カープのマエケン入札料の一部寄付は結構、しかし肝心の補強に資金が回っていないのはどうしたことか
広島は、キャンプ地の宮崎県日南市と沖縄県沖縄市にそれぞれ1億円を寄付したようだ。前田健太のメジャー移籍で得たポスティングフィー2000万ドルの一部を還元したということになる。今後は、地元広島への寄付も検討されているようだ。
基本的にこれは「美談」として報じられている。松田元オーナーは「太っ腹!」という訳だ。しかし、そうか?とも思う。
寄付自体は全く素晴らしい限りなのだが、肝心の補強はどうなっているのだ?と言いたい。そもそも、寄付の「原資」となった2000万ドルは(いやな言い方だが)前田健太をメジャーに「売って」得たカネだ。これはある意味では金銭トレードと同じであり、選手を売って得た「トレードマネー」は基本的に補強予算として使われるのが健全だとぼくは思う。
長い間、広島は低い年俸総額での戦いを強いられてきた。日本シリーズから四半世紀も遠ざかっているのも基本的にそのためだ。カネを投入することは勝利を保証するものではないが、効果的に費やせば勝利を引き寄せるものであることは間違いない。
補強予算をアップさせるということは、かならずしもスター級のFA選手や現役大リーガーの獲得のみを意味しない。しかし、昨季勝率5割を切って4位に終わったとはいえ、得点数がリーグ3位で失点数の少なさはリーグ2位の広島には、ここで思い切った補強を敢行することは大いに意味があると思う。ところがこのオフはせいぜいヘクター・ルナを獲った程度の補強しか行っていない。率直に言って、戦力は昨季に比べマイナスだろう。
カープはチャリティ団体ではない。寄付は大いに結構だが、それも本来使うべきエリアにそれなりに投じた余りをそれに回して初めて意義がある。それなくしては本末転倒だ。プロ野球チームは戦力アップに全力を尽くす社会的義務があると思う。それがなされずポスティング収入のほとんどが球団のフトコロに収まっているようではコンプライアンス上も問題ではないか。健康診断で「異常」が見つかったマエケンをぎりぎりのタイミングで最高額の2000万ドルで売り切り、黒田博樹という大スターの残留を得た広島は間違いなくビジネス的にはオフの勝者だ。しかし、ぼくは失望も感じている。