を見据え、日本社会が具体的な一歩を踏み出す必要があると考えます。
そのためにも、まずは文芸・ジャーナリズム・アカデミズム等の世界が、構造的に生じうる自らの加害性にも目を向け、声なき声がかき消されない、よりよい社会を目指し、未来に手渡す努力をし続けます。
2024年9月8日 日本ペンクラブ女性作家委員会
これまでの連続シンポでも、現役の女性作家が、文芸や出版界のセクハラなど、率直な発言や議論が行われてきた。一部は下記のペンクラブチャンネルにて動画視聴が可能だ。
https://www.youtube.com/@japanpen
今回のシンポも全容の動画が間もなく配信される予定だ。
一連の取り組みの意味はとても大きい
2022年からの#MeTooの流れは、昨年は旧ジャニーズ性加害問題へと新たな展開を遂げたが、そこで問われた「ビジネスと人権」の問題も一連のシンポジウムで取り上げられた。国内人権機関創設をという小川弁護士の提唱も、一連の議論を受けてなされたものといえよう。
ただ何といっても今回の取り組みは、多くの女性作家が自身の体験を踏まえてセクハラや性加害問題について率直に語ったことが大きな意味を持っていると言えよう。今回の取り組みについても、日本ペンクラブだけでなく、日本文藝家協会、日本SF作家クラブ、日本歴史時代作家協会、日本劇作家協会など多くの団体が「賛同団体」になっている。
今後、この議論をさらに大きく広げていくことが求められていると言えよう。