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R・マキロイとP・リードの「あまりにも大人げないケンカ」。ゴルフ界の現状が情けない

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

「まるで子どものケンカみたいだ」という表現があるが、ローリー・マキロイとパトリック・リードの今回の騒動は「あまりにも大人げない」と言うべきだろう。

スペインのウェブメディアが第一報を発し、その後、米欧メディアも次々に報じているこの騒動は、瞬く間にSNSで嵐を巻き起こしている。

米スポーツ・イラストレイテッド誌によると、コトが起こったのは、今週のDPワールドツアーの大会「ヒーロー・ドバイ・デザート・クラシック」の練習日の1月25日のこと。

DPワールドツアーでは現状では暫定的にリブゴルフ選手も出場できる状況にあり、この大会にはリードも出場している。

開幕前の水曜日、練習場でローンチモニターなどを使ってショット練習をしていたマキロイの打席にリードが挨拶をする目的で歩み寄ってきた。

リードが「ハロー」と声をかけると、まず、マキロイの相棒キャディのハリー・ダイアモンドが「ハロー」と応じ、この2人はお互いに気持ちよく挨拶を交わした。

そのとき、マキロイはリードに背を向けてしゃがみむような体勢で、モニターをいじるような仕草を続けていた。

リードは背中側からマキロイに2度ほど声をかけたが、マキロイはまったくの無反応。

無視されていると悟ったリードは、くるりと背を向けて立ち去ろうとしたが、その際、マキロイの方を振り返るようにしながら、右手に持っていたティペッグをマキロイの方へ投げた。

その後、マキロイは現地にいた米欧メディアに向かって、この出来事を語ったのだが、その説明には、ティペッグを「投げつけられた」という激怒が明らかに込められていた。

マキロイがリードを無視し、そしてティペッグを「投げつけられて」激昂している背後には、リブゴルフがPGAツアーを提訴している法廷闘争の問題がある。

この訴訟の一環でマキロイとタイガー・ウッズには米国の連邦裁判所から個別のヒアリングのための召喚状がすでに送られているのだが、それに関係するものとして、マキロイは「クリスマス・イブに(リードの弁護士から)召喚された(呼び出された)んだ」。

欧米人にとってクリスマス・イブやクリスマスは、日本人にとっての大晦日や元日のような「大切な日」である。家族で過ごすイブを楽しみにしていたマキロイにしてみれば、よりによって、そんな日に呼び出すとは許せないという怒りが胸の中にあり、どうやらその怒りがリード本人に向けられて「完全無視」という行為に出た様子だ。

一方、リードにはリードの言い分がある。自分の弁護士がイブにマキロイを呼び出したことは「僕とは無関係」。そして、せっかく親しみを込めて挨拶をしに出向いたのに、無視するとは「成熟してない幼い子どもみたいだ」とマキロイを批判。

さらに、「投げつけた」と言われているティペッグは、リブゴルフにおけるリード所属のチームの名前やロゴマークが付されたもので、マキロイにとんでもなく不愉快さを覚えたリードは、そのティペッグを置き土産的にマキロイの打席近くに放ったのだそうだ。

一部始終を捉えた動画を見る限りは、リードはティペッグを「投げつけた」というよりは、軽く放ったように見える。しかし、しゃがんだ体勢だったマキロイにしてみれば、頭の斜め上から先が尖ったティペッグが「投げつけられた」と感じたのかもしれない。

SNSでは、すでにこの騒動に「ティー・ゲート事件」という名前が付けられ、面白おかしく論じられている。

いずれにしても、「無視」とかティペッグを「投げる」などといった行為や、こうした相手への「口撃」は、ゴルフ界の一流選手たち、ましてやメジャー・チャンピオンたちが取るべき行動とはとても思えない。

あまりにも大人げないケンカがこうして起こり、それが世界中で取り沙汰されている。そんな米欧ゴルフ界の現状が、あまりにも情けない。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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