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先週準優勝の土居美咲、カタールOPでは初戦敗退。勝利と敗戦を織りなす、テニス選手の“非日常的な日常”

内田暁フリーランスライター

●土居美咲 16 16 D・ガブリロワ

「自分としては嫌いなタイプの選手ではあるので……難しかったです」

持ち味を出せずに敗れた主な理由を、土居は自分の出来よりも、相手との相性に求めました。昨年末にロシアからオーストラリアに国籍を変え、先の全豪では新たな母国のファンの声援を背にクビトワらを破りベスト16に進出したダリア・ガブリロワ(35位)。その乗りに乗っている21歳のしぶとい守備、さらにドロップショットやボレーも用いる多彩なストロークに絡み取られ、土居は自分のテニスをさせてもらえませんでした。

「こうやってボコボコにやられると、けっこう難しいです……」

当然ながら、試合を振り返る口も重くなりがちです。

先週は台湾オープンで準優勝するも、その翌週には新たな大会に出て、初戦で敗退の失意も味わう――。

そのようなテニス選手の日常を、土居は「それもテニスの難しいところではあるんですが…」と認めつつ、こう続けました。

「いかに次に切り変えるかが凄く大切なので。感情的にならず、何が良くて何が悪かったかというのをしっかり見極めないといけない。負けた後は受け入れられない所もあるんですが、受け入れて次に生かさないといけないので」。

数年前までの土居は、負けるたびにひとしきり泣き切るなど、感情のコントロールの難しさを経験した時期もあったと言います。ここ数年でも、グランドスラムなどの大舞台でトップ選手を追い詰めながら、勝ち切れない悔しさを幾度も味わってきました。しかしその中でも「大雑把に見ると全てが“勝てそうな試合”だけれど、段階を追って見てみると、成長している中での、より差が縮まりつつある“勝てそうで勝てない試合”だった。今後もこういう試合はあるだろうし、逆の立場もあるだろう」と、自分の歩んできたプロセスも現在地をも、どこか冷静に客観視している様子です。

「敗戦の悔しさがあるから、次頑張れるというのもあるし、でも悔しさを引きづってもダメだし……。バランスですね」

既にツアー優勝の栄冠も勝ち取り、自分の力を信じる根拠を手にしている――。それらの経験をも武器にしつつ、来週のモンテレイ(メキシコ)から始まり、インディアンウェルズ、そしてマイアミ(いずれも米国)へと続く長い北中米の戦いへと向かっていきます。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。連日テニス関連の情報を掲載しています

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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