着ていたシャツを着たまま自ら引き裂いたR・マキロイの奇行に思うこと
欧州ツアー最終戦、DPワールドツアー・チャンピオンシップは「すごいこと」になった。
コリン・モリカワが大逆転優勝を果たし、欧州ツアーのポイントレースである「レース・トゥ・ドバイ」でも米国人選手として初の王者に輝いた快挙は「すごいこと」。
そんなモリカワの「すごい勝ち方」の陰では、北アイルランド出身のローリー・マキロイが「すごい負け方」をした。
マキロイは悔しさのあまり、スコアリングテントの中で、着ていたゴルフシャツを着たまま自分でビリビリ引き裂くという奇行に走った。
その現場を欧州メディアが撮影した写真がツイッターで出回り、瞬く間に拡散されて、人々を驚かせている。
【着ていたシャツを着たまま、、、】
写真の中のマキロイの姿を、なんと表現したらいいのか。適切な言葉が見つからないほど無惨だ。
ナイキのマークが左胸に入ったマキロイのシャツは、左側の襟のあたりから右胸にかけて大きく引き裂かれ、シャツが裂けた部分から肌が大きく露出していた。
怒りに任せてシャツを引き裂いたマキロイは、その後、必死に怒りを鎮めようとしているのか、それとも必死に平静を装うとしているのか、破れたシャツを着たままスコアリングテントの窓際に立ち、スマホをいじっていた。
画面を見つめる彼の表情がとんでもなく硬いことが、写真から見て取れた。
マキロイがそれほど悔しがったのは、モリカワに負けたからというより、自分自身の負け方が情けなく、腹立たしく思えたからだろう。
最終日。マキロイが優勝する可能性はきわめて大きかったが、ひたひたと忍び寄り、この日6打も伸ばしたモリカワに追い抜かれ、マキロイ自身は最後に崩れ落ちて敗北した。
もしも熱いデッドヒートを展開した上での惜敗だったなら、マキロイだって、爽やかな笑顔のグッドルーザーになれたのだと思う。
しかし、この日のマキロイは、15番でピンフラッグをヒットしたボールがバンカーに入り、サンドセーブに失敗してボギー。
16番は3パットでボギー。そして18番はティショットを林に打ち込んでボギー。上がり4ホールで3打も落とし、74を叩いて、モリカワから5打差の6位タイに甘んじた。
その悔しさと情けなさが収まらず、大会スタッフの面前で、着ていたシャツを着たまま自分で引き裂くという奇行に及んでしまった。
【以前にも奇行はあった】
マキロイの奇行と言えば、以前、クラブを膝に当ててへし折ったことがあったが、それ以上に鮮明に思い出されるのは、2015年のキャデラック選手権でドラール・リゾートの池に向かって3番アイアンを投げ入れた奇行だ。
あのときも彼は自分自身のミスに苛立ち、思わず3番アイアンを池に放り込んだ。
だが、あのときは、すでにドラールの所有者になっていたドナルド・トランプが、すぐさまダイバーを雇い、池の底から3番アイアンを拾ってこさせ、翌朝の練習場でトランプからマキロイへ返還。見ていた観衆は思わず拍手を送り、人々の笑いを誘った。
結果的にマキロイの奇行は「トランプ笑劇場」に助けられる形になり、マキロイの3番アイアンはガラスケースに入れられて、プロショップの壁に展示されるという運命を辿った。
だが、今回は「笑劇場」にはならないだろう。
試合会場から去った後なら、どうやって悔しさを晴らすかは、もちろん選手の自由である。
しかし、試合会場の人々の視線が届く場所で、感情に任せてシャツを引き裂き、その行為とその姿を人目に晒してしまったことは、マキロイに憧れている子どもたちやファンを驚かせ、落胆させ、失望させる行動だったと言わざるを得ない。
プロゴルファーも人間だから、感情が込み上げることは、もちろんある。しかし、悔しくても、情けなくても、ゴルファーの範となる行動を取るべし。
ゴルフ界のスターであり、世界のトッププレーヤーであるマキロイだからこそ、高いプロ意識を保ち、マナーやエチケットを大切にすべき世界中のゴルファーの手本となってもらいたい。