山梨コロナ女性はどこまで悪者か:過剰な防衛本能と歪んだ正義感の心理
■山梨コロナ女性
東京在住の20代の女性。嗅覚や味覚異常の自覚症状があったのに勤務継続、そして山梨へ里帰り。友達とバーベキューパーティー。勤務先の上司がコロナ陽性判明。女性も検査。陽性判明。陽性判明後に高速バスで、東京へ。理由は犬が心配だったから。
しかし、当初女性は陽性が判明する前にバスに乗ったと虚偽説明。
さてこのケース。二重三重の問題があります。各メディアも、ひどい行為として報道しました。
■山梨コロナ女性へのネット上での誹謗中傷、リンチ的さらし
この女性は悪いことをしましたし、みなさんのお怒りは、ごもっともです。日本中が腹を立てたでしょう。
でも、だからと言って何をしても良いわけではありません。
ネット上では、ひどいリンチ(私刑)的行為が起きています。誹謗中傷、真偽不明のプライベート情報のさらし。
マスメディアも、女性の不適切行動を一斉に報道し、コメンテーターもこの女性を手厳しく批判していましたが、今度はこの行き過ぎた個人攻撃を批判しています。
コロナ感染予防の「錦の御旗」があれば、何をしても良いわけではありません。
■山梨コロナ女性はどこまで悪者か
確かに不適切な行為です。ただ、警察に逮捕されているわけではありません。世の中には、悪い人はたくさんいますが、みんながネットで日本中から攻撃されるわけではありません。殺人犯でも、ここまではされないでしょう。
犯罪ではなくても不適切な行為をする人は、たくさんいます。周囲の人は不愉快ですが、ここまでは攻撃しません。
この女性は悪いことをしましたが、その悪質度と社会からの攻撃の程度のバランスが崩れています。
■なぜ行き過ぎた個人攻撃が起きたか
新型コロナウイルスのせいで、私たちの中に不安と不満と恐怖が広がっています。ウイルス以上に、心の問題が広がっています。
近づいてくる人に舌打ち、お店に脅しの張り紙を貼り、店員を怒鳴りつけ、県外ナンバーの車に石をぶつけます。
今、このようなことをしている人々は、必ずしも日頃から乱暴な人ではありません。その人たちの動機は、しばしば家族愛や郷土愛であり、防衛本能です。何とか、自分たちを守りたいと思います。
その結果、よそ者に対して攻撃的になります。ルール違反者に厳しくなります。県外ナンバーだけれど地元に住んでいる人もいるのですが、「疑わしきは罰せよ」です。しかもその行為は、正義の行為だと認識します。
自警団、コロナ警察の発生です。
このような行為の背景には、政府や行政に対する不信感もあります。なぜもっと厳しく取り締まらないのか、という思いが、私刑を生みます。
さらに攻撃対象は、しばしば弱者に向かいます。自分に反撃してこない、自分が法的に訴えられことはないような相手です。自分としては正義の行為ですから、攻撃してやれば、すっきりしてコロナストレスも減ることになります。
しかし、世の中全体がこんなことになれば、結局は社会全体が混乱します。ギスギスした暮らしにくい世の中になります。
行き過ぎた怒りや攻撃心が間違った方向へ向かうと、人生を台無しです((怒りを良い方向に生かす方法:コロナ離婚、コロナ退職を防ぐアンガーマネジメントの心理学:Yahoo!ニュース個人有料)。
総理は、今回の緊急事態宣言の延長に関する記者会見で、ウイルス以上の「もっと大きな悪影響」について語っています。私たちの不安と防衛本能に行為が、これ以上暴走しないように止めなければ、私たちはコロナに負けてしまいます。
ウイルスからの体の攻撃にも、心への攻撃にも、私たちは抵抗していかなければなりません。
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*5/6補足:今回のこの記事に関して、多くの方々からご意見ご質問ご反論をいただきました。そこで、お答えの新ページをアップしました↓
<山梨コロナ女性問題へのご意見ご質問ご反論への回答:会話による相互理解を目指して>
こちらは、コロナに関する心と行動の問題についての日本赤十字からのメッセージ。
- 追記:誹謗中傷の話題がまた出ています。5/30