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藤井聡太三冠(19)机に突っ伏しがっくり・・・地球代表・深浦康市九段(49)に完敗で今期NHK杯敗退

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月31日。第71回NHK杯2回戦▲深浦康市九段(49歳)-△藤井聡太三冠(19歳)戦が放映されました。

 振り駒で先手となった深浦九段は角筋を止めます。以下は互いに6七銀、4三銀型(いわゆる雁木)から先後同型に組み合う進行となりました。

 深浦九段はほとんど時間を使わずに先攻。早指しのNHK杯ではありますが、事前に深い研究がなければ、ここまで早くは指せません。次々とパンチを繰り出していき、的確に藤井玉を追い込むクリーンヒットが続いて、優位に立ちました。

 勝率8割を大きく超える藤井三冠。数少ない敗戦においても、一方的に押し切られたことはほとんどありません。しかし本局は立ち直るいとまがまったくありませんでした。

 深浦九段はほぼ一方的に攻め続け、藤井玉を中段に追い、上下はさみうちにします。

 藤井三冠は最後、深浦玉に王手をかけますが届きません。

 95手目、深浦九段は藤井玉を受けなしに追い込みました。

「10秒・・・。20秒、1、2、3、4、5、6、7」

 秒読みの声にうながされるようにして、藤井三冠は静かに一礼。

「まで、95手をもちまして、深浦九段の勝ちとなりました」

 終局後、藤井三冠は机の上に突っ伏し、しばらく起き上がれませんでした。

 幼い頃から、なうての負けず嫌いとして知られる藤井三冠。これだけ打ちひしがれている姿を見せるのは、久しぶりのことかもしれません。

 2017年12月。叡王戦本戦1回戦、深浦九段-藤井四段(当時)戦で藤井四段は逆転負けを喫したあと、ぐにゃりと身体を折り曲げて悔しがったことがありました。恐るべきは、深浦九段の底力でしょう。

 前々期優勝者・深浦九段は今期3回戦に進出し、広瀬章人八段と対戦します。

 藤井三冠はNHK杯5回目の参加ですが、今期もまた上位進出はなりませんでした。

 深浦九段と藤井三冠の対戦成績は、これで深浦3勝、藤井1勝となりました。

 藤井三冠が2番負け越している棋士は、深浦九段の他にいません。

 本局の結果が公開されたことにより、藤井三冠の今年度成績は35勝7敗(勝率0.833)となりました。

 これまでの年間史上最高勝率は、1967年度に中原誠16世名人(当時五段)が記録した0.855(47勝8敗)です。藤井三冠は、その更新からは一歩遠ざかった格好です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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