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ケプカも移籍するリブ・ゴルフへの対抗意識!?PGAツアーがリブと賞金同額で予選落ち無しの8試合を新設

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 全米オープン終了後、ゴルフ界の「揺れ」は一層激化しつつある。

 メジャー4勝の米国人選手ブルックス・ケプカ、PGAツアー1勝で世界ランキング20位のメキシコ人選手エイブラハム・アンサーがPGAツアーに背を向け、グレッグ・ノーマン率いる新ツアー「リブ・ゴルフ」へ移ることが米メディアによって報じられた6月21日(米国時間)、PGAツアーのジェイ・モナハン会長は選手たちに来季からの驚きの変更を通達した。

【リブ・ゴルフへのさらなる移籍】

 ケプカやアンサーがリブ・ゴルフへ移籍する可能性は、全米オープン開幕前から英国紙テレグラフなどから「噂レベル」として報じられていた。予想される「移籍者リスト」には、ケプカ以外にも、コリン・モリカワやザンダー・シャウフェレ、ビクトル・ホブランといった名前が明記されていた。

 そして、全米オープンが幕を閉じた今、6月30日から米オレゴン州のパンプキンリッジで開催されるリブ・ゴルフ第2戦にケプカとアンサーが参戦することが複数の米メディアによって報じられた。

 一方、モリカワは「僕はあくまでもPGAツアーだ!」とリブ・ゴルフへの移籍の噂を否定する声明を出した。

 ケプカは先週の全米オープンの際、「せっかくの全米オープンがリブ・ゴルフの話題で持ち切りになっていることは悲しい」などと米メディアに語っていたが、そのわずか1週間後に彼のリブ・ゴルフへの移籍が明らかになった。

 とはいえ、ケプカの弟チェイスが初戦からリブ・ゴルフに参戦していることを考えると、兄弟揃っての移籍は「自然な流れ」と言えなくもない。

 しかし、これまでPGAツアーで何度もいざこざを繰り返してきた「犬猿の仲」のブライソン・デシャンボーも第2戦からリブ・ゴルフに参戦することがすでに発表されているため、ケプカの移籍はデシャンボーとの「素晴らしい再会になる」と揶揄する声がSNSなどでは上がっている。

【新大会、新日程】

 そんな喧噪の中、PGAツアーのジェイ・モナハン会長はトラベラーズ選手権の開幕を控えた21日(米国時間)、選手たちを集めた定例のミーティングで、来季からのツアー日程に関する驚きの変更を通達したという。

 ミーティングに参加した選手たちの一部からの情報として報じた米ゴルフウィーク誌によれば、PGAツアーは来季から少数限定、超高額賞金の新大会8試合を創設するとのこと。

 この8試合に出場できるのはフェデックスカップ・ランキング上位50名のみだそうだが、出場資格はさておき、驚くべき点が2つある。

 まず、1試合の賞金総額は破格の「2000万ドル(約27億3000万円)あるいはそれ以上になる」そうだが、この2000万ドルという数字は、リブ・ゴルフのそれと同額である。

 さらなる驚きは、これら8試合が「予選カットなし」で行われるということ。予選落ちのない3日間54ホールで競われるリブ・ゴルフの形式を意識したものであることは明らかだ。

 現在、PGAツアーは9月から翌年8月までを「1シーズン」としており、この括り方が採用されたのは2013-2014年シーズンからだった。

 しかし、来季(2023年シーズン)からは暦通り、1月から12月を「1シーズン」とする旧来の括り方に戻す予定であることも選手たちに通達された。

【結束?アライアンス?】

 このミーティングの場でモナハン会長は「今、PGAツアーはアンダー・アタック(攻撃の下)にある」と語った上で、「しかし、私たちは結束すれば強い」と選手たちに呼びかけたそうだ。

 その背後には、米欧両ツアーの結束が揺らぎ始めているという事情がある。

 リブ・ゴルフ創設の動きが見え始めた昨年、PGAツアーはDPワールドツアーと戦略的提携を結び、ともに強固な体制を作って新勢力に対抗していくことを誓い合った。

 だが、PGAツアーに比べれば、経済力が格段に劣り、選手層も薄いDPワールドツアーは、「お願いだから、どこにも行かないでほしい」とキース・ペリー会長が選手たちに懇願していたほどで、すでにリー・ウエストウッドやイアン・ポールターといったスター選手がリブ・ゴルフへ移籍した今では存続の危機を感じている様子だ。

 リブ・ゴルフ初戦に出場した選手たちに対し、PGAツアーがサスペンデッド(資格停止)処分を下した一方で、DPワールドツアーは処分をしない姿勢を見せ、全米オープン翌週のBMWインターナショナルへの出場も許可した。

 しかし、全英オープン前週のスコティッシュ・オープンは出場不可としたのだが、これはPGAツアーとの共催大会ゆえにPGAツアーの意向が反映された上での決定と見られている。

 いずれにしても、米欧両ツアーの足並みが乱れ始めていることは明らかであり、PGAツアーは21日午後の理事会でDPワールドツアーとのアライアンスの見直しの必要性も討議するとのこと。決定事項は22日(米国時間)の会見で発表される予定だ。

 リブ・ゴルフを早い段階から警戒し、その存在を真っ向から強く否定してきたPGAツアーだが、選手たちの流出が現実化してきた今、リブ・ゴルフをさらに意識せざるを得なくなり、少々振り回され始めているのではないか。

 その印象は、否めない。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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