日本はトップ・「脱税は悪事」世界の思いの強弱を探る
納税は国民の義務ではあるが、それを違法にごまかして逃れたり、額を減らそうとする行為「脱税」はしばしば見受けられる(法に従って納税額を減らそうとする「節税」とは別)。その脱税行為に対する拒否感はどの国も同じだろうか。その実態を、世界規模で国単位の価値観を定点観測している「World Values Survey(世界価値観調査)」の結果を元に確認していく。
次に示すのは、脱税行為に対し、どれほど否定感を持つかを10段階で答えてもらい、国単位で平均値を算出したもの。「悪くは思わない」を10、「物凄く悪いこと」を1とし、10段階で回答者の心境を提示してもらっている。値が低いほど「脱税は悪である」との認識が強い。理論上、全員が中間の意図を持っていれば、回答値平均は5.5となる(十段階選択肢のため、個人では5.5という回答は出来ない)。
先進国の中でもヨーロッパ地域で経済的な堅調さを示すドイツでは、設問がなされていないとの結果が出ている。理由は記載されていないが、ドイツでは回答期間に相次ぎ巨大脱税・資産隠しが暴露される事件が発覚していること、同国では脱税が発覚しても自己申告をして税金を支払えば罪には問われないなどの仕組みがあり、他国と同列での調査は難しいとの判断があったのだろう。
それを別にすれば、大よそ回答値は「良くないこと」に傾いており、脱税に関する嫌悪感の強さが表れている。もっとも、寛容的な国も少なくない。例えばフィリピンは今回抽出した諸国の中では群を抜いて脱税には寛容で、「まったく問題は無い」(回答値10)の人が12.0%もおり、平均値も高い結果が出ている。
他方、日本は諸外国の中ではもっとも脱税行為に厳しく、他国と比べて一段明らかに下がる形の値を示している。「脱税は絶対ダメ」(回答値1)の回答率が83.8%に達していることからも、この低い値が出るのが理解できよう(8割超は日本のみ)。
日本が高い値を記したこと、すなわち「脱税に対する拒否反応」は極めて正しい姿勢であり、貫き通すべきものに他ならない。税金が正しい使い道をされるよう監視するのはもちろんのこと、例えば皆が守るべき納税行為を、「自分の環境は人とは違うから」などの理由などで破るのは人として正しいことか否か、日本人として今一度考えてみるべきだろう。
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