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ガソリンは今年最安値を更新、灯油も安い

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

資源エネルギー庁の「石油製品価格調査」によると、11月9日時点でのレギュラーガソリン全国平均価格は、1リットル当たりで前週比0.5円安の132.7円となり、今年の最安値を更新している。今年のガソリン価格は、2月9日の133.5円をボトムに7月6日の145.2円まで上昇していたが、その後は18週中で16週が前週比マイナスになっており、11月入りしてからは2週連続で今年の最安値を更新している。

原油調達コストの値下がり傾向が続く中、石油製品の卸値もそれと連動する形で引き下げられており、2010年11月29日の週以来の安値更新になっている。前年同期のガソリン価格は159.5円であり、原油相場の急落で既に値下がりしていた1年前と比較しても27.3円(16.9%)もの大幅な値下がりになっている。この時期としては2009年以来、6年ぶりの安値である。

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■数少ない値下がり輸入商品

昨年後半以降の急激な原油安は、中東の伝統的な産油国と比較して生産コストが高いシェールオイルや深海油田、オイルサンドなどに大きなダメージを及ぼしており、特に米国の産油量は1年前の生産水準に回帰しつつある。しかし、今後は世界的な景気減速で需要の大幅な伸びが想定しづらい一方、石油輸出国機構(OPEC)が大規模な増産政策を展開し続ける中、なお「過剰供給」という基本フレームに変化は生じないとの悲観的な見方が、原油相場の上値を強力に圧迫している。

国際エネルギー機関(IEA)は10月月報において「2016年を通じて過剰供給が続く」可能性を警告している。OPEC内部からは2016年中にも需給均衡状態が実現するといった見方も浮上し始めているが、原油採掘・生産への投資縮小がどの段階で需給リバランスの実現をもたらすのか分からないとの見方が、原油価格の長期低迷をもたらしている。国際指標となるWTI原油先物相場の場合だと、昨年前半の1バレル=100ドル水準に対して今年1~4月にかけて50ドル台を割り込んだ後、5~6月にかけては60ドル水準まで反発するような動きも見られた。しかし、その後は8月に40ドル台を割り込むなど40ドル台中盤をコアとした上値の重い展開が続いており、なお原油相場の底入れは確認できない状況になっている。

米国の早期利上げ観測が強まる中、為替市場で急激なドル高圧力が発生していることも、ドル建てで取引されている国際原油相場に対してはネガティブである。本来は冬の需要期に向けて値上がりし易い時期だが、なお安値更新の可能性も払拭できない状況にある。

ここから大きく値崩れを起こすような環境にもないが、何らかの原油生産トラブルが発生するか、急激な円安が再現されない限り、ガソリン相場は来年に向けて低迷状態が続く可能性が高い状況になっている。

一方、灯油価格も安値更新が続いている。7月6日時点では1リットル=85.8円だったが、その後は18週連続で値下がりしており、直近の11月9日時点では76.3円に留まっている。前年同期の103.0円を25.9%下回っており、家計にとっては今年の暖房油のコスト負担は大幅に軽減される見通しになっている。消費増税や円安で輸入消費財には軒並み値上がり圧力が発生しているが、こうした中で灯油は家計負担を緩和する数少ない「優良」セクターになっている。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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