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今年は静かな「GSOMIA問題」 日本の輸出規制が解除されてないのに延長?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
文在寅大統領(青瓦台HPから)

 「延長」か「破棄」かで昨年あれだけ騒がれていたGSOMIAの問題は、1年経った今年は実に静かだ。

 振り返れば、昨年韓国政府は日本の輸出厳格化措置に反発して、GSOMIAを延長しない方針を決定し、8月24日に日本に通告した。日本政府が安全保障上の観点から取った輸出厳格化措置について安全保障上信用できない、信頼できない国と烙印を押すならば、韓国をこれ以上友好国とみなさないならば、信頼関係がベースとなっているGSOMIAをこれ以上継続する必要はないというのが破棄通告の理由であった。文大統領自身も訪韓した米国のエスパー国防長官に「安保上信頼できないとの理由で輸出規制措置を取った日本とは軍事情報の共有は困難」と不満をぶちまけていた。

 朴槿恵前政権下の2016年11月24日に締結されたGSOMIAはどちらか一方が相手に協定終了の意思を90日前に外交ルートを通じて通報しない限り、自動的に延長されることになっている。

 文政権の決定を韓国の世論は支持していた。世論調査では「破棄すべき」が51%で、「破棄すべきではない」が29%と、韓国の民意(世論)は「破棄」を望んでいた。そのことは韓国のシンクタンクである財団法人「東アジア研究院」(EAI)が11月4日に約1千人を対象に行った世論調査でも裏付けられていた。何と、韓国政府のGSOMIA終了決定を「支持する」との回答は60.3%に達していた。

 韓国政府のGSOMIA破棄決定を支持する理由としては「日本政府の不当な措置への正当な対応」との答えが断トツで、実に79.8%もあった。しかし、韓国政府は日韓政府間交渉が再開されたこともあって失効(11月23日午前零時)直前に破棄通告を猶予した。当時、韓国青瓦台(大統領府)の金有根国家安保室第1次長は「我が政府はいつでものGSOMIA効力を終了させられるという前提の下、2019年8月23日の終了通告の効力を停止した」と説明していた。

 日本の輸出規制解除を条件とした破棄中断決定を国民の70.7%が「良い決定」と評価したが、その一方で、日本が韓国の期待に応えない場合は、53%が「終了(破棄)すべき」との意見だった。

 文政権の期待に反し、輸出厳格措置は今なお解除されていない。これまで韓国政府は再三にわたって「輸出規制を解除しなければ、GSOMIAの破棄もやむを得なし」と日本をけん制していた。ならば、文在寅政権は国民に公言した通り、GSOMIAの破棄を再度通告してしかるべきだが、事前通告期限の本日(24日)になっても音なしの構えである。

 文大統領は破棄を決定した原因は「日本側が提供した」として日本がまず、「対韓輸出規制を強化した問題を解決すべき」と日本を批判していた。また「不当な経済報復措置に対して相応の措置を断固とる。もう日本には負けない」と啖呵を切っていた。にもかかわらず、今年はおとなしい。なぜか?

 3か月前に通告しなければ、11月24日に期限が切れるGSOMIAは自動延長されることになるが、韓国政府は昨年8月の終了通告は今も有効との立場を取っているようだ。通告は有効だが、その効力を停止しているだけで、いつでも終了、破棄できるという考えのようだ。

 韓国政府は頑として認めていないが、GSOMIAの破棄を再考せざるを得なかったのは米国の圧力による。従って、米国が反対している限り韓国は破棄はできないと日本政府は見抜いている。

 米国に首根っこを押さえられて二度とGSOMIA破棄のカードを持ち出せないのか、それとも元徴用工絡みの日本企業の資産売却(現金化)への日本政府への報復措置への対抗措置として温存しているのか、どちらかだろうが、今のところ前者の可能性が高い。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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