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ロシア軍の偵察ドローン「Orlan-10」改造・クラスター爆弾搭載のレアな攻撃ドローン:ウ軍が迎撃

佐藤仁学術研究員・著述家
「Orlan-10」にクラスター爆弾を搭載した攻撃ドローン(ウクライナ軍提供)

ウクライナ軍司令官「一般市民を標的にしていた可能性」示唆

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。

ロシア軍は主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。たまに「Eleron-3」でも偵察を行っている。2022年11月には「Granat-4」、「Korsar(Корсар)」、「Supercam S150」、「ZALA 421-16Е2」というロシア製の偵察ドローンも破壊されていた。

またロシア軍は、イラン製の攻撃ドローン「シャハド136」「シャハド131」だけでなく、ロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」などの攻撃ドローンで攻撃を行っている。これらのドローンが撃破された残骸の写真はよく公開されているので頻繁に見かける。

ロシア軍はウクライナに侵攻直後から偵察ドローンは主に「Orlan-10」を多く使用していたので、「Orlan-10」の破壊された写真や動画は珍しくなかった。最近ではあまり見かけなくなっていたので、偵察ドローン「Orlan-10」はウクライナ軍によって徹底的に破壊されてしまい開発と生産が追い付かずに品不足なのかもしれないと推測されていたが、今でもまだ健在なようで、たまに偵察ドローン「Orlan-10」が破壊された写真が公開されている。

そんななか、ウクライナ軍はロシア軍の偵察ドローン「Orlan-10」の翼の下にクラスター爆弾を搭載して攻撃ドローンに改造された「Orlan-10」を迎撃し、その写真を公開していた。偵察ドローン「Orlan-10」は全く珍しくはないが、「Orlan-10」にクラスター爆弾を搭載しているタイプは珍しいので、ウクライナのメディアUkrinformでも報じられていた。ウクライナ軍の司令官のオレクサンダー・パルヴーク氏によると「偵察ドローンを改造してクラスター爆弾を搭載して、一般市民(非戦闘員)を攻撃した可能性がある」との見解を示していた。

今回の改造されてクラスター爆弾を搭載した「Orlan-10」はクラスター爆弾を投下する前に機能停止させられて落下していたので、一般市民に被害は出ていない。

▼ロシア軍の「Orlan-10」を改造して翼の下にクラスター爆弾を搭載した攻撃ドローン

ドローンは攻撃用も監視用も探知したらすぐに迎撃して破壊してしまうか、機能停止させる必要がある。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。今回の「Orlan-10」はソフトキルで機能停止された。

特に偵察ドローンは発見したら、すぐに迎撃しなくてはならない。偵察ドローンは攻撃をしてこないから迎撃しなくても良いということは絶対にない。偵察ドローンに自軍の居場所を察知されてしまったら、その場所にめがけて大量のミサイルを撃ち込まれてしまい大きな被害を招きかねないので、偵察ドローンを検知したら、すぐに迎撃して爆破したり機能停止させたりする必要がある。回収されて再利用されないためにもドローンは上空で徹底的に破壊しておいた方が効果的である。

ウクライナ軍も監視・偵察用で調達した小型の民用品ドローンや偵察ドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア軍に落下させて攻撃している。偵察ドローンにも爆弾を搭載して落下させたり、標的に向かって突っ込んでいき爆発すれば攻撃ドローンになる。偵察ドローンと攻撃ドローンの境目はもうなくなっている。

クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)が2008年12月にオスロで調印され、各国の批准手続きを経て2010年2月に30カ国が批准、2010年8月1日に発効した。クラスター爆弾禁止条約では使用、保有、生産を禁止している。だがロシアは署名していないので生産も保有もしている。

▼ロシアの偵察ドローン「Orlan-10」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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