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日銀はどの程度国債買入を減額するのか。時間を掛けて月額6兆円規模から2~3兆円規模への削減も可能か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀は14日の金融政策決定会合で全員一致で現状の金融政策の維持を決定した。さらに次回の7月の決定会合で市場参加者の意見を確認の上、今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定するとした。

 会合後の植田総裁の会見などから考慮して、今回の決定は国債買入の減額を本格的に行うためのものとの見方ができる。植田総裁は減額規模について「減額する以上相応の規模になると考えている」と述べていた。

 「債券市場参加者会合」を通じて、市場参加者の意向も確認した上で、今後1~2年程度の具体的な減額計画を決めることになる。規模については想定のものがあると推測はされるが、市場参加者との意見交換を経た上で決定されることになりそうである。

 とはいえある程度の規模を想定する必要もある。期間として今後「1~2年」程度をかけること、さらに植田総裁の「相応の規模」から推測すると、少なくとも1兆円の減額程度ではない。

 今回の決定会合では月額6兆円規模の国債買入額を5兆円規模と1兆円程度削減かとの見方が出ていた。実際にそれを検討する可能性はあったとみられるが、そのあとはどうなるか。市場は利上げのタイミングとともに、今後の国債減額へ警戒感を強めることにもなりかねない。

 国債の買入減額を金融政策と切り離し、こちらの予測性を強め、市場にあらぬ警戒感を強めさせることのないようにするためには、今回の決定、つまり来月の会合で市場参加者の意見を聞いて、どこまで落とし込めるのかを決めることは市場での「予見可能性」を強めさせることで、不透明感を払拭できる。

 それではどの程度の規模の減額となるのか。これは今後の日銀と市場参加者、さらには国債発行を担当する財務省とも意見をすり合わせて決めていくことが予想される。

 ひとつの目安として2014年4月の量的質的緩和前の数値(1兆8600億円)となる。念の為、日銀による月額買入を算出してみたが、2016年9月の長期金利コントロール決定移行、最も少なかったのが2020年2月の4兆8477億円かとみられる。

 しかし、相応の額ということととなれば、1兆円や2兆円はむしろ考えづらい。ではもし3兆円の減額となれば、どのような数値となるのかを勝手に試算してみた。

 現在は下記のような数字となっている。

1回あたり金額、回数、合計

1年以下、1,500、1、1,500

1~3、3,750、4、15,000

3~5、4,250、4、17,000

5~10、4,250、4、17,000

10~25、1,500、3、4,500

25年超、750、2、1,500

物価連動、600、1、600

合計、57,100

 上記の数値を元に3兆円に落とし込んだのが下記となる。

1回あたり金額 回数 合計

1年以下、750、1、750

1~3、2,000、4、8,000

3~5、2,250、4、9,000

5~10、2,250、4、9,000

10~25、750、3、2,250

25年超、500、2、1,000

合計、30,000

 ちなみに2013年3月当時の毎月の国債の発行額は10年国債の2兆4千億円、また5年国債は2兆7千億円、2年国債は2兆9千億円となっており、日銀による国債買入は「1年超10年以下」のトータルでは月間1兆円程度しかなかった。

参考 

財務省 平成25年度(2013年度)国債発行計画<カレンダーベース市中発行額> 

https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2013/calendar130129.pdf

日銀 オペレーション(2013年3月) 

https://www.boj.or.jp/statistics/boj/fm/ope/m_release/2013/ope1303.pdf

 現在の毎月国債発行額は10年2兆6千億円、5年2兆3千億円、2年2兆6千億兆円。

令和6年度(2024年度)カレンダーベース市中発行額

https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2024/calendar240314.pdf

 これからみても市場での国債吸収余力は十分にあると考えられる。ただし、2013年4月以降、債券市場における日銀への依存体質が急速に高まってしまっていたこともあり、その体質を改善するにはやや時間も必要となる。それが1年から2年かけてということになろうか。

 ただし、月額買入を6兆円から3兆円に減額しても、償還見合いでの減額となることで、単純に年間36兆円の減額。10年で360兆円と現在の585兆円規模から減額されることとなる。むろん残存が減ると償還も減るので実際には減額規模はそこまで減らない。

 以上の試算からみて、月額買入規模を最終的に2兆円程度にする(4兆円の減額)可能性もなくはないが、このあたり市場参加者はどう認識するのか。7月の結果を確認したい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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