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育児系雑誌の部数動向をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 子育ては手探りの部分も多い。雑誌は情報源として欠かせぬ存在だが…(写真:アフロ)

育児に関する情報はいくらあっても足りないと感じるもの。情報取得のために雑誌は必要不可欠な存在ではあったが、最近はインターネットにおかぶを奪われつつある。現状について育児系雑誌の部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(該当四半期の1号あたりの平均印刷部数。印刷数が証明されたもので、出版社の自称・公称部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む)から確認する。

現在印刷証明付き部数の公開ページで取得できる、該当ジャンルの雑誌は8誌。次に示すのは直近にあたる2017年第3四半期(7~9月)における部数の実情と、前年同期比の部数動向。印刷物は季節により販売数の変化が大きく生じるため、季節変動を考慮しなくても良い前年同期比の方がすう勢を見るのには適している。

↑ 育児系雑誌印刷証明付き部数(2017年7~9月)(万部)
↑ 育児系雑誌印刷証明付き部数(2017年7~9月)(万部)
↑ 育児系雑誌印刷証明付き部数変化率(2017年7~9月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷証明付き部数変化率(2017年7~9月、前年同期比)

少子化は育児系分野の市場縮小の一要因。しかしその市場動向の多くは単純な子供の人数の減り方をはるかに超えるスピードで縮小している。そして核家族化などを考慮すれば、口頭伝達の教え手となる祖父母が身近に居る育児世帯は数を減らしていき、育児情報の需要は増えることから、切り口次第ではチャンスは多い。もちろん同時にインターネット、中でもスマートフォンやタブレット型端末を利用した主婦層による利用の普及が進んでおり、子育て世代に向けた情報・コミュニティサービスも充実しており、雑誌ならではの提案が求められる。例えば蓄積性、専門性、正確性、実物品の提供などが思い浮かぶ。

盛況を博していた「ベビモ(Baby-mo)」だが、最近は姉妹誌の「プレモ(Pre-mo)」と共に低迷気味。同誌は充実した冊子内容と有益な付録が好評を博しており、毎号大きな話題を集めていた。「ベビモ」の中期的な動向を確認すると、育児系だけに限らず、雑誌全般でも注目に値する堅調さを示していた。確かな支持層を確保し、信頼を得ることで口コミにより新たな読者層が逐次生まれ、さらにそのような状況に甘んじることなく常に改善を模索し、それが功を奏していたように解釈できる。しかしながら2015年後半から大きな失速を見せ、その後も部数は横ばい(今四半期では前四半期比ではプラス)。何らかの方針転換がなされ、それが読者の動きにつながったのだろうか。

他方、「初めてのたまごクラブ」は大きなプラスを計上。

↑ 初めてのたまごクラブ印刷証明付き部数
↑ 初めてのたまごクラブ印刷証明付き部数

「初めてのたまごクラブ」は季刊誌で該当発行誌は1誌。「妊娠がわかったばかりの「わからないこと」「不安なこと」を解消する情報をこの1冊にぎゅっとまとめました。医師監修の信頼できる情報満載で、あなたの妊娠生活を応援します」のコピーにある通り、不安を持つことの多い妊娠したばかりの女性に様々な観点から情報の提供を行っている、教本的な存在。通常版は電子版も展開し、またハンディサイズ版(B5変型判、内容は同じ)も存在する。特別付録の母子手帳ポーチやマタニティマークストラップも嬉しいところ。

部数動向の限りでは2016年第3四半期で大きく上昇を示し、それ以降は安定した部数動向に移行している。何らかの方針転換があり、それが功を奏しているのだろうか。掲載情報への評価が極めて高いことから、口コミでよさが広まっているのかもしれない。

少子化だけでなく情報伝達媒体の多様化もあり、紙媒体は多ジャンルで厳しいビジネス環境下にある。しかしながら育児系雑誌ではその特異性もあり、雑誌ならではの付加価値を見出せる構成を示すことで、不調を乗り越える可能性を多分に秘めている。育児情報を求める人たちにとって頼りになる存在となることができるか否か、出版社や編集部の力量が問われるところだ。

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小学生や中学生の数の推移をグラフ化してみる

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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