男性21.3%、女性55.8%は非正規…就業者の正規・非正規社員率をさぐる
・15歳以上の就業者における正規社員と非正規社員の構成率を計算すると、非正規社員率は男性で21.3%、女性で55.8%(2017年)。
・男性は大よそ20代後半から50代後半までは正規社員率が8割~9割台。
・女性は20代後半が一番正規社員率が高く、それ以降は漸減していく。
男性78.7%、女性44.2%が正規社員
就業形態の区分方法の一つで、雇用市場の実情が語られる際によく話題に上るのが正規か非正規かの違い。現状では就業者のうち非正規の割合はどれほどなのか。最新の実情を国民生活基礎調査(※)の結果から確認する。
これから示すのは、役員以外の働き人(就業者。雇われている人。自営業者や家族従業者、内職者などは含まれない)における、「正規社員(・職員)」と「非正規社員(・職員)」の比率。両者の定義としては「正規社員…正社員。一般社員」「非正規社員…パート・アルバイト、労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員・嘱託など」となる。
最新データとなる2017年分における「就業者の正規・非正規比率」は次の通り。
男性は10代では正規社員率が約4割に留まる。20代前半になると2/3となるが、まだ非正規社員率は相当なもの。これは中卒・高卒者による就労以外に、高校生や大学生によるパートやアルバイトも含まれるため。20代後半以降は8~9割台と高い値を占め、60代に入りようやく定年退職によって正規社員率が下がり、非正規社員率が上昇する。とはいえ65歳以上でも3割近くは正規社員の立場を確保している。
今調査では詳しい比率は確認できないが、高齢者の非正規雇用の多くは、一度定年退職や早期退職制度を適用した上で、同じ、あるいは関連企業に嘱託などの立場で再雇用されている事例があるものと考えられる。
一方女性は若年層でも正規社員率は男性より低く、20代後半をピークとする。これは「寿退社」などによる退社で若年女性正社員が辞めていくことに加え、世帯を持った主婦が子育てのさなかにパートなどの非正規労働に就くことで、非正規社員の数が底上げされるのが要因。時折今件数字だけを見て「女性の非正規社員率が高いのは差別的雇用の結果に他ならない」とする論説を見かけるが、男女それぞれの就労事情の認識が欠けているだけの話でしかない。
学歴による正規率の違い
今件動向を回答者の学歴別に見たのが次のグラフ。世間一般のイメージ通り、高学歴ほど正規社員率は高い。男性では大学院卒で9割を超えている。
女性の場合は既婚者による就労の場合、本業として・世帯主としての就労ではなく、家計をサポートするためのパート・アルバイトの可能性が高い。一概にこの値だけで「女性は押しなべて非正規社員の比率が高い」として嘆く必要はなく、また上記のように労働市場のあり方に反発するいわれも無い。男性とは前提条件が違うことから、違う結果が出て当然。無論女性の中にも、結婚した上で本業として正規社員の立場で就労する人も大勢いる。
世間一般には今記事の題名の通り「男性23.5%・女性55.8%は非正規社員」との部分だけ注目され、労働市場の問題として提起されることが多い。しかし実態としては女性のパート・アルバイトが多分に値を動かしている実態を忘れてはならない。
さらにいえばこの非正規社員比率の換算には、役員や自営業者が抜けている。仮にこれらの人たちも計算に含めれば、就業者全体に占める非正規社員比率はさらに落ちることになる。この点について、十分以上に留意しなければならない。
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※国民生活基礎調査
全国の世帯および世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2017年6月1日に世帯票・所得票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票が4万6399世帯分、所得票が6541世帯分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2017年分)は簡易調査に該当する年であり、世帯票・所得票のみの調査が実施されている。
また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分はデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。
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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。