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インフルと新型コロナJN.1の流行が交替局面 受験生の感染対策に「睡眠時間」も重要

倉原優呼吸器内科医
photoACより使用

インフルエンザの流行は落ち着いてきましたが、水面下で新型コロナ感染者がじわじわ増えています。いずれかが流行したまま受験シーズンに突入することになり、受験生にとって一層の感染対策が重要な局面です。忘れがちな感染対策の1つとして「睡眠時間」も紹介したいと思います。

流行は新型コロナへ交替か

全国における直近の定点医療機関あたりの感染者数は、インフルエンザ12.66人、新型コロナ6.96人となっています。インフルエンザがじわじわ減少して、新型コロナが増えている状況です(図1)。

図1.全国における新型コロナおよびインフルエンザの定点医療機関あたり感染者数(参考資料1、2より筆者作成)
図1.全国における新型コロナおよびインフルエンザの定点医療機関あたり感染者数(参考資料1、2より筆者作成)

札幌市の下水サーベイランスでは、約1年前の流行時と同程度まで排出ウイルス量が増えており(図2)、新型コロナの流行が進んでいることが示唆されます。

図2.札幌市の新型コロナ下水サーベイランス(参考資料3より引用)
図2.札幌市の新型コロナ下水サーベイランス(参考資料3より引用)

現在増えている新型コロナは、JN.1という変異株です(図3)。オミクロン株の末裔(まつえい)のような位置づけで、重症化リスクは高くありませんが、感染性が強いウイルスです。

図3.東京都の新型コロナ変異ウイルスの推移(参考資料4より引用)
図3.東京都の新型コロナ変異ウイルスの推移(参考資料4より引用)

被災地である石川県においても、新型コロナの患者数がそろそろインフルエンザを逆転しそうになっています(図4)。現地では、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎も流行しており、強力な感染対策が急務です。とはいえ、「対策したくてもできない」実状もあり、悩ましいところです。

図4.石川県における新型コロナおよびインフルエンザの定点医療機関あたり感染者数(参考資料1、2より筆者作成)
図4.石川県における新型コロナおよびインフルエンザの定点医療機関あたり感染者数(参考資料1、2より筆者作成)

受験シーズン到来

受験を控えている人は、人混みでのマスク着用は必須と考えます。「5類感染症になったから」ということでマスクから解放されたと感じている方も多いと思いますが、コロナ禍前でもインフルエンザシーズンはよくマスクを着用していたことを思い出してください。

なお、入試本番時については、現在マスクの着用は義務化されていません。あくまで大事な日に発熱しないための1つの対策として検討ください。

自習室など、多くの学生が集まる部屋は30分に1回程度、窓をあけて換気することが重要です。感染性胃腸炎の原因ウイルスはアルコールのみでは消毒されないことがあるので、汚れたなと思ったときや帰宅後は、石鹸やハンドソープを使ってしっかり手洗いしましょう。

睡眠時間もしっかり確保するようにしてください。健康な男女164人の1週間の睡眠時間を記録し、その後風邪ウイルスを鼻に投与し、どのくらい風邪が発症するか調べた研究があります(4)。すると、睡眠時間が短い人ほど風邪を発症しやすいことが分かりました(図5)。

図5.睡眠時間と風邪の関係(参考資料5より引用)
図5.睡眠時間と風邪の関係(参考資料5より引用)

短い睡眠時間によって免疫グロブリンが低下することで、ウイルスに対する抵抗性が減弱するためと考えられます。

ワクチン接種も重要です。新型コロナワクチンの接種率がかなり低く、XBB.1.5対応ワクチン未接種の場合は、早めに接種しておくほうがベターと思われます。ただ、地域で接種できる医療機関がインフルエンザワクチンに比べて少なく、接種予約方法が分かりにくいという現状もあります。

受験生に限らず、大事なイベントを控えている人は、以上のような基本的な感染対策が重要になります。

(参考)

(1) 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等)2023年6月~(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00438.html

(2) インフルエンザに関する報道発表資料 2023/2024シーズン(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00014.html

(3) 札幌市下水サーベイランス(URL:https://www.city.sapporo.jp/gesui/surveillance.html

(4) 東京都保健医療局. 変異株について. (URL:https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/corona_portal/henikabu/screening.html
(5) Prather AA, et al. Sleep. 2015 Sep 1;38(9):1353-9.

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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