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ウクライナのホロコースト生存者の実話に基づいた映画「My Name Is Sara」米国で公開

佐藤仁学術研究員・著述家
「My Name Is Sara」(USC財団提供)

第2次世界大戦時にナチスドイツが約600万人のユダヤ人やロマ、政治犯らを殺害した、いわゆるホロコースト。ホロコーストの生存者や当時の様子など実話に基づいた映画やドラマは毎年欧米で制作されている。

2019年に制作された「My Name Is Sara」もホロコーストの生存者サラを題材にした映画で、2022年7月にアメリカ各地で上映が開始された。

1941年、11歳の時にユダヤ人の少女・サラが住んでいたポーランドのコレッツ(現在のウクライナ)にドイツ軍が侵入してきて、サラが身を隠しながら生き延びていく実話に基づいた物語だ。当時、その地域ではユダヤ人のユダヤ教、ポーランドのキリスト教、ウクライナのロシア正教と多宗教、多文化地域で、ユダヤ人ゲットーから逃げて来たサラもキリスト教徒になりすましながらユダヤ人狩りから逃れてきた。

「My Name Is Sara」を共同制作したのが南カリフォルニア大学(USC)にあるショア財団である。ショア財団は、ホロコーストを題材にした映画『シンドラーのリスト』の映画監督でユダヤ人のスティーブン・スピルバーグが寄付して創設された。ショア財団ではホロコースト時代の生存者の証言のデジタル化やメディア化などの取組みを行っている。特に戦後70年以上が経過し、ホロコースト生存者の高齢化が進み、当時の記憶も薄れていき、体力的にも証言を取るのが難しくなってきており、これまでにも多くの証言を集めて来たが、今後あと10年が勝負である。多くの証言が動画で撮影されYouTubeにもアップされている。ショア財団では2017年にサラ氏の証言をデジタル化し、YouTubeで公開している。

そのショア財団がホロコーストの生存者の実話に基づいた映画の共同制作も手掛けた。ホロコースト生存者の高齢化が進み、年々減少してきており、証言を収集することが難しくなってきており、ショア財団でもホロコースト生存者の家族らに「あなたの家族の物語を寄せてください」と呼びかけている。記憶のデジタル化として多くのホロコースト生存者の証言を収集してきたり、生存者をホログラムで表現してリアルタイムに会話ができるようにホロコーストの歴史を伝えるような取組を行ってきた。だが、これからホロコースト生存者の証言を収集していくことが難しくなっていく。

ホロコースト生存者の証言は歴史のデジタルアーカイブとしても研究や教育にも活用されている。だが、証言集は生存者が1時間から2時間カメラに向かって話しをしているもので、学校の教室や課題として見たり、歴史学者や社会学者などの研究者が研究用に見ることはあっても、一般の人が自ら積極的にホロコースト生存者の証言を見ることは欧米やイスラエルでもあまりない。ホロコースト生存者を題材にした映画を制作した方が世界中の多くの人の目に留まりやすいし、映像としてのインパクトもあり記憶にも残りやすい。ホロコーストを題材にした映画はこれまでも多く制作されてきたが、これからはホロコーストの歴史を伝えていくのは映画やドラマが中心になっている。

▼「My Name Is Sara」オフィシャルトレーラー(USCショア財団)

▼サラ氏の証言(USCショア財団 2017年2月)

2020年6月7日にはショア財団主催で、Zoomを活用して「My Name Is Sara」のシーンの一部を公開しながら、サラ役を演じた方や監督、作家などが参加して公開ディスカッションが開催された。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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