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【ローマATPマスターズ1000】西岡良仁、初戦で敗れるも 「理想に近いテニスができている」

内田暁フリーランスライター
写真はバルセロナ・オープンでシュワルツマンと対戦した時の西岡良仁(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

1回戦 ●西岡良仁[Q] 16 46 D・シュワルツマン○

 テニスの試合を言い表す比喩として、「チェス」や「将棋」、時に「剣道」などがよく用いられますが、ツアーきってのストローカーであるディエゴ・シュワルツマンと西岡良仁の試合を見ていると、「陣取り合戦」という言葉が思い浮かびます。激しく撃ち合いながらも、ネットを挟む2人の距離は常にほぼ一定。ただし両者の立ち位置は激しく変化し、片方が前に踏み込めば他方は下がり、1本の深いショットやアングルショットを呼び鈴に、すぐさま攻守が入れ替わります。

 その試合の立ち上がりで、より多くの陣地を取ったのは西岡でした。特にバックは、ネジを限界まで巻くようにタイミングが早く、シュワルツマンを押し込みます。第1ゲームで西岡が、いきなりのブレークに成功しました。

 しかしこの速い展開の成功体験が、その後、西岡を苦しめます。続くゲームをブレークされると、早いミスが目立つように。第2セットの1-5から3ゲーム連取で意地を見せるも、追いつくまでには至りませんでした。

 試合後に西岡は、「今日は調子が悪かった。こういう日もあるくらいに捉えています」と端的に述べたうえで、ミスが増えた理由を「ラッシュ(焦り)し過ぎてしまった」と総括しました。その攻め急ぎの因子は、いくつかあります。

 ひとつは、約1カ月前のバロセロナでのシュワルツマンとの対戦で、セットを先行しながら守りに入り逆転を許したこと。

 もうひとつは、クレーの試合ではここ最近、2時間を超えると必ずと言ってよいほど、左足がケイレンに襲われること。左足に負荷を掛けすぎることが原因と思われるその不安要素が、焦りを生んだと西岡も認めました。

 同時に、徐々に攻撃的なスタイルへとシフトしていくことは、最近の西岡が目指していることでもあります。

「今は理想に近いテニスができている。今日はラッシュしすぎたけど、ここまで行き過ぎるとミスになるというのが1つわかった。相手にもよりますが、どこまでというのを探りながらやっていく。その感覚を毎週しっかりつかめれば、全仏にも良い状態で挑めると思います」

 来週、ジュネーブの大会でその最後の感覚を確かめたうえで、初の本戦白星を勝ち取るべく、ローランギャロスへと臨みます。

※テニス専門誌『Smash』のFacebookから転載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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