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ベイスターズに必要なのは、監督の交代より編成方針のパラダイムシフト

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:アフロ)

ベイスターズの中畑清監督の退任が決まった。コーチ人事に関する意見の相違が最終的な決裂要因だったようだ。一軍のコーチの役目は、選手の技術指導というより各担当分野での監督のサポートだ。したがって、一般的にはコーチは監督が一緒に働きやすい人材を配置してあげるべきで、詳しい事情は知る由もないが球団側は譲歩してあげられなかったのかな、と思う。

マスコミ報道によると、後任にはアレックス・ラミレス、古田敦也、さらには三浦大輔の兼任が候補に挙がっているようだ。このメンバーを目にして感じるのは、「話題性重視」ということだ。古田はともかくラミレスに管理者としての実績はないに等しいし、プレーヤ―マネージャーが複雑化した現代に野球では極めて機能し難いことは、中日の谷繁元信兼任監督の例を見ても明らかだ。DeNAは最下位に終わった今季も、観客動員は実数発表では球団記録の180万人超となった。これには、球団のマーケティング活動に加え、中畑監督の知名度とメディアの耳目を集める言動の貢献も無視できない。「監督効果」をみすみす失いたくないという部分は否定できないだろう。

この考えをぼくも必ずしも否定しない。プロ野球もビジネスだからだ。しかし、ベイスターズは現在10年連続Bクラスで、その間最下位が7度という圧倒的な弱さだ。クライマックスシリーズ(CS)導入以降、多くの球団がポストシーズン進出を果たしたが、唯一CSに縁がないのがベイスターズだ。その間、監督は4年間務めた中畑監督を例外にコロコロ変わったが、この弱さは監督の責任ではなく、編成方針の問題であったことは明らかだ。

ここ5-6年を例にとっても、個人的には現巨人の村田修一はFAになる前にトレードで放出し、将来を担える若手有望株を獲得するべきだったと思っているし、中村紀洋の獲得は筒香嘉智の一軍定着の足枷になったし、金城龍彦はもっと早く見切って松本啓二朗らに機会を与えるべきだったと持っている。グリエルを獲ったり、帰国を表明した松坂大輔に食指を伸ばしたのも中長期的な強化戦略に基づいてのものというより、話題性に飛び付いたというのが本音だろう。

話を監督問題に戻す。優秀な管理者を起用することが、即勝利に繋がるものではない。しかし、記録的低迷を続ける(決してオーバーな表現ではないだろう)ベイスターズは、営業的成果だけでなく、戦力編成でも球界に革命を起こして欲しいとぼくは思っている。監督を入れ替えるなら、これを機に知名度や話題性重視という従来からの規範からから脱却することは、これからの編成に関するパラダイムシフトの良いとっかかりだったのではないか。しかし、残念ながら現時点ではまだその兆しは見せていない。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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