発達障害があるお子さん〜STAY HOME ヒント集〜
安倍首相の会見で、大川興業・大川総裁が質問
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受け、緊急事態宣言が5月末まで延長されました。外出自粛や休校、保育園などへの登園自粛なども続くこととなり、子ども達が毎日自宅で過ごす期間があと1ヶ月近く延びることに疲弊する家庭の声も聞かれます。
そんな中、4日、安倍晋三首相の会見にフリーランス記者として出席した大川興業総裁でタレントの大川豊氏(58)が、「知的障害や発達障害の子どもに対する行動指針」について質問した内容が話題となっています。大川氏は、知的障害者の施設を見てきた自身の経験を踏まえ、知的障害や発達障害の子どもに対しての行動指針を政府としてどう示すかについて質問していました。
大川総裁が総裁に質問 フリーランス記者として安倍晋三首相会見に出席
限られた会見時間の中で、発達障害や知的障害というマイノリティにスポットを当て、現場を踏まえた素晴らしい質問が出たと目が覚める思いでした。
発達障害や知的障害がある子の現状
発達障害があるお子さんのいらっしゃる実際のご家庭の生の声として、このような記事が読まれています。
<新型コロナ>発達障害児、窮地 在宅でリズム崩し自傷 親もストレス懸念
記事の中では、お子さんが学校へ通えないために生活リズムが崩れてしまうことや、集団生活を学ぶ機会を失うこと、衝動性が強いために家族だけで容易には外出ができず、家の中で負担を抱え込むことへの不安や困り感が綴られています。また、発達障害があるお子さんの中には、家族でも意思疎通が難しい場合も多く、長い自粛生活の中で虐待につながるケースが増えるリスクなども指摘されています。
発達障害や知的障害がある子の場合、一般的にも以下のような特徴があります。
- 生活のルーティンが変わることが苦手
- 子どもによっては、じっとしていることが難しく、外出や身体を動かすことが制限されるととても苦しい
- 言葉だけで状況を把握することが難しい場合が多い
- 活動のレパートリーが少なく、外出自粛中に替わりの活動を見つけることが容易でない
- 生活の中で、活動の切り換えが苦手
- 疲れやストレスなど、自身の内面の変化に気付いたり、言葉で表現したり、自分なりに発散することが苦手
一口に発達障害と言っても、その特徴は非常に多様で、皆がこのようなことで一様に困っているとは限りませんし、こういった難しさは、大なり小なりどの子にもあります。しかし、その程度が大きく、今のような非常事態においては、本当に大変な思いをされているご家族が沢山いらっしゃることが考えられます。
緊急時など、どうしても社会的マイノリティへのサポートは置いていかれがちです。しかし、緊急時に限らず、発達障害がある子どもたちにとって分かりやすい対応は、定型発達と言われる子どもたちにとっても有効であることがよくあります。
外出自粛や休校措置、登園自粛などで生活の形がガラッと変わり、外出自粛でしんどい思いをしている家庭は、障害の有無にかかわらず沢山あるはずです。
本記事では、発達障害があるお子さんへの支援の現場に携わってきた経験を踏まえ、発達障害があるお子さんとご家族のSTAY HOMEのヒントをまとめます。筆者の所属する法人のHPに、「発達障害のあるお子さんのSTAY HOMEヒント集」としてまとめた冊子のリンクも記載しますので、必要な方はどなたでもダウンロードしてご利用ください。
お子さんのいらっしゃるどのご家庭にも参考にしていただければと思います。
生活リズムを安定させ、スケジュールの見える化を
先にも述べましたが、発達障害があるお子さんは、日々のルーティンが変わることが苦手な場合が多いです。外出自粛期間には、どうしてもこれまで通りのルーティンは制限されるので、今の生活にあった新しいルーティンを決め、安定したリズムを繰り返すよう心がけましょう。また、その生活のスケジュールは、ホワイトボードなどに文字やイラスト、写真などでみえる化することが有効なことがあります。スケジュールを決める際には、「やらなければいけないこと」と、「やりたいこと」のバランスをとることも大切です。ゲームや動画、アプリが好きなお子さんも多いと思います。見せすぎ、やりすぎが気になるところですが、事前に終了の目安を伝え、うまくスケジュールに組み込むことも有効です。
活動の切り換えの工夫を
発達支援に携わっていると、保護者の方から、お子さんの「活動の切り換えが難しい」というご相談はとても頻繁に受けます。ただでさえ切り換えに難しさのあるケースが多いのに、外出自粛によりずっと家庭で過ごすことになると、場面の切り換えはさらに難しくなることが想像できると思います。
- 時間やスケジュールで見通しを立てること
- 「〜までやったら」のように切り換えのタイミングの約束事を決めること
- お子さんの様子を見て、なるべく切り替えやすいタイミングで声掛けする
- 人が指示するよりも、タイマーなどのシステムで知らせる
- 「〜が終わったら、〜しよう!」のように、次の楽しみなことを提示する
などの工夫が有効です。
新型コロナウイルス、どう伝える?
理解できるお子様には、新型コロナウイルスについて分かりやすく説明することも重要です。絵などを使い、簡潔に繰り返し伝えましょう。筆者の所属する法人で作成した、お子さん向けの説明資料を掲載します。
手洗いのコツ、マスク着用のコツ
私たちは大事だと分かるマスクと手洗いですが、お子さんにとってはいまいち必要性を感じにくいものです。マスクを嫌がる!手洗いを嫌がる!とお困りのご家庭も多いかもしれません。実は感覚的に受け付けなかったり、「分からないこと」が多く不安だったり、お子さんの嫌がる理由は様々です。
お子さんに寄り添いながら、ご家庭でできることをまとめてみます。
<手洗い編>
・手洗い場を楽しくする
抵抗がある場面でも、他の楽しいことに興味が向くと抵抗感が薄れることもあります。キャラクターグッズや、自動でハンドソープが出るポンプなどもよいでしょう
・誘い方を工夫する
手洗いに関する絵本を見て誘ったり、「水遊び」として誘ったり、家族で手洗い競争をするなど、誘い方を少し変えてみることも有効な場合があります。
<マスク着用編>
マスク着用には、まずはマスクを知るところから、スモールステップで着用まで進めていけると良いですね。
- まずマスクについて知る、触れる
マスクの出てくる絵本を読んだり、マスクを触ったり、ぬいぐるみにマスクをつけたりしながら、マスクに慣れましょう。
- 家庭で短時間マスクをつける練習をする
家の中で、短い時間からマスクをつけて過ごす練習を始めます。はじめは10秒間タイマーをセットして、鳴るまでの短い時間で構いません。マスクをつけていることを一時期忘れられるよう、DVDを鑑賞したり、好きな遊びに集中させてあげるのもお勧めです。
- マスクをつけて外出してみる
「お家でマスクできたから、今度はお散歩行こう」「マスクしてオヤツを買いに行こう」など、マスクをしたままお子さんの喜ぶ活動をすることがコツです。
困ったら気軽に相談を
最後にやはり大事なことは、大変な状況や困り感をご家庭だけで抱え込まずに、難しい、辛いと感じる気持ちや出来事は、遠慮なく相談し、サポートを求めてください。
「乳幼児健診が休止となり、子どもの発達が心配」
「子どもの癇癪やパニックがひどくなった」
「些細なことで子供にイライラしてしまう」
など、どんな内容でも良いと思います。
各自治体や、自治体の発達相談・支援センターなどが、相談窓口を設置しています。「自治体名 発達相談」などで検索してみてください。
一口に「発達障害がある子」「発達が気になる子」と言っても、その特徴は様々ですし、ご家庭の状況も様々です。
ケースバイケースのニーズに合わせて、様々な支援が必要です。筆者の所属する法人でも、「療育機関に通所したいけれども、外出を控えているため通所ができない」というご家庭には、オンラインでのコンサルテーションを実施しています。「普段は外出自粛をしているけれども、週一回の療育には直接通いたい」という方には、施設の消毒や三密を避ける配慮をし、一定の条件を設けて対面支援の受け入れをしています。また、江戸川区の委託を受け運営している発達相談・支援センターでは、電話相談なども区内在住者を対象に広く受け付けています。
当法人だけでなく、全国で様々な支援機関の方々が、支援の必要なお子さんやご家族のために様々な工夫を重ねています。緊急事態宣言が延長され、もうしばらく大変な状況が続きそうです。ご家庭でできることは工夫を重ねていただきながら、支援機関とご家庭が手を取り合って、お子さんの安定した生活と、大切な発達の機会を補償する環境をつくっていけるよう、ともに努力を重ねていきましょう。
「発達障害のあるお子さんのSTAY HOMEヒント集」はこちらからダウンロードできます。