名古屋の和菓子名店の新作8品が勢揃い。「なごや菓八菓」は新定番土産となるか?
隠れた和菓子処・名古屋。実力がありながら知られていなかった理由とは?
名古屋の新・和菓子土産ブランド「なごや菓八菓」(なごやかやか)が誕生。3月3日にジェイアール名古屋タカシマヤにて揃い踏みして発売されました。
「なごや菓八菓」は地域を代表する和菓子店8店が、それぞれ新しい名古屋土産にふさわしい新商品を開発。共通のブランドロゴを使って売り出すものです。
企画したのは名古屋商工会議所。昨年、愛知県内の和菓子店を対象にエントリーを呼びかけ、12月にコンテストを開催して8品を認定しました。
「名古屋は全国でも屈指の和菓子処で、店の数も多く、レベルも高い。にもかかわらず全国的にあまり知られていない。地域全体の和菓子のブランド力を高めるために、新しいお土産用のお菓子を開発してもらい、共通のブランドを冠して観光の魅力にしようと考えました」と名古屋商工会議所の久野幹太さん。
名古屋は江戸時代から茶の湯の文化が根づき、商業都市としても栄えていたため、茶席やお茶うけに欠かせない菓子づくりが発展してきました。京都が近いことから本場で修業を積んでUターンする職人も少なくありません。生和菓子の出荷量は京都に次いで全国2位につけています。しかし、戦災により多くの歴史的建造物が焼失したため町の景色から歴史文化を感じ取りにくく、また観光都市でないので和菓子がお土産として贈られる機会が少なく、そのため“名古屋=和菓子の町”のイメージが希薄だったのです。
老舗や新鋭店が技術とアイデアの粋を集めた個性あふれる新・銘菓たち
そんなアピール力不足を払しょくするために有力コンテンツがスクラムを組む今回の企画。実は昨年12月に開かれたコンテストでは、カリスマ和菓子バイヤー・畑主税さん、文筆家の甲斐みのりさんらに混じって、筆者も選考委員を務めました。審査ではエントリーされた全商品を試食した上で、味やデザイン、オリジナリティ、ストーリー性などの項目ごとに採点。得票に加えて、審査員間でディスカッションを重ねて8品を選りすぐりました。エントリーしたのは実力ある名店ばかりで、試作品のクオリティも高く、かなり悩ましい審査だったのですが、それでも全員が納得できる名品をチョイスできました。
鬼まんじゅう+ういろうと名古屋名物をかけ合わせた新感覚のういろう、ナッツやキャラメルを盛り込んだおこし、カカオの香ばしさが鮮烈な生落雁、金粉をまぶした金鯱の焼き印が名古屋らしさを印象づける餡入り菓子、地元の銘酒の香りが立った寒氷(寒天)、味醂の風味で複雑な甘みを表現したまんじゅう、もっちり柔らかな羽二重餅とくるみのコリコリ感や黒糖の深みがユニークなくるみ餅、うなぎのひつまぶしの香りや味わいを再現したひつまぶしあられと、商品はどれも名古屋らしさや驚きを感じられるものばかりです。価格は単品で100円台~200円台、箱入りで1000~1600円台となっています。
デパ地下の新装・菓子売り場の期待の目玉コーナーに
「なごや菓八菓」認定の8品は、それぞれ各店で販売する他、ジェイアール名古屋タカシマヤでは全品が並びます。地下1階の国内の菓子のセレクトコーナーである「銘菓百選」が従来の3倍に拡張リニューアルし、その目玉のひとつに位置付けられています。
「この地域の本当においしいお菓子を手早く選びたいというお客様のために、愛知・岐阜・三重の商品を1カ所に集めたのが『銘菓百選』の中の『東海銘菓』のコーナーです。旅行、出張の方はもちろんですが、地元の方に向けても魅力的な商品を紹介したい。名店の新作が揃った『なごや菓八菓』はまさしく私たちの思いと合致したブランド。新しい名古屋・愛知の銘菓をここから発信していきたいと思っています」とジェイアール名古屋タカシマヤ・和菓子売場マネージャーの山本貴子さん。
そして、この企画のディレクターである名古屋在住のコピーライター・近藤マリコさんはこう語ります。「『なごや菓八菓』の中には1人でつくっている小さな店や、ツウ以外にはまだあまり知られていない気鋭の店もある。まずお土産として買っていただき、その後は是非お店に足を運んでもらいたい。名古屋の和菓子は本当にスゴいんだ、と分かっていただけるはずです!」
「なごや菓八菓」は、いわば和菓子処・名古屋の知る人ぞ知る魅力にふれる入口となるブランド。まずは手土産として購入し、名古屋の和菓子の魅力をより深く知るきっかけにしていただきたいものです。
(写真撮影/すべて筆者)