2020年の飛躍に向けて。史上最年少タイトル挑戦なるか?藤井聡太七段「勝負」の11月
本日、藤井聡太七段(17)は順位戦C級1組6回戦で青嶋未来五段(24)と対戦している。
ここまで5戦全勝できている順位戦の今後を占う大一番だ。この対局含め、藤井七段にとって11月は「勝負」の月となる。
王将戦リーグ
なんといっても挑戦権に近づいている第69期王将戦リーグが注目だ。
もし挑戦権を獲得すれば史上最年少でのタイトル挑戦となる。
王将戦リーグは現在、広瀬章人竜王(32)が4勝1敗で一歩リードしており、藤井七段が3勝1敗で追う展開だ。他に1敗者はいない。
両者は11月19日(火)に行われる最終戦での対戦が決まっている。
藤井七段はその前に久保利明九段(44)との対戦が11月14日(木)に組まれている。
久保九段はここまで3連敗とふるわないが、前王将の意地をかけて藤井七段を止めにくるだろう。
藤井七段が久保九段に勝つと、最終戦では広瀬竜王と4勝1敗同士の対戦となり、勝ったほうが挑戦権を獲得する。
これはわかりやすい構図だ。
藤井七段が久保九段に負けて広瀬竜王に勝った場合はややこしい。
最終戦で藤井七段が広瀬竜王に勝った時点で両者4勝2敗で並ぶ。
ただ王将戦リーグでは「挑戦プレーオフは上位2人」の規定があり、4勝2敗が3人以上出た場合は、順位上位の2人でのプレーオフとなる。藤井七段は今期のリーグでは順位最下位のため、他の結果次第ではプレーオフに進出できないのだ。
まだ流動的ではあるが、藤井七段は久保九段と広瀬竜王に連勝しないと挑戦権獲得は難しい状況といえよう。
史上最年少タイトル挑戦なるか?
王将戦七番勝負で待ち受けるのは渡辺明三冠(35)。今年度はいまだに豊島将之名人(29)以外には負けなしで8割を超える好成績だ。いま最強の棋士と言っても過言ではないだろう。
その時点での最強棋士に最年少棋士が挑戦するという構図は、否が応でも歴史的な勝負を期待せずにいられない。
過去を紐解くと、名人戦で大山康晴名人に「棋界の若き太陽」と呼ばれた中原誠二冠が挑戦した時と似た構図か。
しかしそこにたどり着くまでには、先ほど述べたように久保九段と広瀬竜王という強敵相手に連勝する必要がある。
久保九段とは今期3回の対戦があり、竜王戦決勝トーナメントでは藤井七段が勝ったが、NHK杯将棋トーナメントと銀河戦本戦トーナメントでは久保九段が勝っており、藤井七段からみて1勝2敗だ。
広瀬竜王は現在進行中の竜王戦七番勝負では豊島名人に2連敗中だが、他の棋戦では勝ち進んでおり調子は上向きだ。
一つ好材料があるとすれば、2局とも藤井七段が先手ということ。
ここまで勝率9割近い先手番であれば、この強敵相手に2連勝する可能性も十分あるだろう。
初タイトル挑戦なるか、それは11月のこの2局にかかっている。
順位戦も大一番
本日対局の順位戦C級1組では、青嶋五段と対戦している。
これまで2018年9月に1度だけ対戦があり、藤井七段が勝っている。
藤井七段はこの青嶋五段戦を終えると残り4戦は昇級戦線に絡まない棋士との対戦となる。競争相手との対戦はこれが最後だ。
順位戦での順位が上位ということもあり、今日の一戦を勝てば昇級確率がグンと上がる。
対戦相手の青嶋五段もここまで4勝1敗できており、藤井七段を倒せば昇級に望みをつなげられる。
青嶋五段は今期7割近い成績で現在5連勝中と上り調子だ。この一番には当然死力を尽くしてくるであろう。
藤井七段にとって今期順位戦の大きなヤマといえる一戦だ。
予選も進行中
王将戦リーグ、順位戦以外では、棋聖戦二次予選の対局が決まっている(11月8日対阿部隆八段)。
あと2勝でリーグ入りとなる王位戦予選も11月中に対局があるかもしれない。
こういった予選も含め、この11月で結果を残せば2020年の飛躍へとつながる。
筆者の見解では、夏頃からこの秋にかけて藤井七段の将棋は内容が良く、さらに実力がアップしたように見受けられる。
実際、長い持ち時間(3時間以上)の対局で豊島名人以外に負けたのは6月まで遡る。
なんといっても王将戦リーグでA級棋士3人を撃破した星が光っている。
王将戦で迎え撃つ渡辺明王将(三冠)からは、「藤井七段が挑戦する可能性もかなりあると思う」という言葉も直接聞いた。
いまの実力と調子であれば、ファンの夢が現実になる可能性も十分にあるとみる。
まずは本日の順位戦をご注目いただきたい。