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「この商品は女性をターゲットにしました」 その根拠は?それって大丈夫?

池田恵里フードジャーナリスト
写真がなかったので、綺麗な女性の写真をえらびました。(写真:アフロ)

商品する際、設計するターゲット層

商品を作る前に立地における客層を調べ、商圏における人口などももちろんのことアンケート、分析をしどのような商品を作り上げるのか検討する。

「昼間は通行人が○○万人いるのですが、夜はさっぱりなんです」

「年間を通して、〇月に売れ、通常、売れるとされる時期と比較すると自社のものは違うようで」

「他社を見ますと、このようなターゲット層、価格帯を見ますと、○○円にピンポイントで設定しているので、○○円にしました」

各社のマーケテイングを見ると、レベルはまちまちで開きがある。しかし以前から考えるとIBS(行き当たりばったりシステム)から随分、進んだと言える。

とはいえ、まだまだよく聞かれる言葉は「女性をターゲットにいたしました」

「女性をターゲットにする」その根拠がきちんとしていれば良いのである。しかし女性ターゲットとはあまりに大きく括りすぎであるし、その理由を聞くと、あまりにもお粗末な場合も多々あり、それを承諾した役員に聞くと「女性目線で・・・と言われてしまうとどうも弱くて・・・変に納得してしまい、返す言葉がない」と。「それって、どうなんだ??おいおい」と年齢はいっているが一応、女性である私は首をかしげてしまう。

ターゲット層の思い込みから潜在市場を掘りあてたファミリーマート

そこでコンビニのスイーツについて。

随分、以前は「スイーツのターゲットは女性なんです、だから女性の感性を生かしてほしい」とよく言われた時代があった。

まるで男性はスイーツを食べないと決めつけ、その概念から抜け出せなかったのだ。

しかし10年前になるが、それを見事に風穴をあけたのがファミリーマートであった。

2007年6月から企画された「男のシリーズ」が売り場に並んだ瞬間に「なるほど」と唸ったものだ。

当時、コンビニの主要顧客年齢は、20代から30代の男性であった。多くのコンビ二では女性をターゲットにしたスイーツがほとんどであった。

つまり当時の男性は大げさに言うと「スイーツ難民」だったのだ。

コンビニの主要顧客であった男性は気の毒なことにスイーツに関しては度外視されていたのだ。

しかしファミリーマートが「男のシリーズ」を発売したことで、潜在市場を掘り起こし、それまで購入比が男性4に対し女性6であったが、この商品を投入したことで男性6に対し女性4となったのである。

男性もスイーツが食べたかったのだ。

さて内容は、容器はこれまで丸みのある柔らかいイメージから「渋さ」を表現すべく黒を基調に容器もスリムにし、ワンハンドで持ちやすく、味付けも甘味より苦みを効かせたスイーツとなったのだ。

ファミリーマートの「男シリーズ」2007年
ファミリーマートの「男シリーズ」2007年

ということで話は長くなったが、多様化する顧客層をどのようにとらえていくか、今回は、今年のエンゲル係数を通して、ターゲットについて話を進めていきたい。エンゲル係数は以前にも述べたがあまりにもシンプルな数字であるため、これまであまり問題視されていなかった。しかし多様化されてきているなか、ある意味、わかりやすく如実に社会状況を表す数字ともいえるのだ。

2016年のエンゲル係数

近々の調査、つまり2016年のエンゲル係数は総務省の調査では、二世帯では25・8%と高水準となった。これは1987年以来29年ぶりであるとされる。

次に人口の3割を占め、今後、増加するとされる単身者では28%となっている。

生涯未婚率は男女ともに上昇しており、男性においては1985年以降、男性が女性を逆転し、急激なカーブで上昇している。

今後、この単身者でしかも男性を無視することはできないといえるのではないか。

単身者の男性が食費にかける

そこで単身者の支出における食費、並びに調理品を見てみることにした。

ちなみに近々の2016年総務省の単身者の年代の区分けを見ると、10年刻みではないことをあらかじめ申し上げておく。男性が食費にかけるお金は年代関係なく高く、女性より1万円ほど食品に費やしている。惣菜を含む調理食品に関しても、男性のほうが約3000円多い。なかでも35歳以上から59歳までの男性が最も多く食品に対する支出額が多く、調理食品も同様である。

単身者の支出における食品ならびに調理食品
単身者の支出における食品ならびに調理食品

一方、女性はと言うと、同年代つまり35歳から59歳までを見ると支出は男性より多いが食費にかけるお金は男性より1万3000円低いのである。

以前、調査をしたが、その時の回答として「化粧品、美容院、ネイルにかかる」が多く見受けられた。

このように考えると男性の単身者、なかでも35歳から59歳までの支出額からここに注目するのも一案ではないだろうか。

そして男性の単身者、未婚率の上昇を考えると、今後、この流れは変わらないと考えられる。

ターゲットの多様化

家族とひとことでまとめることが難しくなっており、柔軟にマーケテイングすることはもちろんのこと、例えばアンケート調査においても何を質問するのかで大きく結果が変わってしまう。そこから見えてくる顧客層が正しいならば、開発にかかるコスト、もちろん人件費も低く済むのである。今、食の業界ではアルバイト、パートさんの不足など、人件費の問題は多くの場合、現場での問題がクローズアップされているが、商品が世の中に出る前も同時により考える必要性があると思える。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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