マイアミオープンレポート:錦織圭、圧巻のベスト8進出。そのカギとなるリターンが得意な“理由”とは…?
錦織圭 61 62 D・ゴファン
23分の15――。
それは今大会ここまで3試合戦って、錦織が戦ったリターンゲーム数とブレークしたゲームの数です。実にブレーク率65%強。3試合合計の試合時間が3時間半に満たないのも、ここに大きな理由があるでしょう。
それでも初対戦となった4回戦のゴファン戦、錦織は「立ち上がりは特に相手のサービスが読めなかった」と振り返ります。ゴファンのサービスはスピードこそ120マイル前後ですが、プレースメントと球種の織り交ぜ方が巧み。
しかしそれも、わずかに1ゲーム半のことでした。第1セットの第4ゲーム、30-0からフォアの強烈なリターンを叩き込みポイントを奪ったころから、流れが一気に傾きました。その後はラリーに持ち込んで、四つに組んでの持久戦でも自分が上であることを相手に示します。このゲームをブレークした錦織が、やや気落ちしたゴファンを突き放して5ゲーム連取。第1セットを28分で奪い去りました。
第2セットでは第2ゲームで先にブレークを許すも、その直後の第3ゲームでブレークバック。特にブレークポイントの場面では、リターンをロブ気味のバックのスライスで深く返します。あわてたようにフォアで打ち返そうしたゴファンは、打ち急いだか返球は大きくアウト。そうしてこの場面でも、相手の心の揺らぎを世界5位は見逃しません。第2セットは6ゲーム連取で、1時間8分の圧勝劇を演じて見せました。
それにしても、錦織はなぜここまでリターンが良いのか?
そう問われると、彼は困ったように口の端に苦笑いの溝を刻んで「なんで? なんでと言われても……」と言葉につまると、笑いながらポツリと言います。
「才能じゃないですか」
記者たちの笑い声をひとしきり心地よさそうに浴びると、先ほどとは一転、表情を引き締めて語ります。
「リターンは昔から得意ですが、ここ数試合は特にダンテとマイケルからも良いコーチングを受けて、より良いリターンが打てています」。
良いリターンが打てているのは、調子が良い証拠――そういう錦織の次の相手は、ラオニッチを下したイズナー。「リターンがキーになる」のは、本人の言葉を待つまでもなく明らかです。
それだけになおのこと、リターンが好調なのは、良いサインでしょう。
※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。連日レポートを掲載しています