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マスターズ3日目。ムービングデーに「ムーブ・ダウン」したT・ウッズと松山英樹に「明日」はある!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

 マスターズ3日目は、「ムービングデー」の呼び名の通り、選手たちのスコアや順位を大きく動かす展開になった。「ビッグな動き」を起こさせた要因はさまざまだったが、最大の要因となったものは「寒さ」だった。

 3日目の土曜日は、米中西部では雪が降ったほどで、オーガスタ市を擁するジョージア州などの米南部一帯も強い寒波に襲われ、真冬のような寒さになった。

 寒くなれば、ボールは飛ばなくなり、距離的に一層タフになった今年のオーガスタ・ナショナルでは、より一層、厳しい戦いを強いられる。凍り付いたグリーンは一層、固く速くなり、小さなミスが大きなケガへつながった。ミスとは呼べないほどの小さな狂いでさえ、スコアを大きく乱す結果になった。

 昨年2月の交通事故で右足に重傷を負ったタイガー・ウッズは、このマスターズで508日ぶりの戦線復帰を果たし、初日は6度目の大会制覇を現実的に狙える10位で発進したが、2日目は19位タイへ後退。そして「明日は寒くてタフなビッグデーになる」と前日から気を引き締めていた3日目は、まさに寒さに翻弄されて大きく後退した1日となった。

 出だしの1番で3パットのボギー発進。2番ではバーディーを奪い返したが、5番は4パットしてダブルボギー。寒さのせいで飛距離が出せず、事故で負傷した右足も5度の手術を経た腰も寒さの中では痛みを増した。肉体の痛みは精神を乱し、集中力の乱れは、ショートゲームの乱れへ、ひいてはスコアの乱れへ。ウッズは、そんな負の連鎖に陥っていた。

 上がり3ホールは、すべて3パットを喫し、ボギー、ボギー、ダブルボギー。6オーバー、78はウッズがこれまでプレーしたマスターズでの合計93ラウンドの中でワーストスコアとなり、通算7オーバー、41位タイでこの日を終えた。

 「1000回ぐらいパットを打ってしまった。まるでパット練習をしていたようなラウンドになった。グリーン上は、ゼロ・フィール(感覚無し)の状態。もしも(3パットや4パットをせず)普通に2パットで収めていたら、今日の僕はイーブンパーで回れていたはずだ。ショットは打てていたけど、グリーン上が、まったくダメだった」

 寒さによって凍り付いたグリーンに泣かされ、スコアも順位も落としたのは、ディフェンディング・チャンピオンの松山英樹も同じだった。

 1番では、グリーン右からピン1メートほどへ上手く寄せたにも関わらず、パーパットがカップに蹴られ、ボギー発進。5番ではグリーンに翻弄され続けてダブルボギーを喫し、6番では、せっかく好打を放ちながら、バーディーチャンスを逃した。続く7番では寄せワンに失敗してボギー。9番と14番でバーディーを奪ったものの、13番では3パット、16番ではまたしてもパーパットがカップに蹴られるなど、グリーンに泣かされ続け、スコアを5つ落して77、通算2オーバー、14位タイでこの日を終えた。

 「風が強くて、昨日以上にタフなコンディションだった。1番のパーパット(が入らなかったこと)と13番の3パットが、きつかった」

 ウッズは首位とは16打差。松山は首位とは11打差。復帰戦で大会6勝目を狙っていたウッズも、史上4人目の連覇を狙っていた松山も、その望みは限りなく小さくなってしまった。

 だが、それでも前を向く姿を見せたところが、どちらもマスターズ・チャンピオンらしかった。

 松山は「トップとは離れてしまった。チャンスは、なかなかないかなと思うけど、明日、1つでも(スコアを)伸ばして、いい順位で終われるよう頑張ります」と、日本のゴルファーに向かって、健闘を誓った。

 そして、ウッズは「毎日が、その日その日が異なるチャレンジになる。明日も、朝、目を覚ましたら、もう一度、最初から、やり直したい」。

 明日は、半そでTシャツで過ごせるぐらいの暖かな日になる予報が出ている。気候も今日とは異なる明日の最終日、ウッズも松山も、優勝争いとは異なる人生の戦い、自分との戦いを、きっと披露してくれるはずである。そんな彼らの姿は、大勢のファンの励みに、きっとなる。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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