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4月2日東京タワーがブルーに染まる?!夜桜越しに青いタワーを見たら周りに伝えて欲しいこと

竹内弓乃特定非営利活動法人ADDS共同代表/臨床心理士/公認心理師
東京タワーがブルーに染まる?!(写真:アフロ)

4月2日の夜、東京タワーがブルーに染まります!

国連総会(H19.12.18開催)において、カタール王国王妃の提案により、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」(World Autism Awareness Day)とすることが決議されました。自閉症のテーマカラーであるブルーを目印に、世界各地で理解を促す取り組みが行われています。

日本でも、世界自閉症啓発デー・日本実行委員会が組織され、毎年、世界自閉症啓発デーの4月2日から8日を発達障害啓発週間として、シンポジウムの開催やランドマークのブルーライトアップ等の活動が行われます。

世界自閉症啓発デー日本実行委員会公式サイト

昨年の啓発デー前には、セサミストリートに登場した自閉症の女の子ジュリアの記事を書かせていただきました。

4月2日は何の日?セサミストリートにジュリア登場!エルモの神対応に学ぶ、自閉症児との上手な遊び方」

今年はなんと、そのジュリアちゃんがイメージキャラクターになりました!!

日本の自閉症啓発デーのポスターやイベントにも登場し、ブルーの理解の輪を世界中で広げています。

ジュリアちゃんが世界自閉症啓発デーのイメージキャラクターに!
ジュリアちゃんが世界自閉症啓発デーのイメージキャラクターに!

それにしても、「啓発」というのにはいつも難しさを感じます。

今回のライトアップに関して言えば、遠くから青くライトアップされたランドマークを見ても、おや?と思うくらいで、誰も自閉症を理解するわけではありませんよね。昨今いろんなイルミネーションがあるので、東京タワーが青いことに異変を感じてわざわざググる人もそう多くはないでしょう。

イベントやシンポジウムに参加するのは、すでに自閉症について知識のある関連団体の方や、当事者やそのご家族などが多く、自閉症について何も知らなかった人へ情報を届けることはとても難しい。

そうすると、この記事をお読みの方を含め、ちょっと知っている人が、青いタワーをきっかけに話題を提供することがとても重要になります。自閉症をせめてこの日だけでも話題にのぼりやすくするために、ちょっと知っている人たちに協力してもらえるのが、「自閉症啓発デー」ということでしょう。

そこで、この記事をお読みいただいている皆様にお願いです。

4月2日に青いランドマークを見つけたら、ぜひそれを話題にして、そばにいる人にこう伝えてみてください。

「自閉症は、心の病気ではなくて、先天的な脳の機能の違いなんだって」

「診断があってもなくても、早い時期に適切な支援を受けることで、可能性が大きく広がるらしいよ」

「周りと少し違っていても、みんながお互いに優しい社会になるといいね」

自閉症は心の病気ではない

「自閉症」は、「心の病気」「ひきこもり」「母親の育て方のせい」などという誤った認識で、本人や家族が辛い思いをするケースがまだあります。しかし、自閉症は心の病気ではなく、先天的な脳の機能障害です。原因は明確に特定されていませんが、遺伝的・環境的何らかの要因であることが分かってきています。

自閉症を敢えて端的に説明すると、「身体の内外の刺激が、定型発達といわれる人と同じようには脳に伝わらない障害」です。

そのために、症状として様々な特徴が現れます。例えば、他者の感情を理解することの苦手さ、目の合いづらさ、社会的コミュニケーションの苦手さ、特定のパターンや物事への執着などです。しかし、症状の程度や現れ方が一人一人少しずつ違い、先に挙げたような特徴が当てはまる人も、一部しか当てはまらない人もいます。知的障害を伴う場合もあり、その程度も様々です。つまり、「理解する」と一口に言っても、非常に捉えづらい障害なのです。

そのため、一見障害がないように見え、周囲からは躾のできていない子と思われたり、保護者や家族自身も「障害じゃない」「そのうち他の子と同じように成長するのでは」と思い、専門機関への相談や支援が遅れるケースも多いというのが、この障害の難しいところです。

少しでも不安があれば、お子さんの困り感や発達の可能性を見過ごさないために、インターネットで調べたり、近くの相談機関に相談してみることをお勧めします。

早い時期からの支援が重要

医療機関での診断は、専門医の少なさなどからばらつきもあり、受診までに時間がかかることも多いです。また、診断を受けたからといって、すぐに具体的かつ有効な支援を紹介してもらえるわけでもないのが日本の現状です。

しかし、診断名よりも重要なのは、その子自身の特徴をよく把握し、その子に合った支援を早い段階から開始することです。障害があってもなくても、物事の認知の仕方や得意不得意は人それぞれですから、その子の特徴に合った支援を通して発達を促していくことは、どんな子にとっても有効なはずです。

繰り返しになりますが、少しでも不安があれば、ご家族ご自身で調べたり、近くの相談機関に相談してみることをお勧めします。

セサミストリートのように、ジュリアにもみんなにも優しい社会を

上に挙げたような支援を通して、自閉症がある子自身が様々なことを学び、自身の可能性を広げていくことも重要ですが、社会の側にもできることがあります。

家族が障害を受け入れることができなかったり、本人や保護者が困り感や生きづらさを感じる背景には、社会の不寛容や「普通が当たり前」という暗黙の価値観があります。

セサミストリートの世界では、いろいろな特徴をもつキャラクターがいて、ジュリアのように自閉症がある子もいて、お互いの違いを楽しみ、尊重し合いながら、とても豊かで暖かい人間(?)関係を築いています。

 お気づきでしょうが、私たち一人一人、違った特徴を持っています。普通と違う者への不理解や不寛容は、巡り巡って自分自身を息苦しくする社会の空気に加担していることになります。

 自閉症の女の子ジュリアに優しい世界は、私たちみんなに優しい世界です。自閉症を理解するブルーの輪を、日本全国に広げていきましょう。そうすることが、皆が生きやすい、優しい世界の実現に、少しでも近づくと信じています。

4月2日は東京タワーへ!日本にもブルーの輪を広げよう

来る4月2日には、東京タワーがブルーに染まります。

遠くからでも眺めることができたら、ぜひ話題にしていただくようお願いしましたが、実は、タワーの麓では、ダンスや音楽、関係団体のブース出展など盛りだくさんのイベントが開催されます。今年は、米国から来たジュリアちゃんと写真撮影ができるコーナーもあるそうです!

お近くへお越しの方は、ぜひ足を運んでみてくださいね。

特定非営利活動法人ADDS共同代表/臨床心理士/公認心理師

慶應義塾大学文学部心理学専攻卒業、同大学大学院社会学研究科心理学専攻修士課程修了、横浜国立大学大学院学校教育臨床専攻臨床心理学コース修士課程修了。ある自閉症児とその家族との出会いをきっかけに学生セラピストの活動を始め、大学院にて臨床研究を重ねる傍ら、2009年ADDS設立。親子向け療育プログラムや支援者研修プログラム、事業者向けカリキュラム構成システムの開発などに携わる。国立研究開発法人科学技術振興機構社会技術研究開発事業(JST-RISTEX)「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(SOLVE for SDGs)」プログラムアドバイザー。NHK「でこぼこポン!」番組委員。

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