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離婚・再婚したら「遺言」が必要5つの理由~配偶者が離婚経験者の場合は話合いを

竹内豊行政書士
離婚・再婚をすると相続トラブルを引き起こす確率が高くなります。(ペイレスイメージズ/アフロ)

肺炎のため昨年2017年7月に死去した作曲家の平尾昌晃さん(享年79)の遺産をめぐり、3度目の結婚相手となった50代の元マネジャー、Mさんを相手取り、平尾さんの三男の歌手、平尾勇気氏(37)が法的措置を取ったことが今月21日に分かりました。

Mさんは昨年10月、平尾さんの後を継いで平尾昌晃音楽事務所の代表取締役社長に就任。しかし、三男の勇気氏の所属事務所によると、Mさんが不透明な株操作などを行ったとして、株主でもある勇気氏が20日付でMさんの取締役執行停止の仮処分を東京地裁に申請し受理されたという。

平尾さんは最初の妻との間に長男、再婚した元歌手の小沢深雪さんとの間に次男と三男の勇気をもうけたが、いずれの妻とも離婚。20年近くマネジャーを務めたMさんと2013年に3度目の結婚をされました。遺産分割協議はまだ成立していないようです。

(以上、引用・参考:9月22日サンケイスポーツ『再々婚妻vs三男の平尾さん遺産バトル勃発!』

その後も、平尾昌晃さんの相続を巡る話題はマスコミを賑わせているのをご存知の方も大勢いらっしゃると思います。

実は、離婚・再婚をされている方は、お亡くなりになった後に相続トラブルになる地雷を備えていいます。

今回は、その理由をお伝えします。離婚・再婚をされている方は、ぜひご自身の身に置き換えてお読みください。

離婚・再婚経験者の相続がトラブルになる5つの理由

理由その1:遺産分けの話し合いを設けなければならない

被相続人が遺言書を残さないで死亡すると、その者が残した遺産は、相続人による話し合いによって「だれが、何を、どれだけ」承継するかを決めなければなりません。この話し合いのことを「遺産分割協議」といいます。

理由その2:相続人「全員」が協議に参加しなければならない

遺産分割協議には相続人全員が参加しなければなりません。1人でも欠けてはいけません。

理由その3:協議成立の条件は相続人全員の合意

しかも、遺産分割協議を成立させるためには相続人全員の合意が必要です。たとえば、相続人が10人いて、遺産分割の内容に9人が賛成しても1人が反対したら不成立になってしまいます。多数決では決められないのです。

理由その4:相続人の間に複雑な感情が潜んでいる

被相続人が離婚・再婚をしている場合、相続人の中には被相続人に対して複雑な感情をお持ちのかたもいらっしゃいます。そうなると、遺産分割協議が難航するのも想像に難くありません。

理由その5:知らない者同士が遺産分けの話し合いをしなければならない

被相続人が離婚・再婚をしている場合、遺産分けの話し合いの場で初めてお互いが会うというケースがほとんどです。

被相続人が前婚で儲けた子どもと、被相続人が再婚した妻とその妻との間に儲けた子どもは交流がないのが一般的でしょう。その者たちが、「被相続人の相続人である」とい共通点で初めて会い、しかも、遺産分けという重いテーマで協議をし、しかも合意しなければならないのです。

被相続人が前婚で儲けた子どもの中には、「自分には父親(被相続人のこと)はいません。遺産など興味ありません。そちら(再婚した妻やその子ども)で好きなようにしてください」と言って、遺産もいらないが遺産分割協議に協力も参加しないという方も結構います。しかし、いくら遺産はいらないといっても、遺産分割協議書に署名・印をして印鑑登録証明書を提出してもらうか、家庭裁判所に相続放棄の申述をしてもらわないと遺産分割協議は成立しません。すなわち、遺産はいつまで経っても相続人に引き継がれないのです。こうなると、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるしかありません。

以上のように、被相続人が離婚・再婚をしていると、一般的に遺産分割の話し合いが難航します。そのためにも、離婚・再婚を経験されている方は、遺言書を残すべきでしょう。そうしないと、亡くなった後に相続人に迷惑をかけることになりかねません。

また、配偶者が離婚を経験していて、前婚で子どもを儲けている場合は、夫婦で「いつかは必ず訪れる相続」につて話し合いの機会を設けてみてはいかがでしょうか。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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