国債ミニバブル崩壊で金相場急落
レイバー・デー(Labor Day、勤労感謝の日)の3連休明けとなった9月2日のCOMEX金先物相場は、前日比-22.40ドル(-1.7%)の1,265.00ドルと急落した。7月14日以来となる大きな下げ幅であり、6月17日以来となる約2ヶ月半ぶりの安値を更新している。
もっとも、本日は対ユーロでのドル相場には目立った動きはみられず、特にドル建て金相場が大きく売り込まれる理由は乏しかった。
一応は、「8月の米製造業総合景気指数が3年ぶりの水準に上昇したことを受け、景気への明るい見方が広がり、逃避需要が後退した」(Bloomberg)といった解説もある。確かに、本日発表された8月の米ISM製造業指数は前月の57.1から59.0まで上昇しており、57.0までの小幅低下を想定していた市場コンセンサスとは大きく異なる結果になっている。これを受けて、「米経済への信認強化→利上げ前倒し警戒→金相場急落」のロジックも確かに成立し得る。
ただ、主に金相場が急落したのはアジア・欧州タイム中であり、実はISM製造業指数発表後の金相場は1,260ドル台中盤を中心に揉み合っていたに過ぎない(下図参照)。
(出所)Kitco、「New York NYMEX」がニューヨーク時間中の値動き。
では、なぜ金相場は急落したのか?
一つの答えは、本日の欧米国債相場が全面安の展開を強いられていることになるだろう。今週は9月4日に欧州中央銀行(ECB)の政策決定会合を控えているが、マーケットではECBが資産購入プログラムの導入について一段と踏み込んだ動きを見せるとの観測から欧州債買いの動きが活発化し、欧州主要国の国債利回りは軒並み過去最低水準まで低下していた。
この流れは相対的な高利回りを求める米国債市場にも波及し、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ前倒し警戒感が広がる中でも、米国債利回りは低下するという「謎」をもたらしていた。これは、無金利資産の金保有コストが実質的な意味で高まらないことを意味し、金相場環境は弱気ながらも金価格が下げ切れない一因になっていた。
しかし、実際にECB政策会合が近づくと、既にドラギ総裁が量的緩和導入を支持する発言を行うのは織り込まれたとの見方が広がり、2日の欧州債市場ではドイツ国債利回りが約2週間ぶりの大幅上昇となるなど、国債ミニバブルの崩壊的な動きが観測されている。これを受けて、米10年債利回りも連休前の8月29日2.343%から、9月2日には2.421%まで急伸し、8月20日以来の高利回り状態を実現している。
9月2日の金相場急落は、金価格を取り巻く環境悪化が再確認できると同時に、改めて金価格形成における金利環境の重要性を再確認させるものと評価している。