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ブラックホール情報パラドックスとは?最新の研究で遂に解決!?

どうも宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「ブラックホール情報パラドックスと、最新の解決策」というテーマで動画をお送りしていきます。

科学は日々発展していますが、人類がこの宇宙を理解する上で未解決の問題はたくさんあります。

その中でも難問とされているのが「ブラックホール情報パラドックス」です。

●物理学でいう情報とは

光や電波などで宇宙を観測することで、昔の宇宙の様子を知ることができます。

これは光や電波が過去の宇宙の情報を伝えているからです。

物理学の法則は「情報が失われることがない」ということを示しています。

例として、ニュートン力学でのボールの運動を考えてみましょう。

投げた時のボールの位置と速度(速さと向き)が分かっていれば、運動方程式によってその後のボールの運動が予測できます。

また、ある時点の位置と速度からそれまでのボールの経路を逆算できます。

実際に、ボールの進行方向に垂直に板を置くとボールの運動方向を反転させることができます。

板との衝突や空気抵抗でエネルギー損失がなければ、ボールは来た経路をそのまま戻っていきます。

現代の物理学の基礎であり、ミクロの世界を記述する量子力学でも情報は保存されます。

宇宙にあるすべての物質は、それ以上に分解できない最小単位の粒子である「素粒子」からできています。

量子力学では、素粒子の運動は波のようなもので表現されます。

これを「波動関数」と呼びます。

波動関数が分かれば、未来の状態を予測でき、過去の状態も知ることができます。

量子力学では波動関数にあらゆる情報が含まれているのです。

相互作用によって物質やエネルギーの形態が変化しても情報は保存されます。

例えば、本を燃やすと、灰になって元の本に何が書いてあったか分からなくなります。

しかし、燃やした時に出た二酸化炭素や水蒸気や灰、そして放射された光の中にすべての情報が含まれています。

原理的には燃えた後にできた物質や光の情報を集めてきて元の本を再構築することが可能なのです。

情報は現実的な方法では修復が不可能なほどかき混ぜられて分かりにくくなっただけで、失われてはいないのです。

●ブラックホールと情報

光の速度は秒速30万kmで、これが宇宙での情報が伝わる最高速度です。

宇宙には、中に入るとこの光の速度でも脱出できないほど強大な重力を持つ天体が存在します。

それが「ブラックホール」です。

地球の表面から脱出するには、秒速約11kmの初速度が必要です。

これは日常感覚では非常に速く感じますが、光速に比べれば這うような遅さです。

重力の強さは、天体の質量に比例し、中心からの距離に反比例します。

もし、地球の質量を固定したまま押しつぶすと、その分表面重力が強くなり、脱出速度も大きくなっていきます。

そして地球を質量固定のまま半径1cmに満たない程度まで押しつぶしたとしたら、脱出速度は遂に光速を超え、ブラックホールになります。

相対性理論では、強い重力によって時空が曲がって光の経路が変わり、ついには光さえ閉じ込めてしまった天体がブラックホールです。

この光が脱出できなくなる境界を「事象の地平面」といいます。

光より速く伝わるものはないので情報もブラックホールの外へは出られません。

本をブラックホールに投げ入れると、その本は二度と読むことはできません。

実際には、本を構成している物質は素粒子レベルに分解されてブラックホールの中心に向けて落ちていきます。

しかし、情報は失われることがないので、本の情報もブラックホールの中に保存されているはずです。

●ブラックホールの蒸発

1974年、スティーブン・ホーキング博士はブラックホールが徐々に蒸発しているという理論を発表しました。

途方もなく長い時間をかけて、ブラックホールは質量を失っているのです。

これはどういうことなのでしょうか?

ブラックホールからは何も出ることができなかったはずです。

これを理解するには、対生成と対消滅という概念を知る必要があります。

Credit: Dmitri Pogosyan / University of Alberta
Credit: Dmitri Pogosyan / University of Alberta

真空は何も無い空間と考えられていました。

しかし、量子力学では、何もないと思われていた真空で粒子と反粒子が生まれては消える、対生成と対消滅を繰り返していることが分かりました。

宇宙のあちこちで粒子と反粒子のペアの生成と消滅が繰り返されているわけです。

ところが、ブラックホールの事象の地平面のすぐそばで対生成が起きたらどうなるでしょうか?

一方が事象の地平面のそばから離れていき、もう一方が内部へ飲み込まれる場合が起こる可能性があります。

逃げた方の粒子は、「ホーキング放射」と呼ばれます。

ホーキング放射はプラスのエネルギーを持っているため、それと釣り合うために内部に落ちた粒子はマイナスのエネルギーを持つとされます。

ブラックホールの内部では落ちてきたマイナスのエネルギーを持つ粒子と、ブラックホール内の粒子が打ち消し合うことで、ブラックホール全体の質量とエネルギーは徐々に失われてしまいます。

そして最終的にはブラックホールは極めて長い時間をかけて完全に消滅してしまうと考えられています。

●ブラックホール情報パラドックス

ホーキング放射が起き、ブラックホールが蒸発した際、ブラックホールに閉じ込められていた情報はどうなるのでしょうか?

ホーキング博士は、ブラックホールが蒸発するとき、ブラックホールに捕らえられていた情報は宇宙から消えるといいます。

なぜなら、「ブラックホールには毛が3本しか存在しない」とされているためです。

内部に落ちた物質によって、外部から見たブラックホールの性質に多様な個性が生まれれば、それは情報が失われていないと判断できます。

ですが実際は、ブラックホールの特徴は質量、スピン、電荷の3つのみでしか表せず、内部に落ちた物質によって差が生まれることはないと考えられてきました。

この特徴から「ブラックホールには毛が3本しかない」と例えられます。

ブラックホールは毛が3本のまま、最終的に消滅してしまうと考えられています。

つまり一度ブラックホールに入った情報は、二度と外部に漏れることなく、永久に消失してしまうのです。

情報の喪失は、物理学の基本原理と矛盾が生じてしまいます。

この矛盾を「ブラックホール情報パラドックス」と呼んでいます。

●情報パラドックスの解決方法

そこで、このパラドックスを何とか解決する方法がないか考えられてきました。

これまで様々な解決方法が考案されていますが、どれも相対性理論か量子力学のいずれかを書き換える必要があるという難点を持っています。

そんな中今回は、2022年3月とつい先日発表された、相対性理論にも量子力学にも矛盾せずに、このパラドックスを解決できるかもしれないと話題を呼んでいる最新の説を紹介します。

最新の説では、これまで3本と考えられてきたブラックホールの毛が、量子スケールではなんと無数に存在している可能性を示しています。

量子力学では、重力は「重力子」と呼ばれる粒子によって伝えられると考えられています。

研究者たちは、ブラックホールが持つ重力場を、重力子の非常に小さいスケールで考慮しました。

するとなんとブラックホールがどのような物質のどのような配置によって形成されたのかによって、重力場が変化することが示されたそうです。

つまりブラックホールに飲み込まれた物質の情報は、ミクロなスケールでの重力場に保存されており、ブラックホールが蒸発しても失われることはありません。

ただし、重力子は極めて力が弱く、現時点の最新の技術を持ってしても観測できていない、仮説上の粒子です。

さらに今回の発見が真実で、それぞれのブラックホールがミクロなスケールの重力場で多様な特徴を持っていたとしても、重力場でブラックホール内部の情報全てを表現できるとは限らないと指摘する科学者もいるようです。

今後も最先端の研究が進み、誰もが認めるブラックホール情報パラドックスの完璧な解決策が得られるのが楽しみですね!

http://www.sci-news.com/astronomy/quantum-hair-10641.html
https://www.theguardian.com/science/2022/mar/17/quantum-hair-could-resolve-stephen-hawking-black-hole-paradox-say-scientists
https://www.sciencealert.com/physicists-think-they-ve-cracked-hawking-s-famous-paradox-using-quantum-hair

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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