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フィリピン沖にある巨大な雲域付近で低圧部が発生へ

杉江勇次気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
雲の様子(ウェザーマップ)

低圧部が発生し北西進する予想

予想天気図(気象庁発表に筆者加工あり)
予想天気図(気象庁発表に筆者加工あり)

タイトル画像をみると、フィリピンの東海上、赤い丸の中に巨大な雲域が発生しており、予想天気図にある通り、この雲域付近であす16日(木)午前9時までに低圧部が発生する見込みです。

低圧部とは、周囲より気圧が低く、雲の循環は認められるものの、その中心付近がハッキリとしない熱帯擾乱(ねったいじょうらん)のことで、ある程度中心付近が推定できるようになると熱帯低気圧に名前が変わります。

今の気象庁の予想では、当面あさって17日(金)にかけて低圧部のまま北西方向へ進むとみられ、今後、熱帯低気圧に発達していくかが注目されます。

太平洋高気圧の西端を北上?

低圧部と太平洋高気圧の予想(ウェザーマップ)
低圧部と太平洋高気圧の予想(ウェザーマップ)

発生が予想される低圧部は、フィリピンのはるか東方海上で強まる太平洋高気圧の西端を北上する計算が多く、今後発達するしないにかかわらず、フィリピン付近を北上する可能性が高いものと思われます。

ECMWFのアンサンブル予報では?

ECMWFのアンサンブル予報に筆者加筆(ウェザーマップ)
ECMWFのアンサンブル予報に筆者加筆(ウェザーマップ)

上図はECMWF(ヨーロッパ中期予報センター)のアンサンブル予報で、赤い小さな丸が低圧部(低気圧)を表し、丸が大きいほど、発達することを表しています。また面的に青く塗られている所は降水確率の高くなっている場所です。

これによると、発生が予想される低圧部に伴う雨雲は19日(日)から20日(月)頃にかけてフィリピンのすぐ東海上を北上し、沖縄の南の北緯20度付近に北上する可能性があることが計算されています。

今はフィリピン付近の海面水温が1年で最も低い時期ではありますが、台風が発生するとされる26度から27度以上の海水温は北緯20度付近まで広がっているため、発生した後の低圧部の動向に注目したいと思います。(台風が発生するのは海面水温だけではなく、大気の状態も重要な要因となります。)

今年はすでに低圧部が3個発生(1個目)

実況天気図と雲の様子(ウェザーマップ)
実況天気図と雲の様子(ウェザーマップ)

今年は1月の前半に、すでに低圧部が3個発生しています。

1個目が昨年12月30日9時に発生して年を越したもので、南シナ海南部をゆっくりと西進し、発達することなく、1月1日9時以降に消滅しました。

今年はすでに低圧部が3個発生(2個目)

実況天気図と雲の様子(ウェザーマップ)
実況天気図と雲の様子(ウェザーマップ)

2個目は1個目が消滅した後、1月4日9時に南シナ海で発生し、1個目と同じように西進しました。しかしこの低圧部も発達することなく、1月8日9時以降に消滅しました。

今年はすでに低圧部が3個発生(3個目)

実況天気図と雲の様子(ウェザーマップ)
実況天気図と雲の様子(ウェザーマップ)

そして3個目は1月9日21時にフィリピンの東海上で発生しました。雲の様子をみると、かなりしっかりとした雲域を伴っているのが分かります。

ただこのあと発達することなく、しばらくゆっくりと西進し、フィリピンを通過したあと、南シナ海に出た所で、1月17日3時以降に消滅しました。

このように、今年はすでに3個の低圧部が発生していますが、そのいずれもが熱帯低気圧に発達することなく、消滅していますので、もし今後発生が予想される低圧部が熱帯低気圧に変われば、今年初の熱帯低気圧の発生となります。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

人の生活と気象情報というのは切っても切れない関係にあると思います。特に近年は突発的な大雨が増えるなど、気象情報の重要性が更に増してきているのではないでしょうか? 私は1995年に気象予報士を取得しましたが、その後培った経験や知識を交えながら、よりためになる気象情報を発信していきたいと思います。災害につながるような荒天情報はもちろん、桜や紅葉など、レジャーに関わる情報もお伝えしたいと思っています。

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