「公開処刑」でも止められない北朝鮮国民の占い中毒
北朝鮮の刑法には、こんな条項がある。
第256条(迷信行為罪)
金または物を受け取って迷信行為をした者は、1年以下の労働鍛錬刑に処す。前項の罪状が重い場合には、3年以下の労働強化刑に処す。
この「迷信」とは占いのことを指す。さらに、刑法附則11条は、罪状が非常に重い者、全く悔悛してしない者に対しては、無期労働刑(無期懲役刑)か死刑を適用できると定めている。占いをしたからという理由だけで死刑になりうるということだ。終末論を流し人心を惑わせるなど、占い師は北朝鮮の体制を脅かす要素と見られているためだ。
実際、北朝鮮当局はごく最近にも、占いを行った女性らを公開処刑している。
それでも、国際社会の制裁で経済が苦しくなり、未来が不透明になる中、占いにすがろうとする人が後をたたない。デイリーNKは、平壌市民2人とインタビューを行い、最新の「占い事情」について聞いた。
首都平壌でも占いをする人がいるが、平壌居住者ではなく、地方からやって来て一時的に平壌の知人宅などに滞在し、占いをする人もいる。一方、地方に住む占い師にとって、可処分所得の多い平壌市民を顧客にするのは魅力だが、リスキーであるため、長期間は滞在しないようだ。
顧客には一般庶民もいるが、幹部やその妻が多いとのことだ。経済的に余裕がある上に、政治情勢に地位が大きく左右されることから、不安感を少しでも解消するためと思われる。
ー迷信行為をする人は多い?
平壌市民A「迷信をする人は平壌にも多い。チュチェ(主体)思想なんて信じても何にもならない。天から何かが降りてきて話をするらしいが、平壌には占い師はおらず、地方から平壌にやって来る。自分の住んでいるところではやらず、よそに行ってやる。咸鏡道(ハムギョンド)からも来るし、いろんな所からやって来る」
平壌市民B「よそから平壌に来た人が占っている。平壌に友人、親戚、知人がいれば、そこで占いをする」
ー迷信行為に対する取り締まりが厳しくなっているというが?
平壌市民A「親しい人には占い師が来たと知らせるが、知らない人に話すと信訴(通報)される。もちろん取り締まりにひっかかる人もいる。しかし、保安員(警察官)は占い師を取り調べているうちに、占い師の言葉に惹かれて信じるようになってしまう。占い師が保安員に『何か起こるから家内安全で』と告げたらしいが、それが噂になってついには所長の耳に入り、連れてこさせて運勢を見たらしい。そうやってだんだん信じるようになる」
ー見てもらったことは?
平壌市民A「先日、友人から『早く家に来てみろ』と言われ行ってみたら占い師がいた。初めて会う人だったが『占うなら10万北朝鮮ウォン(約1300円)を払え』と言われたので、友人が『その程度なら』とカネを払った。言われたとおりに名前と生年月日を書いて渡したところ、本当によく当たった。(友人の)家族は『10月にどこか他の場所に行くことになるだろう』と言われたが、本当に11月にそうなった」
平壌市民B「運勢を見てくれるところが多い。庶民は『食べるものがない、死んでしまいたい』と言いながらも、運勢を見てもらい、それがよく当たるのでビックリしている。その占い師は、幹部が持ってきたカネを火にくべて占っていた」
ー占ってもらうのは主にどんな人?
平壌市民A「幹部やその妻が多い。私達のような一般庶民は毎日平凡な暮らしをしているが、幹部は発展のある(置かれた状況の変化が大きい)人たちだから。心の中は苦しいのではないか。平壌には(粛清の風が吹き荒れれば)あっという間にクビが飛ぶような人が多いから、未来のことが気がかりで占いをするのではないか。『うちの夫はクビにならないか』『これからも豊かな暮らしができるか』ということを聞くらしい。ある幹部の妻は、夫の写真を持ってきて名前と生年月日を告げて、占い師にすがるように話を聞いていた」
平壌市民B「若い人たち、商人、出世するかもしれない幹部やその妻がよく来る。未来のことが気がかりなのは幹部だから。幹部は今後が不安で、経済も苦しく、カネもどんどんなくなり、締め付けが厳しくなる中で、どうすれば出世できるかを聞きに来る」
(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー)