Yahoo!ニュース

阪神・鳥谷敬のXデー、本人もファンも前向きに迎えるべし

豊浦彰太郎Baseball Writer
二軍でしっかり打席数をこなし、シュアな打撃を取り戻して欲しい。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

5月22日、一部メディアの報道に、阪神の鳥谷敬の連続試合出場が遂にストップする可能性を示唆するものがあった。極度の不振ながら、守備固めや代打での出場で形式的に記録を継続する鳥谷に対し、遂に金本監督が決断を下すだろうというものだ。ぼくも、22日のヤクルト戦での完全欠場の可能性高しと予想したが、6回に代打で登場し見事安打を放ち、記録も1935試合に伸ばした。

これをどう解釈すべきか。遅かれ早かれ彼の記録は途絶えるものと思われるが、「とりあえず完全欠場」のXデーを設定するのではなく、「記録のための不要な途中出場時は控える」決断をした、ということだろうか。もしそうなら賢明である。この種の記録の終わり方としてあるべき姿だと思う。

大事なのはその日を、メディアもファンも動揺せず前向きに迎えることだ。22日の某紙の「記録ストップかも」の記事でも、金本監督の判断を「心を鬼にして」と形容していたし、その夜鳥谷が代打で安打を放ったことを伝えるテレビのニュースでは「なんとか繋がった」と安堵のニュアンスで報じていた。これらの論調は彼らが本件の本質を理解していないことを示している。

連続試合出場は、その選手がそれだけ長く戦力であり続けたことと強靭な肉体を維持し続けたことの証であるからこそ価値があるのだ。しかし、鳥谷の場合(現役時代の金本監督同様に)その記録は残念ながらすでにフェイクの域に入っている。この状態を終わらせるのは「良心」だし、今の状態が長引けば長引くほど、ベースボールの尊厳と連続試合出場という記録、そして何よりも鳥谷敬という野球人自体の価値を損なってしまう。

ねつ造された記録に拘らずとも鳥谷は充分偉大なプレーヤーだ。むしろ、今まで積み重ねて来たものを傷つけぬよう、記録のための出場は速やかに止めるべきだ。もし、本日(は雨天中止になったようだが)彼に出場の必然性がないため記録が途絶えたとすれば、それは鳥谷にとって喜ばしいことだ。妙な記録の呪縛に捉われることなく、ごく普通に本来の調子を取り戻すべく努力して欲しい。

ぼくは、彼は登録から外れるべきだと思う。現在の不調が深刻なケガによるものでない以上、1イニング守備に就くためだけにベンチを温めても打棒は復活しない。何よりも大切なのは実戦で連日4打席こなし続けることだと思う。それを叶えるには、一旦ファームに落ちるしかない。その上で復活を果たすことを心待ちにしている。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

豊浦彰太郎の最近の記事