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ワールドカップ日本vsドイツでツイッターが盛り上がった瞬間はいつか

鳥海不二夫東京大学大学院工学系研究科教授
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

FIFAワールドカップカタール2022で日本がドイツと初戦を戦い,2‐1で逆転勝ちするというジャイアントキリングが発生しました.

正直試合前まではそれほど盛り上がっていた気はしないのですが,一気にワールドカップ熱が高まってきたように思います.

最近大きなスポーツではツイッター上でリアルタイムに盛り上がるのが一般的となっていますので,せっかくなのでどのタイミングにどのくらい盛り上がったのかを分析してみました.

とはいえ,サッカー観戦中なんて「キター」だの「ゴーーール」だの収集のしようのないツイートが大量に表れるため,ワールドカップ関係であることが明確なハッシュタグ「#ワールドカップ2022,#サッカー日本代表,#日本代表,#ワールドカップ,#W杯」を含むツイートのみを収集しました.

ツイートのピーク

その結果が下図です.リツイートとオリジナルツイート(リツイート以外)の数を分けて1分ごとのツイート数を表示しています.

日本vsドイツ戦1分ごとのツイート数(著者作成)
日本vsドイツ戦1分ごとのツイート数(著者作成)

最大のピークは勝利の2022/11/24 0:00でした.一分間に21,091ツイートがありました.もちろんハッシュタグを含まないツイートも大量にありますので,実際にはもっと大量のツイートがありました.

それ以外のピークを見てみると,堂安選手が同点弾を決めた23:37に7406ツイート,浅野選手が逆転弾を決めた23:45に8700ツイートがありました.

それ以外には,前半の前田選手のオフサイドとなったゴール,PKを決められた瞬間,ハーフタイムに入った瞬間などにピークが見て取れます.

当たり前の結果かなという気がしますが,普通とはちょっと違う点として,オリジナルツイートがリツイートより多い点があげられます.通常ツイッターではリツイートの数のほうがオリジナルツイートの数よりも多いのが一般的ですので,スポーツ観戦時はリツイートより自分で色々書くことが多いというのが良くわかります.

特徴語抽出

次に,各ピークの時間にどんな特徴語がつかわれていたのかを見ていきましょう.5分ごとにツイートを集約してtf-idfを使って特徴語を抽出,ワードクラウドで見てみます.

22:00試合開始

22時の特徴語(著者作成)
22時の特徴語(著者作成)

キックオフ直後は,はじまった!という単語が目立ちます.

22:05前田幻のゴール

22:05の特徴語(著者作成)
22:05の特徴語(著者作成)

前田選手のゴールがオフサイド判定でノーゴールになった瞬間です.オフサイドに皆一斉に悔しがっています.

22:30先制点

22:30の登頂後(著者作成)
22:30の登頂後(著者作成)

ドイツに先制点を決められた瞬間です.「PK」「先制」という単語が大きく出ていますが,それ以外にも「あーあ」「うわ」という単語が目立つ一方で「しゃあない」「切り替えよ」「想定内」などまだまだこれからというツイートが多いようです.

ちなみに,「クーポン」とか「プレゼント」とかあるのは,流行りのハッシュタグに乗っかって宣伝をするというボットが多く存在するために出てきているものです.人の目に触れるという意味ではいいのかもしれませんが,宣伝方法としてはどうなんですかねえ・・・

23:30権田大活躍

23:30の特徴語(著者作成)
23:30の特徴語(著者作成)

この時間はドイツの波状攻撃によって連続でシュートを受けたのを権田選手がナイスセーブを連発しました.ナイスセーブでかすぎです.

23:35 同点弾

23:35の特徴語(著者作成)
23:35の特徴語(著者作成)

そして,ついに後半30分同点弾が生まれます.ツイッター上がめちゃめちゃ興奮していることが分かります.

23:40 逆転

23:40の特徴語(著者作成)
23:40の特徴語(著者作成)

そして,23:40についに浅野選手のシュートで逆転です.同点弾に比べると「うそ」というのが入っていて,同点まではあり得ても逆転というのが信じられない,という思いを皆持っていたことが分かるような気がします.

23:50 アディショナルタイム

23:50の特徴語(著者作成)
23:50の特徴語(著者作成)

そして,7分間の長いアディショナルタイム.「長」という漢字がやたら含まれているのが興味深いです.そして,なぜか毘沙門天の開運真言が特徴語として入っています.何がどうした.

ちなみに,アディショナルタイムの間はツイート数が明らかに減少していました.皆ツイートどころじゃなかったことが良くわかります.そして,安定のクーポンプレゼントキャンペーン.ボットだけはアディショナルタイムの間も落ち着いたプレイをしています.

24:00 試合終了.逆転勝利.

24:00の特徴語(著者作成)
24:00の特徴語(著者作成)

そして,24:00ついにタイムアップで逆転勝ち.特徴語として叫び声が出てくるくらい皆大騒ぎだったことが分かります.ここから30分ほどは同じようなワードクラウドが続き,ひたすらおめでとう,やったーという喜びが繰り返されていました.

ツイッター上で喜びを分かち合うというのは最近のスポーツ観戦としては重要な要素の一つとなっている気がします.

なお,さすがのクーポンプレゼントキャンペーンも日本中の勝利の雄たけびにはかなわなかった模様.

24:35 祝日の提案

24:35の特徴語(著者作成)
24:35の特徴語(著者作成)

そして,少し落ち着いてきた24:35ごろ,「サウジアラビアを見習って24日を国民の祝日にしよう!」という提案が盛り上がりました.

個人的にもぜひ実現してほしかったんですけどね.残念.

いや,でもこれから試合が進んで,決勝トーナメントに行ってベスト8あたりまで行けたら国民の祝日になるかもしれません.

というわけで,特徴語を5分ごとに試合の経過とともに追ってみました.試合の経過とツイッターは連動しており,試合を見ながらツイッターを使っていた人が多いことが分かります.こういった皆で盛り上がるために使うというのは,まさにソーシャルメディアの良い使い方の一つではないでしょうか.

日本代表は最低でもあと2試合は行います.是非残りの試合も盛り上がっていきたいところですね.今回こそベスト8以上を目指してほしいと願っています.

東京大学大学院工学系研究科教授

2004年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム工学専攻博士課程修了(博士(工学)),2012年より東京大学大学院工学系研究科准教授,2021年より現職.計算社会科学,人工知能技術の社会応用などの研究に従事.計算社会科学会副会長,情報法制研究所理事,人工知能学会前編集委員長.人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,日本社会情報学会,AAAI各会員.「科学技術への顕著な貢献2018(ナイスステップな研究者)」

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