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横山剣、“楽曲さま”でたどり着いた20年

中西正男芸能記者
「クレイジーケンバンド」リーダー・横山剣

今年で結成20周年を迎えた「クレイジーケンバンド」のリーダー・横山剣さん(56)。映画「イイネ!イイネ!イイネ!」(6月24日公開)では初主演も果たすなど、節目の年にさらに新境地を開拓しています。「ここまで続くとは思っていなかったです」とはにかんだ表情を見せますが、20年を走り続けてきた裏には、ある“ルール”があったと言います。

急きょ集まったメンバー

20年ですか。何をやっても長続きすることがなかったので(笑)、ここまで続くとは思っていなかったです。正直な話。

「クレイジーケンバンド」、始まりは2本の営業だったんです。静岡と東京の福生市で、コレくらいのギャラでやってくれないかという話を僕がもらって。その時はバンドをやってなかったもので、急きょ誘ったメンバーが今の中心メンバーなんです。本来、その2本の営業が終わったら「じゃ、またね」となるはずだったのが、次の仕事をいただき、また次の仕事をいただき、いつの間にか20年。不思議なもんです。

ここまでやってきた理由。言葉にするとカタいですけど“楽曲至上主義”というのがあったと思います。“楽曲さま”という言い方もしていますけど、いつも楽曲が何より中心にあるんだという意識を共有できていれば、それぞれのエゴでもめることはないですしね。楽曲がいい形で出せるなら、ちょんまげにでもなると(笑)。意見がぶつかったりもするんですけど、その時に「それは楽曲のためにプラスになるのか」という物差しで測ると答えがおのずと出てくると言いますか。もちろん、人間ですからエゴはありますし、なきゃおかしいし、僕にも多分にあります(笑)。ただ、その物差しを持っていると、もめにくくはなると思います。リーダーより誰よりも、一番偉いのは楽曲だと。

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声でバレちゃう!

20年、振り返って思い出すのは、2004年に日本武道館でライブをやらせてもらったこと。そして、2005年には武道館もできたし、さらに『タイガー&ドラゴン』が、「タイガー&ドラゴン」(TBS系ドラマ)のオープニングテーマになって、わりといい感じに皆さんにも知ってもらえるようになったなと。そのあたりが転機にはなりましたね。

それまでは音楽が好きな方には知っていただいていたかもしれませんけど、「タイガー&ドラゴン」からは老若男女の皆さんに知ってもらえた。お子さんからも「イイネ!」とマネされたり(笑)。それだけ知ってもらえたのはありがたいことなんですけど、本当、見事に悪いことができなくなりました(笑)。あと、ビジュアルだけじゃなくて、僕の場合、声でバレちゃうんですよね。この前も、メンバー4人で、韓国での仕事の時に、ま、韓国だし誰も僕らのことは知らないだろうと思って、かなりエゲツない話(笑)をしてたら、近くに座ってる日本人のオバサンから「剣さんですか?声で分かりました」と。声で分かったということは、その話を聞かれていたということですからね。ま、声が浸透したということなので、うれしくはあるんですけど、戸惑いもしました…。

一つずつ積み重ねていくしかない

あと、この節目のタイミングで初めての映画もやらせてもらいました。撮影は2~3年前に日本と韓国ロケを交えながらやったんですけど、それが公開になると。僕らは普通に楽曲と一緒にPVとかもあった世代なので、楽曲が映像によってさらに輝いたり、より切なくなったり、映像との親和性を感じてはいた。なので、そこの戸惑いはなかったんですけど、じゃあ、役者として自分が演じられるかどうか。そこは、キレイに別でして(笑)。やっぱりセリフをしゃべるというだけで本当に大変だったんですけど、共演の中野英雄さんらがいろいろリラックスさせる空気を作ってくださって、何とか公開までたどり着きました。

これまで、好きなことをやらせてもらっているので、せめて、一生懸命っていうか、ある意味の覚悟を決めることはないといけないのかなと思っています。今さら他の商売できないし、わき目を振らずやっていかないとなと。次の節目となると30周年になるんでしょうけど、来年どうしようかよりも、今年をちゃんとやらないと来年はないですしね。一つずつ積み重ねていくしかないんでしょうね。

そのために生活で心がけていることですか?岡本太郎さんが「健康法なんて考えないのが一番の健康法だ」とおっしゃってまして。その考えを信奉してるので、毎日肉ばっかり食ってます(笑)。ただね、さすがに年をとってきて、メンバーの1人はそれで膵炎(すいえん)になったりもしてるので、そろそろ、そろそろ、シャレにならなくなってきたかなと(笑)。

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■横山剣(よこやま・けん)

1960年7月7日生まれ。神奈川県横浜市出身。本名・横山正佳(よこやま・まさよし)。小学生の頃から楽曲制作に興味を持ち始める。81年、クールスRCのメンバーとしてデビュー。その後、複数のバンド活動を経て、97年に「クレイジーケンバンド」を結成する。98年にアルバム『PUNCH!PUNCH!PUNCH!』でデビュー。横山が叫ぶ「イイネ!」というフレーズでも広く知られる。初主演映画「イイネ!イイネ!イイネ!」は6月24日から公開。横浜を舞台に幼なじみのケン(横山剣)、トニー(中野英雄)、ドブオ(伊原剛志)がさまざまな苦難と闘いながらも、絆で道を切り開いていく物語。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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