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iPhone、若年層を魅了 サムスンのお膝元で人気上昇

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

消費者の間で高価格帯のAndroidスマートフォンよりも、米アップルの「iPhone」を選ぶ傾向が高まっていると、米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた

とりわけ若年層の利用者がiPhoneを後押ししている。iPhoneは米国市場で高いシェアを持つが、その優位性が世界市場に波及しつつあるという。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、欧州からアジアに至るまでアップルは高級端末市場でリードを広げている。世論調査によると、1990年半ばから2010年代前半に生まれた「Z世代」と呼ばれる層はiPhoneを必携品と考えるようになっている。

韓国で若年層の52%がiPhone利用

こうした傾向はスマホの出荷台数で世界首位の韓国サムスン電子を脅かすという。サムスンのお膝元、韓国では22年時点で18〜29歳の約52%がiPhoneを利用しており、2年前の44%から増加した。民間調査会社の韓国ギャラップによると、この年齢層におけるサムスン製スマホの利用シェアは同期間に45%から44%に低下した。これよりも年齢が高い層ではいずれもサムスンのシェアが最も高い。

アップルが18年に韓国で最初の直営店「Apple Store」をオープンして以降、iPhoneの影響力は拡大し続けているという。アップルは現在同国でApple Storeを4店出店しており、まもなくモバイル決済サービス「Apple Pay」も同国内で始まる。

iPhone、高価格帯市場でシェア拡大

若年層の間でのシェアが拡大すると、高価格帯端末市場におけるアップルの地位も向上するとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

シンガポールに本部を置く調査会社カナリスによると、価格が800ドル(約10万9000円)以上のスマホの世界出荷台数に占めるiPhoneのシェアは、18年の65%から22年には76%に拡大した。これに対し、同価格帯におけるサムスンのシェアは27%から17%に縮小した。

かつて世界首位に浮上した中国・華為技術(ファーウェイ)が米政府の輸出規制によって失速した後、世界最大のスマホ市場である中国はアップルにとって成長の原動力となっている。

香港の調査会社カウンターポイントリサーチによれば、高価格帯端末はスマホメーカーにとって極めて重要だという。このカテゴリーの製品はメーカーに最大の利益をもたらすことに加え、技術力とリーダーシップを示すことができるからだという。

高価格帯の需要、強じん性あり

またスマホ市場が低迷する中でも、高価格帯端末に対する需要は比較的レジリエンス(強じん性)があるといわれている。カナリスによると、22年の世界スマホ出荷台数は前年比12%減少した。背景には、消費者需要の落ち込みやインフレ、先行き不透明な経済がある。しかし、800ドルを超えるスマホの出荷台数は同1%増となり、マイナス成長を回避した。

一方、低・中価格帯を含めたスマホの世界出荷台数では依然としてサムスンが首位を維持している。ただ、この市場セグメントでもアップルはサムスンを猛追している。カナリスによると、サムスンの世界出荷台数シェアは過去5年間、約21%と横ばいで推移。これに対し、アップルのシェアは18年の15%から22年に19%へと拡大した。

  • (本コラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2023年3月1日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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