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塾で教え子盗撮の講師 その罪と罰

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

大手中学受験塾で教え子である女子小学生の下半身を盗撮し、小児性愛者が集うサイトやSNSに投稿したとして、20代の男性講師が懲戒解雇された。警察も動いており、近く刑事事件に発展するだろう。サイトのメンバーも捜査の対象となる。

これまで盗撮はもっぱら都道府県の迷惑防止条例で処罰されてきたが、教室などプライベートに近い空間のどこまで規制範囲を広げるのか、自治体ごとに判断が異なる。刑罰も軽く、最高刑は今回の東京都だと懲役1年、常習でも2年にとどまる。投稿や拡散を規制できないなどの問題もあった。

そこで7月13日に性的姿態撮影等処罰法が施行され、意に反する性的動画や画像の撮影、記録、提供、送信、保管などが全国一律で広く処罰の対象となるとともに、最高刑も撮影・記録で懲役3年、不特定多数に提供・送信すれば懲役5年と厳罰化された。盗撮やサイトへの投稿がいつ行われたかによって、適用される罰則が異なることになる。

講師は被害児童の実名や住所などをさらし、サイトのメンバーに性犯罪を呼びかけていたほか、自らの性犯罪歴まで語っていたという

盗撮について専門医は「自己の満足や快感を得るために他者に危害を加えてしまうパラフィリア(性的倒錯)」「社会的立場を失うリスクは理解しても、欲求が勝ってしまう。中には性的興奮を覚えなくても、盗撮自体が目的となっている人もいる」と説明

政府は子どもと接する職業につく人に性犯罪歴がない証明を義務付ける方針だが、学習塾やスポーツクラブの講師らが対象外になっているのは問題だと話題に

盗撮はスマホなど撮影機材の小型化・高性能化で一層容易かつ巧妙となっており、犯行に及ぶ者の裾野も広がっている。常習犯や再犯にも陥りやすい。現に警察庁によると、昨年の盗撮犯の検挙件数は5737件と過去最多に達しているうえ、8割の事件でスマホが使用されているという。

盗撮は単なる迷惑行為ではなく、非接触型の性犯罪にほかならないが、回線速度の向上でネット投稿も容易となり、被害者の意に反して盗撮動画や画像が全世界に拡散され続けるといった二次被害も生じている。

これまでは刑法の規定で動画などの原本しか没収できなかったが、法改正により、コピーの没収のほか、データの消去や廃棄を強制的に命じる制度も創設された。盗撮被害の拡大防止に向け、適切に運用されることが望まれる。

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサー編集部とオーサーが共同で企画したキュレーション記事です。キュレーション記事は、ひとつのテーマに関連する複数の記事をオーサーが選び、まとめたものです】

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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