大竹耕太郎・細川成也はなぜ活躍できた!?上原浩治が分析する現役ドラフト選手再生の鍵
今オフもプロ野球の「現役ドラフト」が12月8日に開催され、各球団から1人ずつが他球団へ移籍することが決まった。
出場機会に恵まれない選手の活躍の可能性を広げることを狙いとして昨オフから始まった制度では、かつてのドラフト1位選手も3人リストアップされるなど、各球団が制度の趣旨に沿って移籍の活性化を目指す姿勢が見て取れた。「現役ドラフト」の1年目は、ソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎投手、DeNAから中日に移った細川成也選手の活躍がクローズアップされた。2年目も「名前のある選手」が移籍し、新天地での活躍の機会をうかがう。一方で、「現役ドラフト」1年目で移籍した選手のうち、半分の6人が戦力外通告を受けている。
厳しい現実にどう立ち向かうか。「現役ドラフト」による再生の鍵は、「役割」と「指導者」が握っているように思えた。
大竹投手にしても、細川選手にしても置かれていた状況は、残念ながらチャンスをモノにできなかった他の移籍選手と同じように「崖っぷち」だったはずだ。少なくとも、元の球団にとって「絶対に必要な戦力」ではなかった。一方で、獲得した球団にとっては、「戦力」としての期待が多少なりともあった。このポジションなら、この役割なら、と「一点」だけに懸けていたかもしれないが、そこで使えるか見極めようとしたはずである。
大竹投手なら「先発」という枠で期待された。貴重な左腕で2019年には先発で5勝をマーク。阪神でも、ほかの選手との兼ね合いもあるだろうが、先発に「ハマった」からこそ、活躍の機会が得られた。細川選手のケースでは「良き指導者」との出会いが大きかったはずである。打撃職人でもあった和田一浩打撃コーチの指導を受け、打撃フォームも似てきた。
「役割」と「指導者」は、絶対的なものではない。「役割」はチーム事情に左右され、自分が求められる「役割」と「チームの需要」が一致し、かつチャンスを一発で活かすほどの結果が全て重なっていく必要がある。「良き指導者」というのも、あくまで選手個々の「目線」での良い、悪いである。指導スタイルは、選手にとって「合う、合わない」があるのが当然である。極論を言えば、A選手にとっての「良き指導者」は、B選手にとっても「良き指導者」とは限らない。自分にとって、「良き指導者」に出会えるかは、まさに巡り合わせでもある。
圧倒的な実力があれば話は別であるが、「現役ドラフト」で、いわば最後のチャンスにかける選手にとって、こうした歯車を合致させていく「強運」を味方にできるかも選手人生を左右しかねない。
今回の「現役ドラフト」で新天地に移籍するのは、前年と同じく12人。移籍先で与えられる「役割」にフィットさせ、期待に応える結果を残せるか。これまでの自分に何が足りなかったのか、それを補う指導をしてくれる監督、コーチに巡り会い、どんなアドバイスを求めるのか。「強運」も自ら引き寄せるくらいでないと、キャリアはそこで終わってしまう。
「役割」と「良き指導者」との出会いは大竹投手、細川選手が活躍した鍵を考えただけであり、現役ドラフトはまだ1年しか経過していない。他の「成功の要因」もあるかもしれない。「崖っぷち」ではあっても、「化ける」ことも期待されているから実現した「移籍」である。「現役こそが華」である。12人の選手たちの新天地での活躍を応援したい。
【2023年の現役ドラフトによる移籍選手の一覧】
移籍球団 選手名
阪神 漆原大晟(投手=オリックス)
広島 内間拓馬(投手=楽天)
DeNA 佐々木千隼(投手=ロッテ)
巨人 馬場皐輔(投手=阪神)
ヤクルト 北村拓己(内野手=巨人)
中日 梅野雄吾(投手=ヤクルト)
オリックス 鈴木博志(投手=中日)
ロッテ 愛斗(外野手=西武)
ソフトバンク 長谷川威展(投手=日本ハム)
楽天 櫻井周斗(投手=DeNA)
西武 中村祐太(投手=広島)
日本ハム 水谷瞬(外野手=ソフトバンク)