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確実に増加する携帯電話代の家計負担を確認する

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 誰もが携帯電話、特にスマホを使うようになる昨今。料金負担も…

携帯電話、特にスマートフォンは生活必需品としての立ち位置を確かなものとするに連れて、その利用料金が社会問題として取り上げられるようになりつつある。その負担状況を総務省の家計調査のうち総世帯(二人以上世帯も単身世帯も合わせたすべての世帯)の調査結果から確認する。なお文中に登場する「世帯消費支出」とは税金や社会保険料を除外した、「世帯維持に必要な支出」を意味している。

まずは電話通信料の推移。固定電話(据え置き型の電話。IP電話なども含む)通信料は毎年減少している。携帯電話の利用が増え、固定電話の利用者そのものが減少しているのに加え、IP電話やCATVサービスによる電話の普及で、利用料金が抑えられているのも理由の一つ。最近では固定電話そのものが無い世帯も増えており、それも固定電話料金減退の一因となる。

一方移動電話通信料は便宜性の向上などを受けて携帯電話の普及率が底上げされ、その分増加を示している。また、単体の通信料も従来型携帯電話からスマートフォンへと利用端末機種のメインがシフトするに連れ、増額に拍車がかかっているのが現状。

今件グラフのカバー範囲、2003年以降では、2005年にイレギュラーがあったものの、概して通信料総額は漸増、そしてその中でも移動電話通信料が額・比率共に増加傾向にある。ただし2008年以降は伸びが緩やかになり、2010年は(リーマンショックの影響もあるのだろう)わずかながら総額、そして移動電話通信料単体額も前年比からマイナスを示す場面を見せている。

↑ 電話通信料推移(総世帯、円、年間)(~2015年)
↑ 電話通信料推移(総世帯、円、年間)(~2015年)

他方、世帯消費支出は収入・可処分所得の漸減(社会保険料の増大が大きな要因)などの理由から微減を続けている。電話通信料は横ばいあるいは多少だが漸増、世帯消費支出は漸減となれば、当然「世帯消費支出に占める電話通信料の比率」は少しずつ、そして確かに増加の傾向を示すことになる。

直近の2015年は消費支出は減少、そして電話通信料は増加したことを受け、比率は3.97%となり、前年比で0.20%ポイント増となった。これはグラフ領域内では最大値で、間もなく4%に手が届くことになる。

↑ 世帯消費支出と、世帯消費支出に占める電話通信料の割合推移(総世帯、円・%)(~2015年)
↑ 世帯消費支出と、世帯消費支出に占める電話通信料の割合推移(総世帯、円・%)(~2015年)

電話通信料の金額、消費支出に対する比率、さらには家計への精神的な負担のプレッシャーが共に上昇を続けていることに違いは無く、自分自身の利用はもちろん、保護者が子供に携帯電話を持たせる際にも、料金周りでより厳しい目を向けるのも当然となる。何しろ子供の大半は、子供自身が使った携帯電話の料金を自分のこづかいからは支払わず、保護者任せにしているのだから。

↑ 自分のおこづかいで携帯電話(スマートフォン含む)の使用料を支払っているか(2015年、無回答を除いて再計算)(おこづかいをもらっている人限定)(知るぽると:子どものくらしとお金に関する調査から)
↑ 自分のおこづかいで携帯電話(スマートフォン含む)の使用料を支払っているか(2015年、無回答を除いて再計算)(おこづかいをもらっている人限定)(知るぽると:子どものくらしとお金に関する調査から)

もちろん携帯電話会社各社でも、定額制の利用を勧めるなど、対応策を講じている。そしてその定額制自身も「あまり使わない場合は定額そのものも上限までの範囲で安くなる」数段階に分ける方式を取り入れるようになっている。

また昨今ではいわゆる「格安スマホ」(MVNO(仮装移動体通信業者)が提供しているSIMカード(格安SIM)を用いたスマートフォン)も急速に普及しはじめている。スマートフォンを使いたいが料金体系を考えると躊躇していた人の新規調達、通常のスマートフォンの利用料金で頭を抱えていた人などが乗り換えるケースなど、状況はさまざま。今後さらに普及が進むであろうことは容易に想像ができよう。

多機能性を誇るスマートフォンの普及に伴い、携帯電話はこれまで以上に便利なツールとして、日常生活においては必要不可欠な存在となりつつとある。これは平時はもちろん非常時でも変わらず、その重要性は先の震災でも実体験した人も多いはず。それだけに、一度使い始めたらその利用を止めるのは難しい。色々な仕組みの活用や「格安スマホ」などの選択肢を上手に使いわけ、少しでも負担を減らしたいものである。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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