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就活から急転でSKE48のスーパールーキーに。研究生で初選抜の原優寧、20代からアイドル挑戦の現在地

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜

選抜総選挙が行われていた時代に上位を飾っていたメンバーが、相次ぎ卒業したSKE48。31枚目のシングル『好きになっちゃった』が発売される。新体制へ移行する中、唯一の初選抜となったのが原優寧だ。21歳ながら昨年3月に加入した研究生。大学で就活を始める前に区切りを付けるために受けたオーディションで合格し、すぐに人気を集めてスーパールーキーと呼ばれた。その足跡と現在の心境を聞いた。

憧れはあっても自分がなれるわけはないと

――小学生の頃、AKB48の板野友美さんからアイドルに興味を持ったそうですが、自分もなりたいとは思っていなかったと。

 憧れはもちろんあって、「かわいいな。羨ましいな」という気持ちでした。でも、「私がなれるわけがない」と思っていました。

――当時の原さんは、どんな子だったんですか?

 活発ではなかったです。休み時間も、校庭でみんなが鬼ごっこしている横で、小さな砂場で1人で貝がらを拾っていたり(笑)。友だちがいないわけではなかったんですけど、折り紙や切り紙が好きで、走って遊んだりはしなかったですね。

――将来の夢はありました?

 その頃は保育士さんになりたかったです。自分が通っていた保育園の先生が大好きだったので。

お小遣いを貯めて福岡のライブに行ってました

――中学、高校時代もアイドルを見てはいたんですか?

 もちろんです。AKB48グループさんも坂道グループさんもずっと好きで、今も変わりません。

――板野友美さん以降の推しの変遷は?

 板野さんは今でもすごく好きで、YouTubeチャンネルを欠かさずチェックしています。あと、卒業されましたけど、乃木坂46の齋藤飛鳥さんも昔から好きで、ライブにも行っていて。この前の卒業コンサートも配信で観ました。

――アイドルのライブにも行っていたんですね。

 テレビとかは全部チェックして、ライブは中学生までは親に禁止されてましたけど、高校に入ってからはお小遣いを貯めて、ツアーの福岡公演だけは行っていました。ペンライトも買っていました。

裏方で大道具を作りたくて演劇部に

――高校では演劇部に入ったそうですが、人前に出たい気持ちはあったんですか?

 もともとモノ作りが好きで、私の高校の演劇部はパネルや大道具も全部自分たちで作っていて。それで裏方希望で入ったので、表に出たい気持ちはまったくありませんでした。

――実際、舞台には立たなかったんですか?

 最初の1年くらいは、裏方しかやってなかったです。「ちょっとでいいから出て」みたいなことが増えて、少しずつ出演する機会が多くなりました。

――どんな役をやりました?

 「ポンコツな役は優寧しかできんけん」と言われて(笑)。脚本も部員が書いていて、「優寧をイメージした」ということでした。

――普段の原さんがポンコツだったということですか(笑)?

 そう見えるみたいです(笑)。周りから「絶対こういう役は向いている」と言われました。

――自分で演技をしてみたら、楽しかったとか?

 そうでもなくて(笑)、「前回出たんやけ、また出てよ」という感じで、ずっと続きました。だから、途中で裏方と兼任になりましたけど、自分では裏方が好きだったので、大道具メインでやっていました。

夢を諦めるためにオーディションを受けました

――大学に進学したときは、どんな将来のヴィジョンがありました?

 高校時代にやりたいことができて、その夢に向かって専門的に学べる大学に入りました。

――でも、20歳のときにSKE48の11期生オーディションを受けて。

 大学2年の後半ですね。就活を始めてインターンシップに行っていて、本格的に将来のことを考えていたとき、ちょうどSKE48のオーディションがあったんです。やっぱり心のどこか奥底に、アイドルになりたい気持ちがあって。

――小学生の頃から、ずっとモヤモヤしていた感じですか?

 はい。でも、「私にできるわけがない」という考えは変わっていませんでした。オーディションを受けたら絶対落ちるから、それできっぱり諦めて、就活に専念しようと、気持ちに区切りを付けるつもりで応募しました。

――初めて受けたのがSKE48だったのは、たまたま募集していたから?

 当時もう20歳で、年齢を気にしていたんですけど、SKE48のオーディションは年齢制限がなくて。まだ希望を持てるかなと思いました。もともとSKE48は大好きで、AKB48グループの中でも踊りがすごく揃っていて、カッコいいイメージがありました。

ダンスは経験なくて練習してもヘタでした

――原さん自身はダンスは未経験だったんですよね。

 やったことがなくて、今もですけど、最初の頃はだいぶ大変でした。

――オーディションはかなり練習して臨んだんですか?

 『賛成カワイイ!』を踊って、練習はだいぶしていきました。でも、めちゃめちゃヘタクソだったと思います(笑)。

――あまり手応えはなかったと?

 オーディションではだいぶやらかしてしまって(笑)。歌唱審査ではMISIAさんの『アイノカタチ』を歌って、歌詞をガッツリ間違えました。審査員が1列に並んでいて、右端の方に聞かれたことに、なぜか左端を向いて答えていたり(笑)。緊張で頭が真っ白で、わけのわからないことを結構して「落ちたな」と思いました。

――MISIAさんの曲を歌ったのは、歌には自信があったからですか?

 課題曲が何曲かあった中から、選ぶ形だったんです。カラオケに行って全部歌ってみて、一番点数が高かったので選びました。歌は得意ではないけど好きです。

親孝行のために一度は合格を辞退しました

――オーディションは結局、見事合格しましたが、いったん辞退したとか。

 落ちると思っていたので、受かったあとに考えてしまって。親が中・高と勉強をたくさんできる環境を用意してくれて、大学にも行かせてもらったので、普通に就職したほうが親孝行になると思って、一度は辞退しました。

――事務所に連絡したんですか?

 はい。親には理由は黙っていましたけど、辞退したあとに「やりたいことをやりなさい」と言ってもらって。今度は「辞退を取り消したいです」と相談して、SKE48に入ることになりました。

――友だちにも話していたんですか?

 大学で一番仲の良い親友には、オーディションを受けることも受かったことも話していました。周りの友だちは前から、私がアイドルを好きなことを知っていたので、「受ければいいのに」と応援してくれていました。

――本当にアイドルになって、驚かれる感じでもなかったと。

 友だちのほうが私のことに自信を持っていて(笑)、ずっと「受かるよ」と言ってくれていたので、驚かれはしませんでした。

寝るのは九州から名古屋までの移動中だけ

――昨年3月にSKE48に研究生として加入してからも、ダンス未経験としては厳しさもありました?

 そうですね。最初お披露目で5曲フルで覚えて、『無意識の色』ではセンターをやらせてもらったんですけど、同期はダンスをやっていた子が多くて、なかなか付いていけなくて。苦労した部分はあります。

――夜も寝ないで練習したり?

 当時は九州から名古屋までレッスンに通っていて、移動中が睡眠時間という生活でした。大学の課題もあって、基本的に家では寝ていません。寝ようとしてベッドに入っても、「あそこの振りはこうだったよな」とか永遠に考えてしまって。「もう一度復習しよう」と起きたりしていました。

――練習方法としては、ひたすら反復するような。

 体に叩き込む感じで、完璧になるまで、ひたすら踊っていました。

――体が痛くなったりも?

 大学時代にあまり運動をしてなくて、急に体を動かしたこともあって、脚とかすごく筋肉痛になりました。

中学生の同期とも年が離れてるのは感じません

――途中で挫けそうになったりはしませんでした?

 大変だな、キツいな……というのは正直ありました。でも、それ以上に、憧れのステージに立つという目標がありましたから。それに同期6人で助け合って、私のできない部分を教えてもらったりしていたので。この6人で素敵なステージを作りたい気持ちのほうが大きくて、頑張れました。

――同期とは年齢差が結構ありますよね。

 私が最年長で、3歳下が1人いて、あとは中学生と高校生。打ち解けられるか不安はありましたけど、今ではすごく仲良いです。よくごはんを食べたり遊びに行ったりして、年が離れているのは感じません。「学校でこんなことがあった」とか話を聞いて、かわいいなと思っています(笑)。

――一方で、原さんは最初からスーパールーキーと呼ばれて、トーク会でも長い列ができていました。

 お披露目の次の日に、幕張メッセで初めてトーク会に参加させてもらって、たくさんの方に並んでもらえて嬉しかったです。SHOWROOMやモバメ(モバイルメール)でファンの方のコメントは読めましたけど、やっと直接お話しできて、すごく楽しんでくださって。やさしい方しかいないので、幸せな気持ちになりました。

――昨年10月発売のシングルのカップリング曲『New Ager』では、早くもセンターに立ちました。

 もちろん嬉しかったんですけど、驚きと不安のほうが大きかったです。当時は振りを覚えるのにすごく時間が掛かって、1日で覚えたことはなかったので。

推しメンとシンメで舞い上がりました(笑)

――そして、今回の『好きになっちゃった』では初選抜。最初どういう状況で聞いたんですか?

 いつものお仕事メールのひとつみたいな感じで、送られてきました。移動中の電車で見たんですけど、初選抜はサプライズで知らされるイメージがあって。普通に今回の選抜メンバーの先輩たちが書かれているのかと思ったら、まさかの自分の名前が入っていました。

――思わず声が出たり?

原 電車の中だったので静かにしてましたけど、間違えじゃないかと思って、メールを何回も確認しました。それでもウソかもしれないと思って(笑)、家に帰って、また確認したんですけど、まだ誰にも言ったらいけなくて。1人で「現実かな。夢かな」と思っていました(笑)。

――しかも、ポジションもフロント5人の1人。それはどう知ったんですか?

 MVのための振り入れのときです。別に「フロントメンバーです」とは言われませんでしたけど、練習をしていたら1列目でした。

――ビックリしました?

 それより、私は江籠裕奈さんが推しメンで、今回シンメなんです。それが何より嬉しくて、舞い上がっていました(笑)。「やった!」とは言えませんけど、「推しとシンメ、ヤバい!」と1人で喜んでいました(笑)。

MV撮影で話したことのない先輩とも距離が縮まって

――今回の選抜で特に親しいメンバーはいたんですか?

 10期の先輩方は『We’re Growing Up』公演を一緒にやらせていただいて、林美澪さんや青木莉樺さんとはいっぱい話していました。

――林美澪さんは先輩でも中学3年生。どんな接し方になるんですか?

 普通に先輩ですね。「美澪さん」と呼んでいて、あまり年齢は気にしません。みよまるさん(野村実代)も年下ですけど、そう見えなくて(笑)。

――MV撮影で11期研究生から唯一参加して、居づらい感じはなかったですか?

 不安でしたけど、お弁当を食べるときも、熊さん(熊崎晴香)や(日高)優月さん、(末永)桜花さんたちが「一緒に食べよう」と声を掛けてくださって。先輩たちがやさしくて、大丈夫でした。チームEさんの公演の2分間MCに出させていただいたり、桜花さんとはJR東海さんのお仕事を一緒にさせていただいたり、話したことのある先輩もいたんです。よこにゃんさん(北川愛乃)やみよまるさんたちとは、今回のMV撮影で距離が縮まった気がします。

――推しの江籠さんとも話せたんですか?

 たくさんお話ししていただきました。江籠さんと話すと嬉しすぎて、だいたい記憶が飛んじゃいますけど(笑)、MVでサビ前に手を繋いでいるシーンがあって。そこはすごく幸せそうな顔をしているので、注目してほしいです(笑)。

好きだけど一歩踏み出せないのが青春だなと

――振りはもう早く覚えられるようになりました?

 いえ、遅いです。最初に比べたら早くなりましたけど、振りを覚えるのは苦手で、今回も空き時間にずっと練習していました。そういうときも先輩たちが「一緒にやろう」と声を掛けてくださって。「ここはこうだよ」と教えていただいて、助けられました。

――振付はCRE8BOYさんで、特徴的に感じたこともありました?

 ステップが多くて止まらない恋心を表現していたり、かわいいけどはかない感情を表した振付になっていたりします。ひとつひとつの動きをていねいに見せて、気持ちをどう表現するかが難しかったです。

――通学バスで芽生えた恋心の歌で、青春感がありますね。

 最初にデモ音源を聴いたとき、イントロから素敵で、この曲は絶対好きになると思いました。好きだけど一歩踏み出せないもどかしさがあったり、衣装もかわいらしくてMVも風船がいっぱい。夏にピッタリな青春ソングになったと思います。

――福岡はバスが多いそうですが、この歌のような情景に覚えはありますか?

 バスに乗る機会は多かったですけど、残念ながら経験はないですね(笑)。

――原さんがバスで気になる人がいたら、どうしてました?

 どうですかね。傍から見ている分には「頑張れ! 声掛けちゃえ!」と言いたくなりますけど、自分だったら掛けられなさそうです(笑)。

常に感謝の気持ちを伝えられるように

――原さんはまだ研究生ですが、今回選抜メンバーになって、将来的にはSKE48を引っ張っていく気持ちもありますか?

 選抜に選んでいただいて、私をきっかけにSKE48を好きになってくださる方が増えたらいいなと思っています。私が大好きなSKE48のためにできることが増えるので、これからも選抜メンバーでいられるように頑張りたいです。

――SKE48の中でどんな存在になりたいとかは?

 活動できるのはファンの方がいるから。ずっとファンの方が見てくれるアイドルでいたいですし、活動を通じて、常に感謝の気持ちを伝えられるようにしたいと思っています。

――今の時点で自分の強みとか、人に負けないと思うところはありますか?

 自分自身がアイドル活動をすごく楽しめているのは、いいことかと思います。劇場公演が本当に好きで、コールも解禁されて、ファンの方と一緒に作っている感じがより強まりました。毎回パフォーマンスを高めていけるように、練習するのも楽しいです。

DIYが好きなのを仕事に活かせたら

――末永桜花さんの鉄道や熊崎晴香さんの競馬のように、パフォーマンス以外で武器にしたいことはないですか?

 高校の演劇部で大道具をしていて、DIYは好きなので、そういうことも仕事に活かせたらいいなと。あと、地元の福岡で一度、谷真理佳さんとトークイベントをやって、CBCラジオで『SKE48のドリームクルーズ』という九州を紹介する番組も始まったので、福岡でのお仕事もできないかなと思っています。舞台に出させていただいたときも楽しかったので、お芝居もまたやりたいです。

――DIYではどんなものを作るんですか?

原 インパクトドライバーやのこぎりを使えて、高校時代は机、イス、棚とか全部、自分で作っていました。今はスペースがないから作ってませんけど、家具の組み立てもめっちゃ好きです(笑)。今の部屋の家具は全部、通販で組み立て式のものを買いました。

――選抜に入って、次の目標にしていることは何ですか?

原 研究生なので一番は昇格です。ダンスとかまだまだな部分がたくさんありますけど、先輩方に追い付けるように努力していきます。12期生オーディションもあって、自分が先輩になるので、もっとしっかりしないと。

始めたのが遅くても今しかできないことに挑めて

――SKE48に入ってから、人間的に自分が変わったと思うところもありますか?

 人見知りがだいぶなくなった気がします。前は仲良くなる前は全然しゃべれなくて、仲良くなったらめっちゃ話す感じでしたけど、いろいろな人とお会いする機会が増えて、最初から話せるようになったかなと思います。

――改めて、20歳からアイドルを始めたことは正解でしたか?

 遅いと言われるかもしれませんけど、高校で部活や勉強もちゃんとしてから、アイドルをやりたいと思ったときにSKE48に入れました。同期や先輩と素敵な環境にいられるので、間違ってはいなかったかなと。一度は辞退して就活をしていたはずが、今しかできないことに挑戦できていますから。あのときSKE48を選んで良かったと、心から思っています。

撮影/松下茜

Profile

原優寧(はら・ゆうね)

2001年11月23日生まれ、福岡県出身。

2022年3月にSKE48に11期研究生として加入。同年10月に『We're Growing Up』公演で劇場デビュー。2022年10月発売のSKE48の30thシングル『絶対インスピレーション』のカップリング曲『New Ager』でセンター。2023年7月発売の31stシングル『好きになっちゃった』で初選抜。『SKE48のドリームクルーズ』(CBCラジオ)に出演中。

SKE48 31stシングル

『好きになっちゃった』

発売中

Type-A・B・C(CD+DVD) 1750円(税込)

劇場盤(CD) 1150円(税込)

Type-B(初回盤)
Type-B(初回盤)

(C)2023 Zest,Inc./AEI 
(C)2023 Zest,Inc./AEI 

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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