【夏休み】子どもと考えよう 野生動物をペットにするという意味
夏休みの課題研究に悩んでいる人は、「野生動物をペットにする」とはどういうことかを考えてみませんか?
トップの写真は、フェネックというキツネの仲間です。
大きな耳が特徴で、とても「かわいい」ですね。フェネックは、イヌとキツネを足して2で割ったような感じで、とてもキュートです。学校から帰ってきたら、こんな耳の大きな動物が迎えてくれるなら、飼いたくなるかもしれません。
今日は、フェネックを例にして、野生動物をペットにすることの問題点を考えてみましょう。
フェネックとは?
まずは、フェネックについて簡単に説明します。
フェネックは、イヌ科キツネ属に分類される食肉類です。つまり肉食です。
「大きさ」
・体長 30 - 40cm
・尾長 15 - 30cm
・体高 15 - 17cm
・体重 1 - 2kg
写真を見てわかる通り、耳の大きな小さなイヌのように見えます。
フェネックはどこに生息しているか?
砂漠に生息しています。そのため、日本の湿度は苦手なのです。
国としては、アルジェリア、エジプト、スーダン、チュニジア、モロッコ、リビアなどにいます。
フェネックがなぜペットに適していないか?
SNSで投稿されているフェネックを見て、飼いたくなった人がいると思います。
しかし、イヌやネコのようにペットには適していないのです。そのことを具体的に見ていきましょう。
1、トイレ
イヌやネコのように、排泄物を決められた場所にするのは難しいのです。マーキングのためにいろいろなところでニオイの強いフンや尿をします。
2、散歩
イヌのように、首輪やリードをつけて散歩には連れていけません。警戒心が強いので、脱走するリスクがあります。
3、電気代
砂漠の気候に適合しているため、日本では空調・除湿設備の常時稼働と停電時の備えが必須です。電気代が高いといって、空調を節約すると命にかかわることがあります。
4、鳴き声
夜行性で社会性が高い動物であるため、夜間に動き回ったり鳴いたりします。飼い主が寝ようとしたら、動き回っていることもあります。
鳴き声は、近隣にも迷惑になります。
5、穴を掘る
もともと、砂漠に生息するので昼間の暑さや夜間の寒さをしのぐため、穴を掘る習性があります。
野生動物をペットにするリスク
WWFジャパンでは、野生動物のペット利用の課題について取り組んでいます。
エキゾチックアニマルといわれるフェネックをペットにするとどのようなリスクがあるのか、見てみましょう。
1、野生動物を絶滅に追い込むリスク
ペット利用される動物の中には、絶滅のおそれのある動物が多く含まれています。
たとえば、フェネックが人気になれば、砂漠に住むフェネックが捕獲され野生での存続が脅かされる可能性があります。
2、密猟や密輸を増加させるリスク
日本に向けた野生動物の密猟や密輸が毎年発覚しています。
日本に違法に持ち込まれた動物がペット市場に流通している可能性もあるのです。
3、動物由来感染症(人獣共通感染症)に感染するリスク
イヌやネコもそうですが、動物から人に感染する病気「動物由来感染症(人獣共通感染症)」のリスクがあります。
たとえば、鳥類から感染するオウム病や、爬虫類・両生類からのサルモネラ症があります。
狂犬病は主にイヌ科の動物に咬まれることで人へ感染します。フェネックはイヌ科の動物だということは忘れてはいけません。
ペストは、猫、ネズミやプレーリードッグといったペストに感染した動物の体液やペスト菌を保有したノミが人を刺すことによって感染する病気です。そのため、プレーリードッグの輸入が2003年から、禁止になりました。
4、動物福祉を維持できないリスク
前述したフェネックは、砂漠に住む動物なので、一般家庭やアニマルカフェなどでの飼育が適しません。フェネックなどの動物が精神的・肉体的に大きなストレスを受けている場合があります。
5、外来生物を発生、拡散させるリスク
アニメで人気ものになったアライグマは、幼い時期にはかわいいのですが、成長すると獰猛になるので遺棄した人が多くいました。いまでは特定外来生物になっています。サギ類のコロニーの破壊やサンショウウオの捕食など、アライグマによると考えられる生態系への影響が報告されています。
このようにペット利用されている野生動物が逃げ出す、遺棄されることで生態系を脅かす事例が数多く確認されています。
フェネックを飼いたいと思っている人へ
フェネックなどの野生動物のペット化の需要があると、狩猟・密輸で個体数が減ってしまうことや、それに加えて感染症が広まるおそれがあります。
SNSの投稿を見て大金(数十万円から百万円といわれています)を払って、いざ飼い始めても、前述のようにフェネックはペットとして向いていないのです。
まとめ
ペットを飼うことで、ヒト以外の動物に関心を持ち、「命」「老い」「病気」などを考えることができます。子どもが動物に触れることで、命の尊さなどを体験を通じて理解できるかもしれません。
だからといって、野生動物を簡単にペットにすることは慎重にする必要があります。
「かわいい」だけで動物を飼うことは危険な行為だということを認識してほしいです。
日本には動物園や水族館が多くあります。そこに行けば、ミーアキャットやマヌルネコなどの「かわいい」動物をたくさん見ることができます。動物園や水族館にはその動物の専門の飼育員がいて、その動物に合った飼育がされています。