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カナダのユダヤ団体、アマゾンに「ホロコースト否定論・ナチス礼賛の商品」を撤去するように要請

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

今までに何回もあったアマゾンへの「ホロコースト否定の本」の撤去要請「#NeverAgainAmazon」

2023年1月にカナダのB’nai Brith CanadaFriends of Simon Wiesenthal CenterLiberation75の3つのユダヤ団体がアマゾンに対してホロコースト否定論やナチスドイツを礼賛する商品を、国際ホロコースト記念日である1月27日までに撤去するように訴えていた。

ホロコーストとは第2次大戦時におけるナチスドイツによるユダヤ人迫害で、600万人以上のユダヤ人やロマ、政治犯などがアウシュビッツなどの絶滅収容所で殺害された。ホロコースト否定とは「そのようなホロコースト(大虐殺)はなかった」「600万人も殺害されていない」といった主張。現在でも反ユダヤ主義が蔓延している欧州やアメリカではホロコースト否定論者が現在でも多く存在し、ホロコースト否定に関する本も多く出版されている。

アマゾンでホロコースト否定論やナチスドイツを礼賛するTシャツやステッカーなどの商品が販売されていて、ユダヤ団体などに抗議されるのはこれが初めてではない。そこで3団体はアマゾンで2度とホロコースト否定論の本やナチス礼賛の商品を売らないようにと主張するために「#NeverAgainAmazon」のハッシュタグをつけてSNSでアピールするように訴えていた。

今までに何回も、世界中のユダヤ団体が世界中で蔓延している反ユダヤ主義やヘイトスピーチ拡散に対する流れを止めることを目的としてアマゾンに本の販売中止を要請していた。またアマゾンでは一度、ホロコースト否定の本を検索やクリックした人には、お馴染みの「あなたにお勧めの本」ということで、似たようなホロコースト否定の本が紹介されてしまうことや、ホロコースト否定に関する読者の「書籍レビュー」もホロコースト否定の考えが拡散していくことになっていると世界中のユダヤ団体が懸念している。

イスラエルのホロコースト博物館のヤド・ヴァシェムでも以前にホロコースト否定に関する本の販売停止を要求していたが、アマゾンからは表現の自由を阻害するとのこと、イギリスではドイツやフランスと違ってホロコースト否定の本販売は法律で禁止されてないことから拒否されていたこともあった。

危惧する歴史修正主義の蔓延

Friends of Simon Wiesenthal Centerは米国のサイモン・ウィーゼンタール・センターと同じくナチス犯罪を徹底的に追及し、ホロコーストの歴史を後世に伝えている。Liberation75はホロコースト生存者らが中心になってホロコースト教育に注力している。

ホロコースト生存者は高齢化が進み、ホロコーストを体験した人たちは年々減少している。「ホロコーストは当時、実際にあった」と証言できる生存者らがいなくなると、「ホロコーストはなかった」という"ホロコースト否定論"の投稿や情報が世界中に蔓延することによって「ホロコーストはなかった」という虚構がいつの間にか事実になってしまいかねない。いわゆる歴史修正主義だ。そのようになってしまうことをユダヤ団体は危惧しており、ホロコースト否定の本の撤去を訴えてきた。

アマゾンは欧米で多くの人が書籍や商品を購入するサイトだ。アマゾンでホロコースト否定の本やナチス礼賛の商品を扱わないことはホロコースト否定思想の拡散防止の一助にはなる。だが、たとえアマゾンで購入できなくとも他の場所で購入できるのであれば、根本的な問題解決においてはどの程度の効果があるのかは不明だ。

▼アマゾンで2度とホロコースト否定論の本やナチス礼賛の商品を売らないようにとの訴求のために「#NeverAgainAmazon」のハッシュタグをつけてSNSでアピール

(B’nai Brith Canada提供)
(B’nai Brith Canada提供)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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