守りは京田、打撃は柳田、トータルでは大谷が目標! 滋賀学園の岩井は、「二刀流」での活躍誓う!
夏の甲子園へ15年ぶりの出場を決めた滋賀学園。近江に勝るとも劣らない陣容ながら、毎年のように勝負所であと一歩、及ばなかった。今季は、春の直接対決で近江を倒し、本番の夏は、決勝を前に近江が敗退したため、最終的には滋賀学園の独壇場となった。その中でも注目は、3番を打つ岩井天史(てんすけ・3年=タイトル写真)。184センチ72キロとバランスのいい体格で、しなやかな身のこなしがひときわ目を引く。
三遊間寄りから矢のような送球
愛知県岡崎市の出身で、名城大4年の兄・天斗は最速152キロを投げるエース。早くも秋のドラフトで兄弟同時指名の期待がかかる。岩井自身は遊撃手としての起用がほとんどで、守備には絶対の自信を持つ。特に三遊間寄りのゴロを素早く処理し、一塁へ矢のようなダイレクト送球を見せる。綾羽との滋賀大会決勝でも、華麗な守備でエース・脇本耀士(3年)の完封をアシストした。
近江のエース・西山からも本塁打
1年の秋から3番が指定席となっているが、「打撃が課題」と本人も自覚しているように、高校通算本塁打は6本で、大型遊撃手の割には寂しい数字だ。もっとも、この中には昨春、滋賀ナンバーワンの近江・西山恒誠(3年)から奪った一撃もあり、この1年でパワーもついてきた。引っ張るよりも逆方向の打球が多く、「1試合1本は当たり前で、次の2本、3本目」と、毎試合複数安打を目標にしている。
無死満塁を「三重殺」で切り抜ける
そして密かにこだわりを持つのが、「投手」への憧れだ。準決勝の草津戦では、9-2とコールド勝ち目前の7回に登板し、ビシッと抑えるつもりだった。
しかし観客が岩井の144キロの剛球にどよめき、逆に動揺してしまう。2四球と安打であっという間に無死満塁とされ、「コールドつぶし」の大ピンチに。それでも次打者の二塁ライナーで、飛び出した走者が次々にアウトとなり、珍しい「三重殺」での幕切れとなった。ちなみに自己最速は145キロで、決勝も最後の瞬間、マウンドに立っているつもりだったが、これは本番の甲子園へ持ち越しとなった。
大谷さんを目標に「二刀流」も
指導する山口達也監督(53)は、「投手としての伸びしろも多く、京山(将弥=DeNA)のようなタイプ」と、ライバル・近江出身投手の名を挙げた。実際に、投手として評価するプロ球団もあるようで、将来は「(投手を)やってみたい気持ちもある」とまんざらでもない様子。ちなみに「守備は京田(陽太=DeNA)さん、打撃は柳田(悠岐=ソフトバンク)さんが目標。トータルでは大谷(翔平=ドジャース)さん」と、本家「二刀流」の名を挙げた。
甲子園練習でも剛球を披露
2日に行われた甲子園練習でも、岩井は投手陣の最後にマウンドへ上がり、力強い速球を投げ込んでいた。「いい球がいっているなと感じた」そうで、滋賀大会での「あの緊張を生かさないと」と苦笑いしていた。山口監督は「基本は野手だけど、『抑え』みたいなイメージも少しはある」と、場合によっては「投手・岩井」の切り札に含みを持たせた。滋賀学園はセンバツこそ8強入りもあるが、15年前、唯一の夏は初戦で完封負け。岩井が、甲子園で躍動して、夏の初勝利をつかみにいく。