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第5エンド「ワールドカーリングツアー、軽井沢国際選手権初日。氷上の椎名桔平が金星を挙げる」

竹田聡一郎スポーツライター
全員国立大卒のハイスペック軍団「チーム東京」ことKanda。右から2人目が神田。

軽井沢国際カーリング選手権大会2016が今年も開幕した。8の国と地域から30ものチームが集まり、氷上で熱い戦いを……とその前に、タイトルに「ワールドカーリングツアー」とかサラっと書いてしまったけど、日本にワールドカーリングツアーがやってくるのはこれはけっこう、いや、かなりすごいことだ。

ゴルフだったらPGAに日本のトーナメントが組み込まれるようなもので、テニスだったらATPの楽天ジャパン・オープンに相当するといえば分かりやすいだろうか。大会自体は18回目だが、昨年、ワールドカーリングツアーに認定されてから世界から注目されるイベントになった。

その証拠に今回もかなりハイレベルなチームが来てくれた。まず男子だが、世界選手権銀メダルのデンマーク代表であるStjerne、ソチ五輪銀メダルチーム(イギリス代表)で昨大会王者のMurdoch、スコットランド代表のBrewster、バンクーバ五輪金メダリストのJohn Morris率いるMorrisなどの実力派チームが揃った。日本勢は男子の日本王者SC軽井沢クラブMorozumiと、日本選手権準優勝のチーム東京Kandaなどが参加する。

女子もソチ五輪銀メダルのスウェーデン代表Siogfridsson、同銅メダルチーム(イギリス代表)Muirehead、ツアー賞金ランキング6位(12月15日現在)のSweeting、バンクーバー銅メダルの中国代表Wangなどが集い、それを昨年王者の北海道銀行フォルティウスOgasawara、日本代表で世界選手権銀メダルのロコ・ソラーレ北見Fujisawa、日本選手権準優勝のチーム富士急Koana、地元の古豪・中部電力Matsumuraなどの日本勢が迎え撃つ。

軽井沢にいて世界レベルのカーリングを観戦でき、日本選手団にすれば国内にいながら世界に胸を借りる絶好の機会でもある。

前置きが長くなってしまったが、初日だ。

男女それぞれ15チームが3つのリーグに分かれ1次リーグを戦い、1位と2位の6チームが決勝トーナメントに進出する。

15日の初日にはその1次リーグ4試合が消化され、男子の日本勢はMorozumiが順当に2連勝、Kandaが1戦1勝と好調な滑り出しを見せた。特にKandaは初戦で、慣れないアイスに苦しむMorris相手に序盤から大量リードを奪うと、中盤から終盤にかけての猛追をしっかり捌いてエキストラエンドで勝ち切った。

カーリングには「ホットハンド」という言葉がある。野球でいうと「当たっている」、最近では神ってるなんて言ったりもするが、「絶好調」「マン・オブ・ザ・デイ」みたいな解釈だ。

この日のKandaのスキップ、“氷上の椎名桔平”(勝手に僕が命名した)こと神田順平が遂行した仕事はまさにそれだった。派手なショットは多くなかったが、「ドローのウェイト感が合っていた」と本人が振り返ったように決して難易度の低くないショットをしっかりと決め、ホームの利も活かし、世界レベルのチームから金星を奪った。

また、2点リードで迎えたラスト第8エンドのランバックこそ決まらずにエクストラにもつれこんだが、本人に「決めたかった?」と質問すると「そうですね。でも外して2点取られてもエクストラでしたし」とサバサバ答えた。リスクとチャレンジを冷静に比較できる天秤をチームで持っているあたり、さすが東大卒というべきか。ゲームマネージメント能力も向上している。2日目以降も楽しみなチームのひとつだ。

女子はSiogfridsson、Muirehead、Wangらの各国代表が順当に2連勝。初めての、あるいは1年ぶりのアイスで、しかも短い8エンドゲームでしっかり結果を残すあたりはさすがの一言だ。

日本のOgasawaraは1戦1勝、Fujisawaは1戦1敗だった。勝敗は別としてどちらのチームもアイスリーディングに苦労した印象だ。Fujisawaのサードとして3季ぶりに国内公式戦のアイスに立った本橋麻里は、海外チームのアイスリーディングの早さについて「強いチームはどんなアイスでも早い段階でアジャストできる」と言っていたことがあったが、今大会も「アジャスト」という言葉を使ってアイスリーディングを要点に挙げていた。2日目からは日本勢の対応力に焦点が当たりそうだ。

週末に向けてさらなる盛り上がりを見せるこの国際タイトル。入場は無料で、カーリング観戦初心者でも会場内限定のFM放送で実況解説のサービスもあり、楽しめるイベントとなっている。ぜひ世界レベルのカーリングを観戦してほしい。

「軽井沢国際カーリング選手権2016」

Karuizawa International Curling Championships 2016

主催/軽井沢町、軽井沢国際カーリング選手権大会実行委員会

会場/軽井沢風越公園 軽井沢アイスパーク(長野県北佐久郡軽井沢町発地1154-1)

日程/2016年12月15日(木)~ 2016年12月18日(日)

放送/BS朝日にて女子決勝(12月18日15時~)など4試合

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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